軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ボス前の前哨戦

鰐霊神との戦いについて考える。

ゴーストと戦った時と違い、今の俺たちにはいろいろな戦い方がある。

たとえば、俺には付与魔法がある。

これを使えば武器に属性を持たせることができる。

いまは火と水の属性を付与できる。

それが無くても、影獣化を使えば闇属性のダメージを与えられるが、霊の魔物って一般的に闇属性に耐性があるんだよな。

それに、どちらも物理攻撃であることには変わりないので与えられるダメージはやはり少ない。

俺が使える魔法は獄炎魔法と火魔法。

ただし、獄炎魔法は一発限定だし、火魔法は熟練度がまだまだ足りないから四十階層のボスを相手にするには心許ない。

「霊体っていうのはエネルギーの塊のようなものだからエナジードレインも使えるんじゃないか?」

「エナジードレインはダメよ。鰐霊神もエナジードレインを使ってくるから」

「マジか」

「マジよ。だから、分身もあまり使えないのよね。数を増やすってことは、それだけ相手に回復の機会を与えることにもなるし」

姫も属性持ちのクナイは予備に持っているが、やはり本格的にダメージを与えるとなると魔法による攻撃の方がいい。

「ここはアヤメとミルクの魔法頼りになりそうだな」

「光魔法と聖水の出番だね! バシバシ行くよ!」

「雷魔法も光属性程ではないですが霊に対して効果が高い魔法です。頑張ります」

ミルクもアヤメもやる気だ。

俺たちはサポートだな。

今回はいつもと勝手が違うため、念入りに作戦を練らないと。

「そういえば、西条さんから戦闘シミュレーションAIについて聞いたんだが、あれを使えないか?」

「それ使うには私たちのスキルをデータ入力する必要があるけど、持っているスキル全部入力するつもり? スキルだけじゃなく、私たちの成長率の異常さも、データに残したくはないわよ。……まぁ、いまさら感はあるけどね」

「やっぱりダメだよな」

言ってみただけです。

「一応、天下無双で独自にシミュレーションAIの構築をしているけど、流石にまだ使い物にならないわね」

「そうなのか?」

「ええ。結構な額を投資しているわよ。もちろん他社の買収も視野に入れてね」

「俺、そういうの全然知らないんだけど、一応理事だし、ちゃんと勉強したほうがいいのか?」

「泰良は戦ってくれたら十分よ。結局、天下無双の収入源のほとんどは私たちの探索の成果なんだから。それでも知りたいのなら教えるけど、本当に知りたい?」

うん、姫たちに任せるわ。

改めて念入りに作戦を練った。

しっかり作戦を練ったんだけどPDの中だから外では全然時間が経っていない。

それどころか、二度目の朝食の時間もあったくらいだ。

てんしばダンジョンを再現しているPD40階層に移動して、そこから琵琶湖ダンジョンのある方に向かった。

ダンジョンの途中に琵琶湖ダンジョンに繋がってる道が見えた。

そこから入ると琵琶湖ダンジョンの特徴である大きな湖が見えた。

その湖から白く大きな水蛇が顔を出している。

21階層で戦ったのがレッサーレイクサーペントだとしたら、あれは 劣等種(レッサー) が取れてただのレイクサーペントだろうか?

