軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ダンジョン局大阪支部長の憂鬱2#side相原

私の名前は相原。元防衛省の人間で、いまではダンジョン局大阪支部の支部長をしている。

三十七にして防衛相の企画官へと出世した私は……ってそんな前語りはもう必要ない。

私の経歴や肩書きなど、この台風を前には無意味なのだから。

台風というのは、天下無双の理事長、押野姫と理事の壱野泰良――チーム 救世主(メシア) のアルファとベータの名の方が世間一般には浸透している――のことだ。

彼らが来ると、間違いなくダンジョン局は大きな利益を生む結果になる。

だが、それと同時に仕事も増える。

ダンジョン局の人員は二倍に増えた。

中途採用で新人を増やしたが、もはや新人が増えても追いつかず、他支部から即戦力となる職員に応援に来てもらいなんとか仕事をこなしてきた。

だが、この二人が来たらどうなるか?

また莫大な仕事が舞い込んでくるに違いない。

どうせなら他の支部に行ってくれ。

そう思ってしまう。

「今日はどのようなご用向きで?」

園山が切り出した。

顔は少々引きつっている。

さて、いったいどんな爆弾が投下される?

チーム 救世主(メシア) がレジェンド宝箱を開けたところは見ていた。

だが、あれについては防衛相の管轄となった――我々の出番はない。

鈴原西郷の件も我々のところに持ってくる用件ではない。

彼は公安送りとなった。

あのキングが関わっている以上、生半可な処置で済まされるわけがない。

西条虎の時と違い、きっと裁判に掛けられることもなく、一生日の目を浴びることもないだろう。

「今日の用はこちらに関することです」

そう言って、壱野氏が鞄の中から取り出したのは、巨大な金属の塊だった。

待て、明らかに鞄のサイズと中身のサイズが一致していない。

まさか、マジックバッグか!?

あるのではないかと言われていたマジックバッグが目の前に――いや、いい。私は何も見ていない。何も知らない。何も考えない。

「(支部長、あの鞄って)」

「(いい、何も言うな!)」

園山を黙らせ、金属を見る。

これは銀だろうか? とても綺麗に光っている。

「これはミスリルの塊です」

「ミスリルっ!? これ全てがっ!?」

ミスリルといえば、一部の30階層クラスのボスが時折落とす貴重な金属だ。

様々な企業が必要としているが、供給が全然追いついていない。

またとんでもない爆弾を持ってきたな。

しかし、彼らが持ってきた爆弾にしてはまだ小さい方だ。

大量のミスリルの買い取りなら、支部長の私が呼ばれたのも納得できるが、一回買い取りを済ませ、ミスリルを必要としている企業に分けて卸せばいいだけだ。

「非常にありがたいですね。ミスリルは常に不足していますから」

「そうですか。では、我々はこれを定期的にダンジョン局に卸したいと思いますがよろしいでしょうか?」

壱野泰良が言った。

「………………………………………………………………………………はい?」

待て待て待て待てウェイトウェイトウェイトウェイト。

定期的にだと?

ダンジョン局はダンジョン全般に関する事業を行っているが商社ではない。

ミスリルを定期的に!?

「この量のミスリルをですか?」

「いえ、これ以上ですね。希望なら、次回はこの十倍くらいは納品できます」

頭がいたい。

彼らは何を言っている?

ミスリルとアルミ缶を勘違いしていないか?

そう簡単に集めて来られるものではない。

だいたい、この量のミスリルがドロップするなんて話、聞いたことがない。

「いったいどうやって……」

「ああ、種は簡単ですよ。魔物用解体包丁っていう武器がありまして、それを使ってミスリルゴーレムの腕や脚を斬り落とした場合、ミスリルゴーレムを倒しても切り落とした腕や脚はそのまま残るんです。正真正銘純度100%のミスリルの塊として」

魔物用解体包丁……まず、そのようなものは聞いたことがない。

そんなアイテムがあるのか。

そして、一番の問題は、壱野氏がそれを守るべき秘密とも考えずに堂々と我々に語って聞かせるということだ。

「それを我々に語ってもよろしいので?」

「はい。まぁ、ミスリルゴーレムを狩るには、私のスキルが必要ですので」

と壱野氏は語る。

彼とは何度か会っているが、段々と自信が出てきている様子だ。

魔物用解体包丁――こういう特殊な武器は攻撃値が低いことが多い。

その武器でミスリルゴーレムの身体を斬り落とすには特殊なスキルが必要だ。

たとえば、かつて鈴原西郷の 鋼鉄肉体(メタルボディー) を打ち破ったような特殊なスキルが。

仮に私から包丁の情報が洩れて、彼らの機嫌を損ねれば、ミスリルの安定供給が不可能になるかもしれない――そう言っているのかもしれない。

押野姫が今日はずっと黙っていることが少し恐ろしい。

「わかりました。ミスリルの買い取り価格ですが、こちらの量は従来の買い取り価格で買い取らせていただきます。しかし、安定供給となると価格が落ちることになりますが」

「それはお任せしますよ。ミスリルはダンジョン局に貸しを作るための手土産みたいなものですので。本番はこれからです」

壱野氏は笑った。

待て待て待て、これが前座だと?

ミスリルの安定供給は日本が――いや、世界が望んだ一大事件。

金の卵を産む鶏どころか、無限に金が掘れる金鉱山よりも貴重な出来事が、ただの手土産?

彼は一体、何を語ろうとしているのか?

「スキル玉というのはご存知ですか?」