軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

管理者不明のダンジョン

謎のダンジョン。

ダンポンが管理しているのかダンプルが管理しているのかもわからない。

前者だったらまだいいが、後者だったら危険だ。

とはいえ、未管理のダンジョンが絶対にないとは限らない。

たとえばお宝ダンジョンはダンジョンの地図と鍵を手に入れたとき、隠しダンジョンが現れる。

あのダンジョンもまた、ダンジョン局には登録されていない隠しダンジョンだ。

そして、お宝ダンジョンは俺専用のダンジョンというわけはない。

俺以外の誰かが宝の地図と鍵を手に入れている可能性だってある。

他にも、PD。

俺の生み出すPDは俺と俺の配偶者にしか見えないが、しかしこれもまた一般には知られていないダンジョンを生み出す力である。

世間に知られていないダンジョンが俺の知る限り二つもあるのだ。

俺の知らない隠しアイテムやユニークスキルが存在する可能性だってある。

つまり、そういう方法で生み出されたダンジョンかもしれない。

俺たちは真っすぐダンジョンに突入――することはなく、一度、停めている車に戻った。

研究のために危険なダンジョンに入る閑さんにしては意外かと思ったが――

「研究者だからこそ万全に整えた状態で挑む必要がある」

ということらしい。

ちなみに、先程のダンジョンのあった場所も圏外ではなかったのだが、敢えて車に戻った理由はあそこを管理している何者かとあの場所で遭遇する危険を考慮してのことだった。

その間に、用を足すフリをしてPDに入る。

ダンジョンのことはダンポンに聞くのが一番だからだ。

「知らないのです」

「知らないってことはやっぱり正規のダンジョンじゃないんだよな。お宝ダンジョンみたいな隠しダンジョンってことか?」

「んー、お宝ダンジョンみたいなインスタンスダンジョンにもダンポンの管理人はいるのですが――」

とダンポンがパソコンを使って誰かと連絡を取る。

そして――

「やっぱりなのです。この周辺にインスタンスダンジョンは存在しないのです」

そういうのがわかるのか。

「じゃあダンプルが管理しているダンジョンなのか?」

「それもないのですよ。ダンプルの動向は僕たちダンポンが全員で逐一把握しているのです。新しいダンジョンが生み出されたら、たとえ地球の裏側だろうとわかるのです。だいいち、ダンプルはダンジョンをこっそり作るような回りくどいことはしないのです。あいつらは目立ちたがり屋なのですよ」

そういえば、いきなり富士山の山頂やマンハッタンのど真ん中にダンジョンを作る奴だった。

ということはどういうことだ?

