軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ガール・ミーツ・ガール

毎日少しずつD缶を開けているんだが、最近はあまりいいのが出ない。

俺の運も尽きたのだろうか?

一番の当たりは魔力の回復速度を上げる指輪だ。便利そうに思えるが、成長の指輪と同時に装備ができない。二つの指輪を同時に装備してしまうとどちらの効果も出なくなる。

情報サイトにも同種の魔道具アクセサリーは一緒に身に着けると効果がでないって書いてあった。

富士山の魔物と戦うときにこの指輪があったら便利だったんだろうけれど、いまはあんまり必要ないかもな。

次の当たりは、亜空の矢筒だな。矢を大量に収納できるっていうそこそこレアアイテムだ。ただし、ボウガンは高いし矢も高い。コスパを気にする俺が使うことはないと思われる道具だ。

ミルクはボウガンも使うので、あいつに使ってもらうとしよう。

そして日曜日。

待ち合わせ場所にミルクがやってきた。

スーツだ。

タイトスカートも穿いている。

「何でスーツ?」

「高校生とはいえEPO法人の就職面接なんでしょ? 当然よ」

「もしかして、履歴書も持ってきた?」

「もちろんよ」

とミルクは顔写真まで貼ってある探索者用の履歴書に、さらにステータスの内容証明まで持ってきていた。

そこまで堅苦しく考えなくてもいいと思ったんだが。

姫からEPO法人の申請許可が下りたって聞いた翌日、ミルクにも念のためそのことを伝えたのがまずかったのか?

いや、でも真面目な恰好をして評価を下げるってことはないはずだ。

姫を信じよう。

アヤメは一緒に行きたがってたんだけど、家の都合で出発が遅くなるって言っていたから、後から現地で合流となる。

俺とミルクは二人で電車に乗って、天王寺駅、そして姫の泊っているホテルに。

てっきりホテルのカフェで面接をするのだと思っていたミルクは、最上階の一つ下の客室フロアに来て少し驚いた。

「え? 姫さんってホテルに泊まってるの?」

「ああ、本宅は京都らしいんだが、土日はこっちに泊ってるらしい」

「そんなところに泰良が行ったの?」

「言っておくが、二人きりじゃないぞ? 三人だ」

「そのもう一人も女の子なんでしょ?」

「やましいことは一切していない」

俺がそう言うも、ミルクは疑うような視線を向けてくる。

本当になにもやましいことはしていないのに。

そして、姫の部屋に到着。

呼び鈴を鳴らす。

暫くして姫が出てきた。

……俺は驚いた。

姫がスーツ姿だった。

「いらっしゃい」

「初めまして、牧野ミルクと申します。今日はよろしくお願いいたします」

「丁寧なあいさつありがとう。私は押野姫よ。どうぞ中に入って」

と姫が中に入っていく中、ミルクが俺にアイコンタクトらしきものを送って来る。

《姫って、押野姫だったのっ!? 聞いてないわよ》

《言ってなかったか? でも、あいつ有名人だし、押野グループのホテルが面接会場だから気付くだろ》

《気付くわけないでしょ!》

って感じのアイコンタクトが繰り広げられた。

9割ほど合っているはず。

あとで謝っておこう。

まさか姫までスーツ姿とはな。

忍者姿よりマシだと思う。

俺はもっとラフな会合だと思っていたんだがな。

三人でゲストルームに行く。

「どうぞ座って」

「はい」

「履歴書はあるかしら?」

「持ってきました。ステータスの内容証明も提出したほうがいいでしょうか?」

「履歴書だけで十分よ。別に堅苦しい面接をするつもりはないもの」

履歴書の確認をしておいて、堅苦しくないもなにもないだろう。

姫はざっと履歴書に目を通す。

「レベル10、使えるスキルは火土の複合魔法。覚えている魔法は 熱石弾(ホットストーンブレット) の一種類のみ。最低限、冒険者としての体はできているわね」

「はい。昨日もダンジョンに行ってレベルを上げてきました」

「そう。では質問をするわね。あなたのパーティ内での役割を教えて」

「私の長所は魔法とボウガンの技術ですので、後衛から遠距離攻撃によるサポートを行うことができます。履歴書にも書いています通り、ボウガン精密射撃検定一級の資格も持っていますので、乱戦になったとしても的確にサポートできると自負しています」

ボウガン精密射撃検定なんてあるのっ!?

