軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

大海賊の宝箱

目の前に大量に食事が並ぶ。

いなり寿司が多いのはミコトのためだろう。

食事が必要ないとはいえ、嗜好品をずっと我慢していることには変わりないからな。

俺もクロのためのチュールを用意しておくか。

鞄の中に入っていたはずだ。

キズリカミキタくんには――美味しい水を用意して明日は一日日光浴させるか。

水野さんが言うには、パペットも食事は必要ないが自由を与えたら庭で日光浴をしていることが多いらしい。

パペットに感情があるのか、本当に水が好物で日光浴が好きなのかはわからないが、頑張ったご褒美くらいは用意して置こうと思う。

逆にトゥーナにはカレー以外を食べてもらわないとな。

さすがに栄養バランスが心配だ。

何か食材を取りに行くか。

「トゥーナちゃん、しばらく帰らないみたいだから魚釣って来てよ」

「魚か。わかった、ちょっと行ってくる。遠視の義眼を返してくれ」

「あれって誰が持ってたかしら?」

「私のアイテムバッグの中にあるよ」

ミルクがアイテムバッグの中から遠視の義眼を取り出して俺に渡した。

釣りなら琵琶湖ダンジョン――いや、以前行った浜名湖ダンジョンでいいか。

母さんに、あそこのウナギ美味しかったからまた採ってきてって頼まれてる。

「ダンポン! トゥーナが今どこの階層にいるか――ダンポン?」

いつもカウンターの上でゲームをしているダンポンの姿が見つからない。

カウンターの奥の部屋だろうか?

あそこはダンポンの部屋だから勝手に入ったら怒られるんだよな。

「ダンポン? おーい、ダンポン!」

声を上げると、扉が開いてダンポンがゆっくり現れ――ん?

「お前、大丈夫か!?」

ダンポンが随分とげっそりとしている。

物理的にやつれているわけではないが、顔から覇気が一切感じられない。

遊んでいたポ〇モンのデータが消失したとき(あれほどセレクト技は多用するなと忠告したのに)ですらそんな顔はしていなかった。

「……タイラ」

「ダンポン、どうした? ダンプルの仕業か? それとも――」

「……甘い物が食べたいのです」

どうやら、単純に甘い物に飢えていただけのようだ。

俺たちも長時間ダンジョンに潜るときはよくあるが、その時はミルクかアヤメがおやつを作ってくれるもんな。

とりあえずインベントリの中にある果物を渡す。

「今はこれしかないけど」

「食べるのです!」

パパイヤに似た果物に貪りつくダンポン。

どうやら、姫と同じでダンポンも食事に困っていたらしい。

食べなくても平気なのはクロやミコトと同じなのだが、ダンポンにとって甘味は最大の嗜好。

簡単に言えば、ヘビースモーカーが強制的に禁煙をさせられたようなものか。

「まったく、僕は甘い物が食べたいのです。カレーの甘口は甘くないのですよ」

「あぁ、そうだね。で、トゥーナはいまどこにいるんだ?」

「三十七階層にいるのです」

「そうか。だったら、二十一階層を浜名湖ダンジョンにしてくれ。釣りに行ってくる」

「わかったのです」

「それと、アヤメとミルクが厨房にいるから、甘いお菓子でも作ってもらえ」

「それは嬉しいのです。ヒメにホットケーキを焼いてもらったのですが、黒くて苦くて美味しくなかったのです」

まぁ、うん。

姫は姫なりに頑張ったんだと思うぞ。

材料も小麦粉と砂糖はあっただろうけれど、ホットケーキミックスは無かったはずだし、姫なりに頑張ったはずだ。

PDの二十一階層で魚を釣る。

まず、周囲の魔物を全員蹴散らして安全を確保する。

それでも魔物は時々湧いてくるので気配探知で常に周囲に気をつける

ここで狙うのはサファイアウナギという頭にサファイアがついているウナギだ。

相変わらず、普通に釣りをしていたら宝箱しか釣れないな。

ここで釣れる宝箱は中身が金銀財宝なんだよな。

【海賊王の宝箱:通常の宝箱より遥かにいい物が入っているかも】

……あれ?

前に釣れた宝箱じゃない?

以前釣れたのは――

【海賊の宝箱:通常の宝箱よりいい物が入っているかも】

みたいな名前と説明だったはずだ。

まさか、激レア宝箱?

あれから運もだいぶ上がったからなぁ。

その運に呼応するようにさらに良い宝箱が釣れたのか?

もしかして、もっと釣れるかと思ったが、その後釣れるのは海賊の宝箱ばかりだった。

んー、もしかして一個しかないのか?

