軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

琵琶湖ダンジョンの巨大ナマズ

空飛ぶナマズ、魚神というらしい。

ナマズ……ナマズか。

俺の思考はいま、急速に回転していた。

ナマズを食べたことがないし、調理法も知らない。

食えるのだろうか?

子どもの頃、近畿大学でウナギの味のナマズを開発していたって聞いたことがあるから、同じような感じで調理を――いや、それなら浜名湖ダンジョンを再現したPDでウナギ釣りをしたらいいだけの話だ。

サファイアウナギは美味しかったからな。

うん、わざわざ周回して倒すような敵じゃないな。

さて、西条さんの戦いが始まった。

西条さんって魔法を使うのに前衛で戦うんだな。

いや、一人で戦っているからか。

お、初手で目眩ましの閃光魔法。

眩しいけどちゃんと見ていられるのは、目眩ましも状態異常扱いになっているせいで、ミルクから借りた八尺瓊勾玉の効果が出ているからか。

相手の目を潰してから、光の刃を生み出して髭を斬った。

なんでも魚神は目が見えなくても髭に伝わってくる振動で敵の位置がわかるだけでなく、髭を振るわせることで地震を起こすことができるらしい。

一度切り落とすと、五分間は再生しないのだとか。

『ツンツン』

ミルクの声が聞こえた。

念話だ。

ミルクは着信音の代わりにこういう風に声をかけてくることがある。

『いま、二十階層のボス部屋』

『え? もうそこまで来てるの? 後で掛け直すよ』

『いや、大丈夫。どうした?』

『どんな感じかなって思って。二十階層のボスってどんなの?』

『魚神って名前の巨大ナマズ』

『へぇ……ナマズか。ビワコオオナマズが元で生まれたのかな?』

『どんな妖怪か知らないけど、ビワコオオナマズが全長十メートルくらいあって、空を飛ぶっていうのならそれかも』

『ビワコオオナマズは絶滅危惧種の実在するナマズだからね』

絶滅危惧種と戦わされているのかよ。

開発による産卵場所の減少やブラックバスやブルーギルなどの外来種のせいで数が激減しているらしい。

もしかして、人間のせいで絶滅まで追い込まれた影響で、人間に恨みを持って現れたのか?

だったら、兵庫県にいったらオオサンショウウオがボスとして出てくるダンジョンもあるかもしれん。

あ、西条さんの拳がナマズの顔面を捕えた。

『ちなみに、ミルクはナマズの調理法とか知ってるか?』

『ナマズは調理したことないなぁ。でも、ビワコオオナマズは美味しくないらしいよ』

『そうなのか?』

『美味しかったら人間がいっぱいお金をかけて繁殖させるから絶滅危惧種になったりしないんじゃないかな?』

ミルクが身も蓋もないことを言った。

そう考えると、美味しくないのに勝手に繁殖しているブラックバスやブルーギルはヤバイな

ヤバい、西条さんのことを忘れていた。

西条さんが戦隊ヒーロー並みの動きを見せている。

後ろに跳ぶ時のあの回転って意味があるのか?

戦いは終盤のようだ。

『泰良、それでね。もしも琵琶湖ダンジョン攻略を本格的にすることになったら――』

『姫、いま西条さんが――』

『ダンジョンの近くに四人で一つの家を借りてそこに住まないかって話しててね――予定より早い同棲生活を――』

『なっ』

俺がいないところでそんな重要な話をしていたのか。

四人で一緒に暮らすのは大学に進学してからってなっていたのに。

同棲をする前に、牛蔵さんに勝って認めてもらいたい。

そう思っていた。

だから、一緒に暮らすのはまだ早い。

『ミルク、ちょっと待ってくれ――』

と俺は念話で四人での同棲生活は少し待ってもらうように頼み、わかってもらった。

そして――

「ふぅ、終わった。壱野くん、見てくれたかい?」

「……トテモスゴカッタです」

西条さんの戦い、全然見る余裕がなかった。

琵琶湖ダンジョン二十一階層からは、浜名湖ダンジョンのように大きな湖のあるダンジョンだった。

いろんな魚がいそうだな。

そして、魚だけでなく魔物もいる。

現れたのは小型の竜が首から上だけ水の中から出ていた。

「琵琶湖のビッシーかな?」

「……本当にそんな名前の魔物なんですか?」

「いやいや、レッサーレイクサーペントだよ。首長竜に見えるけど実際は蛇の一種だね。足もないはずだよ。結構強いけど、湖岸に近付かなければ襲ってこないから無理に戦う必要はない。戦うかい?」

「んー、半分水の中にいたら火魔法もあんまり効果が無さそうですし、わざわざ戦う必要は感じませんね」

挑発のようなスキルがあればいいんだけど。

「じゃあ、二人であっちと戦おうか」

「お、水辺でおなじみのサハギンですね」

本当に水のあるところならどこでもいるな、こいつら。

しかも数が多い。

「じゃあ、俺が戦います」

影獣化を使用。

さらに影の中からクロも出てきた。

全身影で纏い、影を伸ばして剣のように振るう。

敵は多いが、ブロンズゴブリン程じゃない。

このくらいなら余裕だ。

「薙ぎ払い!」

次々に魔物がドロップアイテムに変わっていく。

こりゃ楽勝かな?

そう思ったときだった。

サハギンたちが突然逃げ出した。

魔物が逃げるのは初めてじゃないけれど、なんか違和感を覚えた。

湖面を見ると、さっきまでいたレッサーレイクサーペントも湖の底に潜っている。

このパターン、どこかで見た覚えがあるな。

誰もいないのに、魔物がどこかに隠れていなくなってしまった状態。

そうだ、万博公園ダンジョンや石舞台ダンジョンで、深い階層の魔物が現れたときに起こった現象だ。

まさか、ここにいるのか?

強敵が。