「ホワイトレイクサーペントね。レイクサーペントの上位種よ」

一段階すっ飛ばしていた。いや、通常のレイクサーペントとホワイトレイクサーペントの間に何種類かいるかもしれないから、一段階とは限らない。

他の魔物は見当たらないな。

「準備運動で戦ってみるか?」

「そうね。アヤメ、ミルク。今回は私と泰良で戦うわ。二人は魔力を温存してなさい」

と姫が言ったとき、ホワイトレイクサーペントが大きく口を開けて威嚇をしてきた。

めっちゃやる気のようだ。

「 注目の的(アテンションプリーズ) !」

姫がそう叫んだ直後、ホワイトレイクサーペントが毒液の雨を噴き出し、それが雨のように降り注ぐ。

姫が直前にスキルを使ったせいだろう――それは雨というよりは集中豪雨。

ただし姫の周囲十メートルという狭い範囲でのみ。

とはいえ、あの速度――姫でも避けきれるか――と思ったら、目にもとまらぬ速度で避けた。

そうか。今回は攻撃をせずに避けることに集中したから、脱兎のスキルが発動したのか。

もしも姫がスキルを使わなかったら、さっきの毒の雨が姫だけでなく俺たち全員に降り注いでいただろう。

全部俺が肩代わりすることになっても、女性たちの服に穴が開いたら大変だ。

「…………」

「泰良、変な顔をしてないで、戦いに集中しなさい」

「変な顔なんてしてないよ! してないよな?」

振り返って確認する。

「そうだね。いつも通りの顔だね」

「はい! 泰良さんの顔はいつも素敵です!」

アヤメ、ありがとう。

でも、ミルクの言い方だと、俺がいつも変な顔ともとれるから勘弁してくれ。

このイライラはホワイトレイクサーペントにぶつける!

インベントリから一本の矛を取り出した。

「さっさと水の中から出てきやがれ!」

俺は矛をホワイトレイクサーペント――ではなくそいつがいる湖を突いた。

そして、くるくるかき回すと、ホワイトレイクサーペントのいる場所の湖の底が隆起してきた。

「泰良、何してるのよっ!」

「大丈夫だ、この隆起した部分、一日経過したら勝手に消えるから!」

そして、湖の中から顔を出したら、もう俺の敵じゃないよな。

と思ったら、姫の分身たちが一斉に襲い掛かっていた。

「ちょっ、姫! お前が本気を出したら俺の分が残らないだろ」

「どうせ次の戦いだと何も活動できないんだし、後で溜める分のストレスを先払いで発散させてもらうわ!」

「だったら――」

姫が追い付くより先に、

「基礎槍術、槍投げっ!」

と槍――ではなく天沼矛を投擲する。

一直線に飛んでいった天沼矛が姫の分身よりも先にホワイトレイクサーペントの右目を破壊した。

「泰良! 貴重な矛でなにしてるのよ!」

「貴重でも武器は武器だよ!」

「もうっ!」

文句を言いながらも、姫がホワイトレイクサーペントのトドメを刺したのだった。

ホワイトレイクサーペントの鱗か。

こういう素材もだいぶ増えてきたな。

ここまでくると逆に買い取りが難しくなってくる。

何故なら、人の手で加工できないからだ。

そして、これが加工できる鍛冶師も少ない。

鍛冶師は体力値と防御値が極端に低い。

レベルを上げようとすれば命の危機に陥る。

ただでさえ覚醒者ではないと覚えられないスキル、人数も多いわけじゃない。

研究用素材としてならば必要になるかもしれない――と思うが、しかしそれも必要とされない。

だいたい、こういうものを研究している研究機関は既にそういう素材を手に入れている。

閑さんも持っていることだろう。

だからといって、ダンジョン局が安く買い叩くことはしない。

深い階層のアイテムを安く買うという前例をダンジョン局は作りたくないのだろう。

結局、ダンジョン局は買い取ってくれない。

オークションに出品すれば、いつか研究が進んで人間の力で有効利用できる様になったときの値上がりを期待してある程度の値段で買い取る事もあるが限度がある。

そして、現代では価値がないと言うことを知っているからか、ダンポンたちの換金所でもあまり高く買ってくれない。

彼らにとって必要なのはDコインや魔石であって、本来ダンジョンの素材は必要ないのだ。

だから、インベントリには使えない素材が増えてくる。

水野さんに成長してもらって、武器か防具に加工できるようになってもらおう。

さて――

「次は私たちの番だね」

「はい、ガツンと倒しましょう」