作品タイトル不明
ぶらり途中下車のダンジョン
俺、ミルク、アヤメは大阪に帰ることになった。
姫だけはせっかく東京に行ったため、天下無双の東京支部でする仕事があるそうだ。
妃さんや、元ホワイトキーパーのメンバーも天下無双のメンバーなのに全部、任せっぱなしだったからな。
『しかし、この世界が本当は既に滅んでいたなんてな』
QRコードで注文して届けてもらったシンカンセンスゴイカタイアイス(メロン味)の蓋を開けながら、通路を挟んで隣の席にいるミルクとアヤメに話しかける。
内容が内容だけに、誰かに聞かれたら困るため念話での会話だ。
『そうだね。多分、世界っていうのは浅草ダンジョンの分かれ道みたいなものなんだと思うよ』
『ミルクちゃん、それは分岐された世界ってこと? 勇者がこの世界に来たら左の道、勇者がこの世界に来なかったら右の道ってこと?』
『うん、そう。そして、本当であれば一度進んだら引き返せない。それが本来の世界の流れ。でも、勇者はその分岐をやり直すことができる。なかった道に進むことができる。唯一違うとすれば、浅草ダンジョンはどの道を進んでも最後は同じゴールにたどり着くけど、世界の場合は全く違うゴールにたどり着くことかな?』
なるほど、的を射た例えだ。
浅草ダンジョンで何度も思った。
もしも別の道を進んでいたら何があったのだろうかと。
ダンジョンの中なら引き返して別の分かれ道に進めばいいだけだが、世界の流れは一方通行。やり直しは許されない。
それを許すのが勇者の力ってことか。
プラスチックのスプーンでシンカンセンスゴイカタイアイスを突きながら(刺さらない)考える。
『泰良、慌てないでね。時間は十分あるんだから』
『壱野さん、無茶だけは絶対にしないでください』
『わかってる。さすがの俺もあの勇者のようになるのはゴメンだ。まだやりたいこともいっぱいあるしな』
でも、長い間方法を模索し続け、それしか方法がないとわかったとき、俺はどうするだろうか?
だが、若返り薬もあるんだし、八十歳、九十歳と十分に生き、十分に満足できる人生を送ったと思えたときなら?
子どもだけでなく孫の姿も見て、これ以上自分のすることはないと思えた時なら、一つの世界を救うためにこの身を――
って駄目だ。
なんか考えが後ろ向きか前向きかよくわからない状態になっている。
「泰良、そのアイスクリーム、そろそろ食べられるんじゃない?」
プラスチックのスプーンが刺さった。
表面を削るように掬って口に運ぶ。
メロンの香りがする。
さすが静岡のクラウンメロンを使っているだけあるな。
うまい。
「メロンの出るダンジョンってどこかにないかな?」
「メロンならやっぱり茨城県かな? 生産量日本一だし」
「え? 北海道じゃないのか? 夕張メロンとか有名だし」
「北海道は三位だよ? 二位は熊本県。学校の授業で教わったよね?」
「社会は日本史を選択してるんだ」
「小学校の授業で教わったんだよ。泰良と同じクラスで――」
……そういえば、小学校の社会の時間にやたらと生産量について学ぶ時間があった気がする。
「スマホで検索したら、静岡と名古屋のダンジョンでも出るそうだよ? 17階層の魔物が落とすんだって」
「名古屋か……」
俺はスマホで名古屋ダンジョンの場所を見る。
名古屋駅はここで、ダンジョンはここか。
へぇ、案外近いんだな。
これならば、移動にあまり時間をかける必要はないか。
「よし、途中下車してみんなで名古屋ダンジョンに行かないか?」
「新幹線、新大阪までの切符買ってるよ?」
「途中下車をしても残りの分は返金されませんが……」
「いいだろ? たまにはこのくらいの無駄遣いも許されるさ」
俺はだいぶ溶けて柔らかくなったメロンアイスを食べてそう言った。
ということで、名古屋駅で途中下車した俺は、タクシーに乗って名古屋市役所近くの金シャチ横丁に。
名古屋城の近くのはずだが、堀と石垣は見えても肝心の天守閣は見えないな。
「ええと、名古屋ダンジョンは金シャチ横丁の――あぁ、ここか」
赤いNAGOYAと書かれたモニュメント(Gだけは金を意識しているのか黄色)の近くに、ダンジョンの入り口があった。
こちらも予約制なのだが、EPO法人の特権で並ばずに中に入る。
さぁ、名古屋ダンジョン。
楽しませてもらおう。
どんなものが出るだろうか?