ダンジョン関係の資格は国家資格から民間資格までいろいろとできたって聞いてたが、そんなものもあったのか。

俺が想像していたよりも本格的な面接はその後五分間続けられた。

そして、姫は頷く。

「十分理解したわ。そして、結論から言わせてもらう。あなたをパーティに加えるメリットを今のところ感じられないわ」

姫がミルクのパーティ入りを拒否した。

立派な受け答えしてたじゃないか。

「おい、姫」

「泰良は黙ってて。一応、彼女のことは認めているのよ。もしも今回の面接をただの形だけのものだと思って舐められていたら、私はこの面接すらも必要ないと思っていたの。私たちは本気で世界一の探索者パーティになるの。そのためにもパーティは、特にパーティの四人目は厳選しないといけない。二十階層を突破するときに備えて」

「ボス戦……か」

ダンジョンの二十階にはボス部屋と呼ばれる部屋があり、そこにボスの魔物が現れる。

二十階以降には安全マージンがないと前に話をしたが、その最初の関門が二十階層のボスだ。

ボス部屋には四人以下の人数でしか入ることができない。

姫はそのことを言っているのだろう。

「既に後衛は決まっているの。欲しいのはサポートはサポートでも、補助魔法、もしくは回復系のスキルを持っている人間ね。まぁ、回復系のスキルを持っている人は滅多にいないからさすがに諦めているけれど」

「私は火系の魔法を使えます! 火系の魔法の熟練度を上げれば、攻撃値を上昇させる魔法も使えるようになる可能性があります!」

「そうね、可能性はあるわ。でも、絶対じゃない。あなたをパーティに入れるのなら、二十階層のボス部屋に挑戦する時に既に補助魔法を使える人間をパーティに加えた方が楽なのよ。そのためのコネだって持っているわ」

「…………理由はそれだけですか?」

「ええ、それだけよ。まぁ、レベルが低いのは困りものだけど、あなたの指輪――それがあれば私たちにも追いつけるでしょうし」

と姫は成長の指輪を見て言った。

彼女は俺が成長の指輪を鑑定したことを知っている。

一目で俺と同じ指輪だと見抜いたのか。

しかし、これはいくらなんでも――

「面接は以上よ。」

「ありがとうございます」

ミルクは姫に礼を言った。

さぞ悔しいだろうと思ったら、彼女は笑っていた。

「なんで笑ってるんだ?」

「わからないの? 姫さんは私にこう言ってくれたの。補助魔法を覚えたらパーティに入ってもいいって。しかも泰良たちが二十階層に挑戦するまで待ってくれるって」

あっ、そういうことか。

「それならそう素直に言ってくれよ」

「別に約束したわけじゃないわよ。牧野さんのステータスはだいたい把握しているから、あとは気構えの問題だったのよ。それと、一応あなたには謝っておかないといけないわね。石舞台のダンジョン、管理していたのはうちのホテルだったから」

「そんな、あれは姫さんのせいじゃないです。それに、いまわかったんですけど、泰良を静岡まで届けてくれたの、姫さんだったんですよね? もしも姫さんがいなかったらパパは助からなかったかもしれません。感謝しています」

「気にしなくていいわよ。私も面白いものが見られたから。ああ、私のことは姫って呼んでいいわ。堅苦しいのは終わり。同い年なんだし、楽にしましょう?」

「はい。では、私のこともミルクって呼んでください。私から一つ姫に質問をしていいですか?」

「なにかしら?」

「泰良のこと呼び捨てにしてますけれど、仲間以外の関係もあるんですか?」

ん? なにいってるんだ?

「いいえ。私と泰良はビジネスパートナー。いまのところ、彼のことは尊敬できる相手って思ってるわ」

「そうですか。いまは……ですか」

ミルクは少し安心したような表情を浮かべる。

「いまは」って、厳しいな。

俺が失敗したら見限る気満々かよ。

まぁ、世界一位を目指すのだからそのくらいは当然か。

このタイミングを見計らってチャイムの音が。

どうやらアヤメも来たようだ。

姫が迎えに行く。

「ねぇ、泰良。いま来たのって」

「もう一人のパーティメンバーだ」

「そう……ここからが勝負ね」

どういうことだ?

と思ったら、アヤメが部屋に入ってきた。

「壱野さん、お待たせしました。面接はもう終わり…………え? ミルクちゃん?」

「……アヤメ?」

ん? 二人は知り合いだったのか?

同じ高校だからその可能性はあったが、名前で呼び合う関係なのか。

つまり、友だちってことだよな。

だったら話が早い。

「……その指輪……幼馴染……」

「イビルオーガから助けてくれた同年代の男の子……」

お互い見つめ合ってぶつぶつ言ってる。

二人とも友だち……だよな?