「んー、まさか……いや、でも可能性は……」

「どうしたんだ?」

「ごめんなのです。まだわからないから、調べ終わったら連絡するのです。あぁ、ダンプルにも協力を頼まないといけないですね」

なんとも歯切れの悪い。

結局、何の情報も得られないまま閑さんのところに戻った。

その後、ダンジョン局の職員、町役場の人間、そして警察官がパトカーを伴って訪れた。

そして、俺たちは職員たちを伴い、例のダンジョンのある場所に移動した。

警察官が来た理由は俺たちの護衛とかではなく、途中にあった有刺鉄線についてだ。

私有地ではない山の中に誰かが無断で電流の流れる有刺鉄線を設置している。

これは紛れもない違法行為だ。

市の職員と共同して捜査するらしい。

俺たちは見つけたダンジョンに案内した。

有刺鉄線について調べてもらったところ、どうやら魔石で発電するものらしく、近くに魔石の発電機が隠されていた。

しかも使われていたのは紫の魔石――

売れば400万円はする代物だ。

それがいくつも入っている。

そんなの、札束を雑木林に入れて隠しているようなものだ。

なんとも不用心な。

「そういえば拾得物って落とし主が現れなかった場合、全部貰えるんでしたっけ?」

「あれは事件の証拠品だから押収されるはずだ。事件が解決したら貰えるはずだぞ……請求するのか?」

「えっと、まぁ、魔石とかお金とかいくらあっても足りませんので」

エルフの世界に行くためにDコインがいっぱい必要だからな。

それを買うためのお金も同じ位必要だ。

もっとも、必要な額が天文学的過ぎて、400万円程度では焼け石に水どころか、水滴程度の価値しかないのだが。

俺たちはさらにダンジョンのあった場所に行く。

すると、あったはずのダンジョンが無くなっていた……なんてよくある話はなく、そこに普通にダンジョンは残っていた。

ダンジョン局の職員がダンジョンの確認をする。

そして――

俺たちの出番は終わった。

中に入ることも許可されなかった。

これまで散々協力してきたし、なんなら命がけで戦って来たとはいえ、俺たちは一般市民。

そして、なによりまだ高校生だ。

何があるかわからないダンジョンの調査をさせることはできない。

「ということらしい。ダンポンもずっと鍵をかけて部屋に引きこもってるから会ってくれないんだよ」

PDでミルクと話をする。

グループメッセージでも連絡したが、ミルクが直接会って話を聞きたいと言ってやってきた。

「大変だったね。そうなると、姫の言ってたダンジョン乗っ取り計画も暫くはできないかな?」

「だろうな」

「泰良、お雑煮食べる? 泰良好きだったでしょ?」

「覚えててくれたのか。雑煮なら毎日でも食べれるね」

「いま温め直すね」

ミルクが持ってきた大きな包みの正体は鍋だったのか。

魔道具コンロで温めてお椀に入れて出してくれた。

ミルクの家のお雑煮はそのまま餅を入れるのか。

俺の家はオーブントースターで焼いてから雑煮の中に入れる。

作り方が少し違うな。

「はい、どうぞ」

「サンキュ。白みそのいい香りだな」

はぁ、温まる。

今朝も食べてから出発したが、やっぱり雑煮はどんな風に作っても美味しいわ。

一度、香川の雑煮も食べてみたいな。中にあんこの入った餅を使うんだよな。

「隠し味に牛乳が入ってるのか?」

「正解。石狩鍋風にね」

「そうなのか……うん、レシピ通りに作らない料理はまずいのが相場だが、これはうまいな」

「それ、私が作ったんだよ?」

「本当か? よく鍋の蓋が吹っ飛ばなかったな」

「もう。そんなしょっちゅう事故を起こさないよ」

ミルクが料理配信をしていると、いつも何かしらの事故が起きるんだよな。

「よかったら毎日作ってあげようか?」

「あ、悪い。雑煮は毎日でも食べられるって言ったが、鏡開きがある日までって決めてるから。俺のポリシーな」

「……もう、そうじゃなくて」

「冗談だ。ていうか、もう結婚してるのにその台詞もおかしいだろ」

「そうだけど、言葉にするのは大事だよ」

そうだよな。

そういうところはしっかりしないと。

俺はミルクの目を見て言う。

「味噌汁は作らなくてもいいから、これからもずっと傍にいてくれ」

「……うん」

ミルクが顔を赤らめて言う。

その熱は温めた雑煮の蒸気のせいだけじゃないはずだ。

そして、俺たちはそのまま――

「子どもを作るのですか?」

「「作らないよ!」」

ダンポンに邪魔された。

まぁ、ロビーの中でいちゃついていた俺たちが悪い。

寝室に行けって話だ。

「ダンポン、お前、呼んでも出てこなかったのにどうしたんだ?」

「いい匂いがしたから来たのです。僕もいっぱいほしいのです」

ミルクは苦笑し、お雑煮をよそう。

ダンポンはそれを念動力を使って食べる。

本当に器用な奴だ。

しかし、この姿――

『お餅がお餅を食べてるみたい』

『……それ、俺も思った』

ミルクの念話に同意する。

「それで、ダンジョンについては何かわかったのか?」

「うーん、やっぱり調査してみないとわからないのです。泰良、僕と一緒に調査をお願いしたいのです」

ダンポンが依頼をしてきた。

なんか面倒な話になりそうだ。

冬休みの宿題を自力でしたほうが楽だったかもしれない。