軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ダンポンは教えられていない

「浅草ダンジョンの底に終末の獣がいたのですか? もう封印されていたのですね」

俺の話を聞いたダンポンが、銘菓ひよ子の個包装を剥がしながら、特に驚く様子もなく言う。

「なんだ、お前知らなかったのか? お宝ダンジョンのダンポンは知っていたのに?」

「知らないのですよ。僕たち分体は必要のない情報は与えられていないのです。お宝ダンジョンのダンポンは死んで星の流れに還ったので情報を得ることができたのですよ。ということは、この世界のダンジョンは終末の獣が来ることに備えて作られたダンジョンではなく、終末の獣から漏れる瘴気を浄化することと、万が一終末の獣の封印が解かれたときに対処するために作られたダンジョンなのですね」

その方が楽でいいと、ダンポンはひよ子を食べる。

ゆるキャラみたいな顔のダンジョン管理人が、ゆるい形のひよ子を食べている。

これなら、名古屋駅でぴよりんを買ってお土産に持ってきたらよかったかな?

だけど、あれは持って帰るのが難しいんだよな。

「美味しいのです。これが東京名物なのですね」

「そう思って買ったんだが、発祥は福岡らしい」

結局、こっちのダンポンは何も知らないのか。

って、ん?

いま、聞き捨てならないことを言ってたぞ。

「封印が解かれることってあるのかっ!?」

「そりゃ、可能性はあるのですよ。過去にも終末の獣の封印に成功したと思ったら、その封印が不完全だったり、完全のはずの封印を破滅主義者が意図的に封印を解いた事例もあるのです」

意図的に封印を解く奴もいたのか。

このダンポンが封印されている終末の獣の情報を知らなかったのも、そこから情報が洩れて、封印されている終末の獣の存在が世間に知られるのを恐れていたのかもしれない。

と話していたら、更衣室から女性三人が出てきた。

ミスリルゴーレムを魔物用解体包丁でバラバラにしてミスリル素材を大量に手に入れてから、全員でレベル上げをする。

と言っても、最近レベル上げも大変だ。

レベルが上がりにくくなってきたのだ。

以前は数十時間狩りをすれば1つはレベルが上がったのに、今では百時間狩ってもレベルが上がりにくくなっている。

レベルアップに必要な経験値の増加値が、深く潜る事で得られるようになった経験値の増加値より遥かに高いのが原因だ。

今日も休憩を何度も挟んで五十時間程狩りをしたが、アヤメのレベルが一つ上がっただけで、成果は正直微妙。

かといって、これ以上深い階層に潜っても、敵一体から得られる経験値は増えるが、しかし戦闘の時間が長引いてしまって本末転倒。

「そう考えるとお宝ダンジョンの金色スライム狩りをしたいよね。あれは確実にレベルが一つ上がるでしょ?」

「でも、ミルクちゃん。あそこでレベルを上げたらもっとレベル上げが大変になるんじゃないかな?」

「それを考えると、狩りが効率的にできるスキルか魔道具が欲しいわね。D缶開けをする?」

そうだな。

気分転換で、それもいいな。

一階層に戻ったら、ダンポンがういろうを食べながら、緑茶を飲んでいた。

大量の土産を持って帰ってきたんだが、もうなくなりそうだな。

さて、D缶を開けるとするか。

といっても、前半は俺一人の作業になる。

詳細鑑定を使って付箋に張られた番号とD缶の詳細鑑定の結果を読み上げると、自動的にパソコンに入力されていく。

「54912『コカトリスにD缶を温めてもらう』54913『マイナス20度以下の冷凍庫でこのD缶を100時間冷やす』54914『D缶を白く塗る』54915『このD缶をブラックフライデーの日に100円で売る』54916『昭和62年発行の50円玉を缶の上に載せる』54917『岐阜ダンジョンで巨大吸血蝙蝠の血を吸う』」

本当にD缶の開封条件は千差万別だ。

吸血蝙蝠の血なんて吸って病気にならないだろうか?

それと、昭和62年の50円玉か……と財布の中の小銭をひっくり返す。

財布の小銭は55円しかなかった。

やたら綺麗な昭和32年の5円玉と、お、50円玉が昭和62年だった。

ラッキー!

まぁ、このくらいは些細な運だな。

早速D缶の上に載せると、中から刀が出てきた。

菊一文字――って、確か新撰組の誰かが使っていた刀だった気が、いや、あれは贋作だったんだっけ?

まぁ、俺の今使っている刀の方が強そうだ。

ただ、特殊能力として、貫通ダメージを与える能力がある。俺にはラッキーパンチがあるのでやっぱり不要だが、硬い敵相手にダメージを与えられないとぼやいていた姫ならば使えるんじゃないか?

でも、あいつの短剣術と組み合わせは難しいか。

さらに音声入力でD缶のデータベース化を進めていると――

「さっき明石から連絡があったんだけど、泰良宛てに荷物が届いたんだって。明石にこっちに持ってきてもらったわ」

「俺に荷物? どこから?」

「葬送のタイタンって東京だとそこそこ知られている探索者パーティなんだけど、泰良の知り合いなの?」

あの時浅草ダンジョンで助けたチームだ。

律儀にお礼を送って来てくれたのか。

「でも、別に今度事務所に行ったときでもよかったのに。生ものだったら事務所で処理してくれても――」

「生ものじゃなくて、D缶らしいのよ。なんとなくだけど、泰良がこういうことで手に入れるD缶って、特別なものが入ってる気がするのよね」

姫が不敵な笑みを浮かべてそう言った。

俺もなんかそんな気がする。