軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

出る杭を撃ちつける

昨日、西条さんと一緒に潜った琵琶湖ダンジョンの二十一階層に今日はチーム 救世主(メシア) の四人でやってきた。

やってきたのだが――

「ねぇ、泰良。見間違いじゃないかな? 昨日聞いたグリーングリフィンがまたいるみたいなんだけど」

ミルクが空を見て言う。

ライフル銃のスコープ越しで、いつでも撃てる構えになっている。

流石だな。

「見間違いじゃない。しかも、二匹いるな……いや、二羽? 二頭?」

「青木経由でダンプルに頼んで呼んでもらった。もちろん、琵琶湖ダンジョンのダンポンにもPDのダンポン経由で許可を貰ったぞ」

俺はしれっと言った。

青木の奴、「俺はメッセンジャーじゃないぞ!」って怒ってた。

でも、ダンプルのメールアドレス知らないし、知りたくもないから青木経由でやり取りするくらいがちょうどいい。

「なんでそんなことしたの?」

「昨日、ちょっとだけ苦戦したんだけど、みんなと一緒なら楽に戦えるかなって思ったんだよ。それに――」

「「「それに?」」」

「あんな強敵でも四人で戦ったら楽しかったんだろうなって思った。だから、そのリベンジマッチかな」

俺がそう言うと、三人とも呆れたように、そして嬉しそうに笑った。

ちなみに、本来であればこういう風に下層の階が上層に上がってこないように琵琶湖ダンジョンダンポンが管理しているのだが、昨日も今回も特例としてダンポン側でOKを出しているらしい――と昨日、PDのダンポンに教えてもらった。

「私が前に出るから、援護をお願い!」

姫が分身と天翔を使い、グリーングリフィンに向かって駆け上がる。

その分身の隙間を縫うように、ミルクの放った銃弾が一体のグリーングリフィンの右翼を貫通する。

まだ落ちないか。

無事な方のグリーングリフィンが風の刃を放つが。

「解放: 相殺風(ウインドクラッシュ) 」

アヤメの放った魔法がグリーングリフィンの風の刃を消し去る。

そんな魔法があったのか。

グリーングリフィンが次の魔法を放つ前に、姫は既にグリーングリフィンに肉薄していた。

「蛇牙連撃っ!」

姫の応用短剣術の新しい技が炸裂。

鋭いクナイによる連撃がグリーングリフィンの片翼をズタズタに切り裂く。

片翼の機能を失ったグリーングリフィンが緩やかに降下を始めた。

「泰良っ!」

「二刀流応用剣術、月影双龍剣っ!」

落下してきたグリーングリフィンを二本の剣で斬り倒す。

地面に落ちてしまえばもう敵ではない。

さて、もう一匹は――

「ってなんだあれっ!?」

ミルクが見たこともない銃(?)から巨大な杭を放っていた。

パイルバンカーってやつかっ!?

さすがにロボットアニメで見るものよりは小さいが、しかしかなりの威力だ。

尤も、俺が知ってるパイルバンカーは遠距離攻撃用よりも近接攻撃用って感じだけど。

ミルクの魔法によって生み出された火薬の威力が上がっているからこそ使える武器だろう。

グリーングリフィンに突き刺さっても十分な威力があるが、そこに――

「解放: 雷神の一撃(ゴッドサンダーアタック) 」

アヤメの雷魔法が炸裂。

これはもうオーバーキル過ぎる。

「ミルク、その武器、水野さんに作ってもらったのか?」

「うん。アイデアを出してくれたのも水野さんでね、ノリノリで協力してくれたよ。PDの中で何度か試し打ちもしたし」

「私も事前に聞いていました。雷魔法とも相性がいいですね。これならもっと強い敵が出てきても倒せそうです」

「威力は申し分ないし、配信で使ったら人気が出そうね」

配信で人気が出そうっていうのは俺も思った。

ロボットアニメにはあまり詳しくない俺でも知っていた架空武器だからな。

それにしても、水野さん、ああいうものも作るのか。

そういえば、彼女の家ってロボットとか銃の玩具がいろいろあったから、もしかしたらそういうものを考えて作るのが息抜きになっているのかもしれない。

「アイテムバッグに入れて持ち運べるとしても、照準を合わせるのとか大変そうだな」

「細かい調整は発射してから念動力で行ってるよ。少しくらいなら相手が避けた方に軌道を変えることもできる」

さすがに質量が大きすぎて軌道を変えるにも限度があるみたいだが。

「私なら避けられそうだけど、泰良ならどう対処する?」

「 短距離転移(ショートワープ) で逃げ――いや、インベントリに収納するな。どうやらあの杭、水野さんが鍛冶スキルで作ったものみたいだから収納できそうだ」

インベントリは誰かの所有物なら勝手に収納することはできないが、撃たれた時点で所有権を放棄したとみなされるからその場合は収納できる。

「あれって、地上で同じ兵器が再現できると思うか?」

姫に尋ねた。

姫は少し俯いて答える。

「構造は可能だけど、同じ威力は無理ね。たぶん、威力はミルクの魔力が上乗せされてあの威力になってる。地上の兵器で同じことをやっても倒せるのはせいぜい十階層レベルの敵くらいよ。黒のダンジョンから溢れた魔物を倒すのは難しいわね。そもそも、実用性は皆無でしょ。地上だったら十階層より下の魔物どころか、軍用装甲すら撃ち抜けないわよ」

普通に戦ってる分にはわからなかったが、十階層より下の魔物って、軍用装甲より硬いのか。

「いまさらだが、ステータスって不思議だな。ダンジョンの外でもステータスが同じくらい反映されたら楽なんだけどな」

まぁ、だからこそ太陽の首飾りが貴重品なんだろうけど。

「そうなったら犯罪者を取り締まる警察官は大変ね」

「警察官もレベルを上げないといけないだろうな。今でも警察官はダンジョンに潜ってレベル上げをしてるらしいぞ」

青木の親父さんも警察官だから結構レベルが高かったはずだ。

「Dコインが落ちてるけど、インベントリの自動収納はしてないの?」

「昨日、西条さんと潜ってたときにオフってた」

と落ちているDコインを拾う。

「やっぱり40階層後半の魔物はDコインの額も多いわね」

「紫色が合計三枚か……紫色ってどれくらいだっけ?」

「10万Dだから合計30万Dね」

ちなみに、二匹倒したのにDコインが3枚あるのは、俺が倒した分は財テクスキルが発動してDコインが二倍になったからだ。

つまり、いまのを七回繰り返したらスキル玉を一個交換できるのか。

「あぁ、杭が曲がってる。これじゃもう使えないかな」

ミルクがさっき使った杭を見て言った。

ダンポンの修理サービスでも杭は直してくれないだろうな。