軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

好転に至るまで

ミルクはトイレに行き、そこの手洗い場で笛を洗ってきた。

ダンジョン内の時間の速度は俺が戻ったときには百倍に戻してくれたが、再び外と同じ時間の流れに変更してもらう。

「時間の流れの変化、面白いね。まぁ、ダンポンの本体、この星の流れと完全に分離されているこのダンジョンだからこそできる仕様かな?」

「ダンプルは煩いのです。時間の流れの変化にはちょっとだけ気を遣うので黙っていてほしいのです」

「やれやれ、お客様に対して無愛想だな。それにしても、このダンジョンは客に茶も出さないのかい?」

「そういうのは手土産を持ってきてから言うものなのです」

ダンポンとダンプルが口喧嘩をしている。

元々、仲が悪いとか、敵同士っていうのはこのダンポンから教えてもらった話なんだけど、実は仲がいいんじゃないかって思えてくる。

それを口に出したらダンポンがへそを曲げる(へそは無いけど)ので黙っておく。

「時間の流れを一倍に戻したのですよ」

ダンポンが言った。

よし、これでいけるな。

「ミルク、頼む」

「うん、任せて!」

オカリナはリコーダーと同じで、綺麗に演奏するにはコツがいるけれど、ただ音を出すだけならば何の練習も必要もない。

さて――

「ダンポン、ダンプル。ここは危ないから奥の部屋に入ってろ」

「言われなくても入るのです。鍵をかけておくので、終わったら教えてほしいのです」

「僕も邪魔をさせてもらうよ」

「ここから先は僕の部屋なのです。ダンプルはトイレにでも隠れてるのです」

ダンポンはそう言って奥の部屋にいって、扉を閉めようとするが、

「本当にいいのかい? 一応、手土産として茶菓子くらいは持ってきたんだけど――」

ダンプルはインベントリ? アイテムボックス? どっちかはわからないが、包装紙に包まれた箱を取り出した。

「手土産を持ってきたらお客様なんだよね? ゴンチャ……って言ってもわからないか。高級チョコレートだよ」

「……水しか出さないのですよ」

「それでいいよ。ダンジョン産の水は美味しいからね」

そう言って二人で奥の部屋に引っ込んだ。

やっぱり仲がいいだろ。

さて――

「来たな」

地上から魔物の群れが近付いている気配を感じる。

それと同時に、ドンドンと扉を叩く音がした。

ロビーの奥の迷宮区から、スライムが押し寄せ扉に体当たりをしているのだろう。

幸い、スライムに扉を壊すような力はないのでそっちは無視する。

最初に襲い掛かってきたのは、先程の馬の魔物だった。

姫が首を斬り落とす。

相変わらず速い。

魔物は次々に現れる。

姫とその分身たちが魔物を倒していくが、数が多いな。

「姫、何人かこっちに回せ!」

「言われなくても回すわよ!」

今度は背中に噴火口のようなものがあるカバみたいな魔物がこっちにきた。

名前はいちいちわからない(のでカバくんと呼ぶ)が、かなり狂暴そうな顔つきだ。

「二刀流基礎剣術 双剣斬波(そうけんざんぱ) 」

飛んでいく剣戟がカバくんに深い傷をつくるが、まだ死なない。

やはり強いな。

勢いを弱めずにこちらに向かって突っ込んでくるが、

「二刀流応用剣術、月影双龍剣っ!」

真正面から剣で斬り伏す。

よし、倒せたな。

と気配が後ろに現れた。

さっきのカバくんが仲間として復活したようだ。

カバくんだけではなく、姫が倒した魔物も全員ではないが何匹か仲間になっている。

「アヤメ、名付けを頼んだ!」

「はい! あなたはイアーゴー、あなたはキャシオー、あなたはビアンカ、あなたはロデリーゴ」

次々にアヤメが魔物に名前を付けていく。

名付けをアヤメに頼んだのは、彼女の記憶力が一番優れているからだ。

名前を付けたのはいいけれど、何しろ何匹の魔物に名前を付けることになるかはわからない。いちいちメモを取っている時間も惜しい。

適当に名前を付けて忘れてしまった結果、忘れてしまって本当の名前を誰もしらないテイムした魔物が生まれる――なんて事態を避けるためにも、アヤメが適任だった。

そして、もう一つ。

空を飛ぶ形代たちが己の紙の身体を利用して、疾風と同じようなスカーフを結び付けていく。

「よし、アヤメ、とりあえずそいつらを外に!」

「わかりました! スカーフを結んだ皆さん、こちらの階段から外に! そこにいる人の指示に従って行動してください!」

「疾風も同じように一緒に行きなさい!」

アヤメが名付けた魔物と同様に、疾風もまた一緒に階段を上がっていく。

これで事態は変わることだろう。

問題は、その変わった事態が好転となるまで、俺たちがここを防ぎきれるかどうか。

とはいえ、牛蔵さんは一人で長時間耐えることができたんだ。

仲間と一緒にいる現在、耐えられないはずがない。