作品タイトル不明
改変されていく歴史
これから始まる大会はダンジョンに潜って最下層のボスを倒してドロップアイテムを持って戻ってくるらしい。
『ダンジョンってどこにあるんだ?』
『この村の中にあります。入り口は七カ所あります』
『七カ所もあるのか!? 凄いな……』
大阪市内でも二カ所しかない。
日本では東京二十三区内に五カ所のダンジョンがあり、ダンジョン密度が最も多いって言われているけれどそれ以上だ。
『七カ所と言っても、地下深くで全部繋がっています』
『入り口が複数ある一つのダンジョンなのか』
日本でもそういうダンジョンができたら便利そうだ。
いまでは少しマシになったが、一階層はかなり混雑していて、二階層より下は空いている。
一階層だけでも複数あったら便利だろう。
ただ――
『ボス部屋まで行って戻るとなったら、かなり時間かかりそうだよな』
21階層の転移用魔法陣を使って帰ることができるなら、片道だけで済むけれど、それでも一階層あたり10分で踏破しても3時間以上かかる。
『ダンジョン内の地図を把握している奴が有利そうだし、優勝は無理か。それに時間もかかりそうだ』
『いえ、ダンジョン内ではスタッフがいて道案内をしてくれるので、地図は覚えなくてもいいですよ。十階層までしかない低階層ダンジョンなので、直ぐに終わります』
『低階層ダンジョン?』
『イチ様の大陸では違うのですか? ダンジョンには10階層までの低階層ダンジョン、20階層までの中階層ダンジョン、30階層までの高階層ダンジョン、そして終わりが見えない無限ダンジョンの四種類あると思うのですが』
『俺のせか――大陸だと無限ダンジョンしかなかったな』
『凄い――魔境なのですねっ!?』
『……魔境、そう言われたらそうなのか』
俺にとってそれが普通だからそういうものだと思っていた。
でも、終わりがないって、人にとっては苦痛かもしれない。
ダンジョンといったら地下深くに延々と続くイメージだったが――あ、でも生駒山上遊園地ダンジョンは10階層までしかなかった。
そういうダンジョンってことか。
とはいえ早ければ一時間か。
俺は懐中時計を取り出す。
『イチ様、それはなんですか?』
『これは一定時間ごとに針が動く魔道具なんだ。短い針が二周したら俺はここを去らないといけないんだが、もう一周終わってるからな。たぶん大会に参加する時間はないよ』
『そうですか……あ、じゃあここのダンジョン、少しだけ入ってみませんか?』
『ここのダンジョン? いまから大会が行われるんだろ?』
『大会が行われるのは低階層ダンジョンで、中階層ダンジョンは関係ありませんから。行きましょう! 私もこの前、中層ダンジョンデビューしたばかりで、ゴブリンくらいしか倒せませんが!』
いや、俺はそれよりも調べたいことが……ん? いや、待てよ。
『なぁ、ミレリーはダンプルから話を聞いたことがあるって言ったよな? そこでダンプルに会えるのか?』
『はい。私、ダンプルさんとは仲がいいんですよ』
『そのダンプル紹介してくれないか?』
『いいですよ』
ダンプルと話ができる。
記憶の世界だったら、もしかしたら守秘義務などもなく、知っている情報は全部教えてくれるかもしれない。
我ながら素晴らしい発想だ。
普通の調査ならみんながしてくれるはず。
俺には俺にしかできない調査をしよう。
※ side 牧野 ミルク ※
それは突然のことだった。
トゥーナちゃんがアイテムボックスから一冊の本を取り出した。
「トゥーナちゃん、その本は?」
「……ん、エルフの歴史が記された一冊。もしもトゥーナが世界を救えなかったとき、エルフの世界の歴史を残す必要があると渡された本……の一部」
「エルフの歴史書。ものすごく分厚いけど、それで一部なんだ」
「……ん、あと五百冊以上ある」
と彼女はその本を捲りながら言った。
エルフの女王となる者は、この歴史書の全てを読む必要がある。
トゥーナも全部読んだそうだ。
それを取り出したってことは、湖の治水工事の記録を確認するのだろうか?
「……この歴史書には多大な功績を残したエルフの名前が残されている」
「偉人名鑑みたいな感じかしら?」
「……ん、姫様の言う通り。エルフの村では、ダンジョンが出来てから年に一度、クロスラティス大会……この世界で言うビンゴ大会が開かれている。そのクロスラティスの百二回大会で、唯一無二の記録を残した強運のエルフがいた。6億分の1の確率となる最初の四マスで揃えた者が……その人の名前は――イチ・ノ・タイラ」
「「「「…………っ!?」」」」
本当にっ!?
本を見たけれど、エルフの世界の文字は私には読めない。
だけど、トゥーナちゃんが嘘を言う理由がない。
「……なんで忘れてたの」
トゥーナちゃんが一番混乱しているみたいだ。
ていうか、やっぱりそれって泰良だよね?
ビンゴ大会で優勝とか、いかにも泰良らしい。
「つまり、泰良は過去のエルフの世界にいるってこと?」
「過去の世界にっ!? そんなの聞いたことがないのです」
ダンポンが声を上げた。
でも、ただの偶然とは思えない。
トゥーナちゃんがいま思い出したのも、いま現在進行形で、泰良が歴史を塗り替えているとしか思えないよ。
「泰良、過去の世界にいってビンゴ大会とか何やってるのよ」