軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

謎の黒い蛇

「だいぶ涼しくなったね。ようやく冬服も慣れて来たよ」

「うん、先週までずっと暑かったもんね」

水野さんと一緒にいつもの川沿いの道を歩いて彼女の家に向かう。

久しぶりにのんびりとした時間だ。

最近まで暑い日が続いていたが、ようやく涼しくなってきてやっと秋を感じられるようになってきた。

爽やかな風、野良猫二匹が並んで日向ぼっこをし、川ではチュウサギが魚を食べようとじっと佇み、川沿いの草地ではヌートリアが草を……ヌートリアは特定外来生物だから、長閑な景色の中にいて欲しくないな。

見た目はみんなに愛されているカピバラとあんまり変わらないんだけどなぁ。

まぁ、日本に野生のカピバラが大量にいたらいたで大問題になるけど。

と思いながら歩いていると、前方に二人の男がいた。

二十歳くらいだろうか?

バイクが傍に置いてある。

二人はじっとこっちを見ている。

「……壱野くん」

「……うん」

引き返して脇道に逸れよう。

そっちに行けば工場があり、工場車両も多く通る。襲ってはこないだろう。

と思ったが手遅れだった。

別の二人の男がバイクで回り込んで俺たちの逃げ道を塞いでいた。

俺は水野さんの前に立ち、言う。

「何の御用でしょうか?」

男たちは虚ろな目で俺を見る。

「わかるだろ? 金目の物を置いていけ」

「そこの白髪の女もな。抵抗するなら痛い目を見るぞ」

不良ってもっとヒャッハーって言うもんだと思ったが、二人は淡々と俺に要望を出す。

当然、そんな要望を飲むつもりはない。

「水野さん、後ろに下がってて」

「壱野くん!」

俺たちのやり取りを見てか、問答無用とばかりに不良C、Dが殴りかかってきた。

だが、遅い。

ダンジョンの中ほどの力は出せないが、それでもステータスの一部は地上でも反映される。

俺は殴りかかってきた腕の下に回り込んで腕を掴み、男の一人を捻ると、殴りかかってきたもう一人の男の盾にした。

あ、普通に殴られた――うわぁ、痛そう。

口から血が出てるよ。

殴られた男は脳震盪を起こしたのか気絶したので、残りの一人の顎に掌底を食らわせて気絶させる。

最初に遭遇した不良A、Bも襲ってくるが、俺の敵ではなかった。

こちらからは殴らずに制圧することができた。

これなら過剰防衛で警察に怒られることもないだろう。

「壱野くん、大丈夫!? 怪我はない?」

「大丈夫」

「よかった。でも、壱野くん、とっても強いんだね。まるでプロの格闘家みたいな動きだったよ」

「ありがとう。でも、プロの格闘家に失礼かもね」

俺のは所詮、優れた身体能力を使って無理やり制圧しているに過ぎない。

本当の格闘家ならもっと上手に戦えるだろう。

「一応警察を呼んでおく必要あるかな?」

水野さんが気絶した不良を見て言う。

「そうだな」

救急車の必要はないだろう。

と言おうとしたとき、何かの気配を感じた。

不良たちとは別の気配だ。

様子を見ていると、不良たちの口の中から何か黒いものが出て来た。

全長2メートルくらいの蛇のような形をしている。

「なにこれ」

「水野さん下がって」

なんだこれ?

人間に憑りついていた?

まるで終末の獣――いや、あれほどの力は感じないか。

だが、今の俺では勝てない。

そう思ったとき、影の中からクロが飛び出してきた。

「クロちゃん!」

「ガウっ」

俺と水野さんを襲って来たことにクロは御立腹のようだ。

「クロ、噛みつくなよ! そんなもん口の中に入ったら腹壊すぞ!」

「わふっ!」

クロは頷き、大きな、本来のダークネスウルフの姿に戻るとその強靭な爪を振り下ろす。

蛇が真っ二つになった。

なんだ、思ったより弱い?

と思ったら、二つに割れた蛇が二匹の蛇に変わった。

分裂したのか。

クロがさらに切り裂いていくが、分裂が続く。

そして、クロの手には負えなくなってきた。

一匹の蛇がクロに噛みつく。

クロが身体を振るわせて噛みついた蛇を弾き飛ばすが、このままでは――

俺は地面に手を当ててPD生成スキルを使った。

生み出されたダンジョンに片足を突っ込む。

「い、壱野くん! 足が!」

水野さんには階段に突っ込んだ足が地面にめり込んだように見えているのだろう。

「大丈夫! クロ! こっちにこいっ!」

クロが俺の後ろに下がったと同時に魔法を放つ。

「解放: 火の矢(ファイアアロー) 」

蛇が二匹同時に燃えた。

が――蛇が燃えたまま飛び掛かってきた。

俺は咄嗟にインベントリから取り出した剣で飛び掛かってきた蛇を斬ったが、やっぱり分裂しやがる。

一匹一匹は大したことない雑魚だが、斬っても倒せない、燃やしても無駄ってどうしたらいい?

獄炎魔法――ってこんな場所でそんなもん使ったら大騒ぎになる。

少なくとも不良A~Dは巻き込まれて灰になるぞ。

くそっ、こうなったら――

「かかってこいっ!」

俺は両手を広げ、敵の攻撃を誘う。

すると、蛇たちが同時に襲って来て、俺に噛みついた。

痛いっ! が耐えられる!

「エナジードレインっ!」

蛇たちから体力を奪う。

すると、俺に噛みついていた蛇たちが蒸発していって消えた。

「壱野くん、大丈夫!?」

「大丈夫大丈夫。ほら、俺の防御値高いし、クロが噛まれてもそれほど痛そうにしていなかったし」

そう言って、回復薬を飲む。

怪我は完全に回復した。

ただ、服はボロボロになってしまったなぁ。

制服だけど、ダンポンの修理サービスを使って元に戻してくれるだろうか?

そんなことを考えながら、トゥーナに念話で連絡を取った。