軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

終末の獣の真の姿

「六対一、いや、二かしら? 観念したらどう?」

姫が煽るように言う。

だが、鈴原の余裕の表情は崩れることはない。

「どれだけ雑魚が集まっても、私の防御を突破できなければ同じことだ。むしろ探して殺す手間が省けたというものだ」

確かに、鈴原の強大な防御値、 鋼鉄肉体(メタルボディー) 、 守護者の右手(ガーディアンズハンド) 。

『私が時間を稼ぐわ! 泰良、何か打開策を考えなさい!』

『わかった! でも正面から攻撃するな! 守護者の右手(ガーディアンズハンド) の反撃を食らう。攻撃するなら背後からだ』

守護者の右手(ガーディアンズハンド) は背後からの攻撃に対処できない。

フレイムリザードマンが攻撃したとき、奴は 守護者の右手(ガーディアンズハンド) を発動できなかった。

鈴原は言った。

守護者の右手――その名前の由来は右手に盾を持つ者を意味すると。

盾は正面からの攻撃を防ぐものだ。

背後からの攻撃を受け流して相手に返すことができないのだ。

『わかったわ。とはいえ、背後から攻撃したところで私の攻撃が通るとは思えないけどね』

鈴原が姫を攻撃しようとするが、防御特化の鈴原の俊敏値は決して高くない。

いまの姫ならそう簡単に鈴原の攻撃を受けることはない。

石化ブレスのような範囲攻撃を使われたら厄介だと思ったが、終末の獣はそれを使ってくる様子はない。

姫への攻撃を諦めたのか、鈴原は俺に向かって突撃してこようとするが、姫に足を引っかけられて躓きかけていた。

なるほど、あれが姫の鈴原との戦い方か。

いかに防御値が優れていても、走る足を引っかけられれば転びそうになると。

「泰良、直ぐに治療するよ――」

ミルクがポーションをかけて治療してくれる。

失われた体力が回復していく。

『それで、何か考えがあるの? 鋼鉄肉体の時間が切れるのを待つ?』

ミルクが作戦内容を聞かれないように念話で尋ねた。

『時間稼ぎは難しい。 鋼鉄肉体(メタルボディー) は終末の獣も交代で使えるそうだ』

そもそも終末の獣がいなかったら、一撃入れるだけで痛みでダウンさせられるのに。

『終末の獣を無理やり引き剥がすことはできないのでしょうか?』

『無理だろうな。手袋の姿っていうのが厄介だ。見てみろよ、あれ、パンパンになって鋼鉄になってる――絶対に剥がせないぞ。手袋から本来の姿に戻ってくれたらいいんだが――』

『本来の姿――ちの太くん、アレが使えるのではないか?』

アレって……アレかっ!?

その存在を封印してすっかり忘れていた。

俺はインベントリからソレを取り出す。

「姫――下がれっ!」

俺の言葉に姫たちが散開する。

そして――

「お前の正体を現せ!」

俺はそれを使った。

「なんだそれは――!? それが一体何のつも――」

鈴原が違和感に気付いたようだ。

自分の右手の手袋がもこもこと動き始めたのだから。

『貴様、一体何ダソレワ!』

終末の獣の声が聞こえる。

「ああ、お前の真の姿を見せるためのマジックアイテムだよ、終末の獣――」

俺が使ったのは真実の鏡――相手の真実を暴き出す魔道具だ。

これで終末の獣は手袋でも白竜でもない、本来の姿を見せるはずだ。

「それがお前の本当の姿か、終末の獣」

目も鼻も口もない。

ただの白い球がそこに浮かんでいた。

終末の獣の真実の姿を暴き出した。

可能ならば 鋼鉄肉体(メタルボディー) の状態変化も無効化できるのではないかと思ったが、バフ解除は無理ってことか。

『オノレ、ヨクモ――』

終末の獣の怨嗟の声が聞こえるが、このチャンスを無駄にはできない。

「解放: 短距離転移(ショートワープ) 」

魔法を使って鈴原の真正面に転移した俺は拳を構える。

「覚悟しろ、鈴原!」

「忘れたか――私には 守護者の右手(ガーディアンズハンド) が」

「借り物の力だろっ!」

俺の拳が鈴原の鳩尾に食い込んだ。

「ぐほっ」

鋼鉄の肉体の鈴原がたったの一撃で倒れ込み――

「い、痛い痛い痛いっ!」

痛みに転げまわる。

前に見た光景だな。

さて、後は終末の獣を――

と先に姫の分身が終末の獣に斬り掛かっていた。

「急所突きっ!」

「朧突きっ!」

「滅多斬りっ!」

三人がかりの短剣術――だが――

「ダメ! 姫、泰良様! 後ろに跳んで!」

トゥーナが大きな声で叫ぶ。

普段叫ばない彼女の声に、俺は反射的に後ろに飛びのいた。

直後、近くにいた終末の獣から白い煙があふれ出た。

だが、姫たちは既に攻撃モーションに入っていたため逃げ遅れ、煙を浴びて石へと姿を変えていた。

「大丈夫、石化したのは分身よ。それにしても石化ガスを使えたのならどうしてもっと早く使わなかったのかしら」

「かなり無茶して使ったみたいだ。終末の獣の気配が一気に薄くなった」

おそらく、もう使えない。

煙の向こうではまだ鈴原がのたうちまわっていた。

「おい、なんとかしろ! 痛みを取れっ!」

「無理ダ。ドウイウ理屈カワカランガアノ鏡ガアル限リ、オ前ニ憑リツケナイ――」

「それでもなんとかしろ! そうだ、あれだ! お前がずっと望んでいたあれを許可する!」

「ナニ!?」

「そこのエルフの娘を殺すまで、この身体を自由にして構わん!」

嫌な予感がする。

「解放: 神竜巻(ゴッドトルネード) 」

「天狗暴風っ!」

アヤメとゼンが風の力で石化ガスを散らす。

だが、終末の獣の姿はどこにもない。

一体どこにいった!?

『探シテモムダダ、イチノタイラ。俺ハコノ身体ノナカニイル』

また憑依したのか。

ならば真実の鏡でもう一度正体を暴いて――

『無駄ダ! ソノ鏡、ドウヤラ映シタ者ノ変化ヲトクモノダロウ? 身体ノ中ニ入ッタ俺ハ映セマイ! 鈴原ハ俺ニ体内ヘノ侵入ダケハ許サナカッタ。体内ニ入レバ 鋼鉄肉体(メタルボディー) ノ効果ヲ無効化サレ、意思ヲ乗ッ取ラレル事ニ気付イテイタノダロウ。ダガ――』

「ようやくこの身体の主導権を得ることができた。貴様らに勝ち目はないぞ!」

と登り階段を背に、勝ちを宣言する鈴原――終末の獣だったが、彼は気付いていなかった。

階段から一人の男が降りてきていることに。