『泰良、釣れてる?』

ミルクから念話が届いた。

しまった、宝箱釣りに夢中になってウナギを釣るのを忘れていた。

以前のように遠視の義眼を使って湖の中の魚の位置を確認して餌を投げ込み、魚を釣った。

ウナギだけじゃなく、食べられそうな魚も釣っておく。

クロダイっぽい魚にスズキっぽい魚だ。

鑑定したところ美味しいらしいのでインベントリに入れておく。

そして、急いで一階に戻った。

甘い匂いがした。

カウンターの上でダンポンが三段重ねのホットケーキを食べている。

蜂蜜がたっぷりかかっていてとても甘そうだ。

そして、それを食べるダンポンはとても幸せそうだ。

「ただいま」

「あ、タイラ。お帰りなのですよ。トゥーナもさっき帰ってきたのですよ」

「そうなのか?」

「今、シャワーを浴びてるはずなので、行ったらダメなのです」

「わかったよ」

言われなくても、シャワー室に勝手に入ったりしない。

幸運値が高いけど、ラッキースケベはできるだけ回避している。

ラッキーじゃないスケベはたまにしてるが。

キッチンに戻って、釣ってきたばかりの魚を出す。

「ありがとう。わ、ウナギもいっぱいあるね。蒲焼にするね」

「泥抜きは必要ないのか?」

「ダンジョン産の魚は必要ないよ」

そういえば、サファイアウナギを釣ったときもその日に蒲焼きになってたっけ。

ミルクがささっとウナギを捌く。

関西だから腹開きだな。

「他の魚もいっぱいありますね。ダンジョン産の魚は高いんじゃないですか?」

「浜名湖の二十一階層産だと、安く見積もっても一匹あたり十万円くらいかしら?」

「このクロダイっぽいのは?」

「五百万円はするわね」

「高すぎないか?」

「そもそも、ダンジョンの二十一階層まで潜れる人が普通に釣りをすることなんてほとんどないもの。それに、警戒心が強くて技術が低いとほとんど釣れないのよ。それに、魔物がいるダンジョンで落ち着いて釣りなんて普通はできないわ。落ち着いて釣りができるレベルの探索者はもっと稼げるし。だいたい、こういう高級品なんて金持ちしか食べないんだから、供給が少なかったら価格は青天井に跳ね上がるわ」

そういや、サファイアウナギも高かったもんな。

魚の話をしているとトゥーナが入って来た。

ミコトとクロ、キズリカミキタくんも一緒だ。

「タイラ様、おかえりなさい」

「お疲れ様。クロとキズリカミキタくんもお疲れさん」

クロが駆け寄ってきたので頭を撫でる。

「妾もいるぞ(もぐもぐ)」

「……いるのはわかってたが、挨拶より先に走って椅子に座り、いなり寿司を食べてる奴が疲れてるように見えないな」

「まぁ、疲れてはいないが、いなり寿司に飢えておったわ」

ミコトはおかわりのいなり寿司に手を伸ばす。

もう、あの皿はミコト専用にした方がよさそうだ。

「トゥーナ、レベルはどうだ?」

「……ん、いい調子。目標まで頑張る」

「そうか。まぁ、頑張り過ぎるなよ」

「……ん、頑張る」

強制的に休ませるか。

とりあえず、俺たちも食事にしよう。

さっきからウナギのいい匂いがするんだよな。

「……トゥーナもカレーを」

「お前はカレーの食べ過ぎ。今日は別の料理にしろ」

「……………………わかりました」

沈黙が長かったが、ミルクたちが自分のために料理を作ってくれたことに気付いたので、トゥーナは頷いた。

皆で食事をする。

だが、俺はさっき姫の料理を食べたのでまだ腹がいっぱいなんだよな。

インベントリの中に消化剤みたいなのなかったっけ?

インベントリを開き項目を見る。

あ、そういや海賊王の宝箱の中身でも見てみるか。

「泰良、どうしたのその宝箱」

「さっき釣ったんだよ。海賊の宝箱のレア版だってさ」

「海賊の宝箱ならみんなで開けたわね。面白いものは入って無かったけど」

「でも、豪華な宝箱でしたよ。最後の一個は動画企画で開けましたよね」

うん、中身は全額寄付するという名目で生配信で宝箱を開けた。

結果、最後も同じ金銀財宝だったけれど、十五億円くらいで売れて全額NPO法人に寄付した。

尚、他の財宝はインベントリの肥やしになっている。

「なら、これも配信で開けるか?」

「初めての宝箱でしょ? ここで開けてみましょ」

そうだな。

もしかしたら、レジェンド宝箱ほどじゃないけどいいものが入ってるかもしれないし。

俺は頷いて宝箱の取っ手に手を掛けた。