作品タイトル不明
超激レア缶――これあかんやつだ
四人でスキルを覚え、全員でステータスを確認した。
みんな強くなってきたな。
だが、姫の目標である世界一の探索者になる。
そして、エルフの世界を救うにはまだまだこの程度では足りない。
「あとはD缶を倉庫に置きにいって――」
「ねぇ、泰良。そろそろいいんじゃない?」
姫が言う。
うん、そうだよな。
何のことかは言われなくてもわかっている。
ミルクとアヤメも期待に満ちた目でこっちを見た。
そうだよな、みんなも気になるよな。
実は焦らしている俺も自分で自分に焦らされている。
「じゃあ開けるか!」
俺がD缶を――超激レア缶を取り出すと、みんな大きく頷いた。
魔法の缶切りはまだ予備があるのだが、姫はちゃんと昨日の交渉で魔法の缶切りを貰ってきたらしい。
せっかくなのでそれを使って開けることにする。
「当たり前だけど、見た目はやっぱり他のD缶と変わらないのね。泰良の詳細鑑定がないと判別できないんだ」
「まぁな。とはいえ、これまで鑑定してきたD缶の中に超激レア缶は一つもなかったから、珍しいことには違いないぞ」
「そうだよね。トレジャーボックスGから出てきたってだけでも凄いよね」
「中身はなんでしょうか? 武器? 防具? 魔道具? それともユニークスキルのスキル玉でしょうか?」
「宝の地図詰め合わせとかだったらいいわよね。レベル上げ放題よ」
みんなの期待が膨らむ中、俺は黄金に光る短剣――魔法の缶切りを握った。
そして、それをD缶に振り下ろす。
カンっ!
……弾かれた。
ってあれ?
なんで?
いつもはすんなり刃が通るのに?
「泰良、何遊んでるの?」
「遊んでないよ。これ、欠陥品なんじゃないか?」
「そんなことないわよ。ちゃんと鑑別のモノクルを使って鑑定してきたわ」
うん、鑑定をしても魔法の缶切りに違和感はない。
たとえ偽装されていたとしても詳細鑑定を使えば突破できる。
これは正真正銘魔法の缶切りだ。
だったら、なんで?
もう一度D缶を鑑定する。
【開封条件:超激レア缶のため開封不可】
ほら、いつも通り……いつも……通り?
「なぁ、アヤメ。前に激レア缶の開封方法について説明したことあったっけ?」
俺は記憶力に優れているアヤメに尋ねた。
「はい」
「俺、なんて伝えた?」
「レア缶と激レア缶は開封条件がないから、魔法の缶切りで開けるしかないって仰ってましたね」
「――っ!?」
俺はインベントリに分けておいたレア缶を取り出す。
【開封条件:レア缶のため開封条件無し】
あっれぇぇぇ?
微妙に違う。
いや、全然違う。
開封条件がないのと、開封ができないのとでは全然違う。
どうしてこうなった? なんで?
※ ※ ※
オフィスの地下倉庫にPDの入り口を設置し、みんなで中に入った。
突然のみんなの登場に、ダンポンは念動力で持ち上げて何か調べていたダンプルを落としてしまった。
「わ、落ちちゃったのです……うん、セーフなのですよ。それで、みんなどうしたのです? ダンプルの解析はまだ終わってないのですよ」
「超激レア缶を知ってるっ!?」
姫が開口一番にそう言った。
「もちろん、知っているのです。超激レア缶は手に入れたら世界を掌握できるようなアイテムから、それこそ物理法則を捻じ曲げるアイテム、ものすっごく強くなれるアイテムなど、とにかくすごいアイテムが入っているのです」
やっぱり凄いアイテムが入っているのは間違いないのか。
「開封不可ってなってるみたいなのですが、どうやったら開けられるのでしょう?」
「魔法の缶切りを使っても開けられないの」
「管理者が、その人になら缶の中身を託してもいいって思ったら開くのですよ。危ないアイテムも多いので、変な人には渡せないという世界への配慮なのです」
「じゃあ、お前に開けられるのか?」
管理者って、ダンポンとダンプルのことだろ?
よかった、ダンポンと知り合いで。
普通の人なら、ダンポンとこうして会って交渉とかできないもんな。
「管理者っていうのは、そのD缶を手に入れたダンジョンの管理者なのですよ。あ、どこのダンジョンで手に入れたものかわからないのなら、僕が調べるのです。もちろん、料金はいただくのです」
「いや、これは……ダンジョン学園のダンジョンで見つけたんだが……」
「あ……」
とダンポンは鉄の像を見る。
つまり、このD缶を開けるには、ダンプルを元に戻して開けてもらうしかないってことか?
つまり、ダンプルを元に戻すしかないと。
「ねぇ、ダンポン。仮に、このダンプルがこのままだったらどうなるの?」
「そうなのですね。たぶんですけど、ダンプルの本体がこのことに気付いたら、新しい分体が送られて管理者を引き継ぐと思うのです」
「だったら、その管理者なら開けられるの?」
姫が言う。
うん、ダンプルは殺されても分体が送られてくる。
実際、キングさんは何度かダンプルを殺しているらしい。
彼女の意見は合理的だ。
このダンプルを見捨てるという点を除けば。
「無理なのです。開けられるのはこのD缶を設置したこのダンプルだけなのですよ。そして、別の管理者がダンジョン学園のダンジョンの管理者を引き継いだ時点で、このダンプルには管理者権限がなくなるので、やっぱりこの超激レア缶は開けられなくなるのです」
……え?
それって、かなり事情が変わってきたぞ。
いまはまだ、ダンプルが鉄化していることは俺たちだけしか知らない。
普段から長い期間姿を消すこともあるので、その一環だと思われている。
だが、それでも時間が経てば怪しまれる。
急いでこのダンプルを元に戻さないと、D缶が開けられなくなってしまう。
「なんかめっちゃ嵌められているような気がするんだが――」
超激レア缶という餌をぶら下げられているような気分だ。
青木に救援を求めたのも、青木にラージマッピングのスキルがあって隠し部屋を見つけられると思ったからじゃないだろうな?
「ねぇ、ダンポン。調査中だって話したけど、何か原因がわからないの?」
「うーん、今は調べている途中なのですが、たぶんこのダンプルが元に戻らないのは他のダンジョンにエネルギーを奪われている可能性が高いのです」