軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

梅田ダンジョン30階層(その1)

【天下無双は金の力で認可を受けているインチキギルド】

詳しく内容を読むと、そもそも原因は、天下無双の理事長である姫が押野リゾートグループの会長、押野亜里沙の娘であることに端を発する。

探索者界隈での押野リゾートグループと押野ホテルズ&リゾーツは金と権力を使って、各地のダンジョンを独占利用していると評判がよくない。

さらに、ダンジョン局への貢献も、魔道具の開発、魔道具の激安貸与、そして塩漬け依頼の達成というのがよくなかったようだ。

EPO法人の探索者の正会員はホワイトキーパーと妃さんたちが増えたが、それまでは水野さんを含めても五人しかいなかった。しかも全員18歳ときた。

その人員で価値の高い魔道具を見つけたり、塩漬け依頼を達成するためにドロップアイテムを集めることができるわけがない。金に物を言わせて魔道具を開発したり、魔道具や素材を買い集めて納品している。

そう書かれていた。

それは、長年ダンジョンに潜ってコツコツとレベルを上げて地位を築いていた人や、EPO法人を立ち上げたくても認可の下りなかった人からしたら到底許せるものではないらしい。

中には押野グループが節税のために作った実体のない架空組織だなんて言っている奴までいる。

「ねぇ、姫。こういうネットでの悪口って開示請求して訴えることができるって聞くけど、どうなのかな?」

ミルクが尋ねる。

「顧問弁護士に相談したんだけど、噂の尾ひれだけを信じてバカな書き込みをしている奴は可能ね。『ダンジョンの中で闇討ちして実力を確かめてやる!』みたいなことを言ってる奴は開示請求してしかるべき処置をするわ。だけど、この噂を広めた元凶はちょっと難しいのよ」

なんでも――

【天下無双の功績を調べたら、絶対にこの人数で達成できるような依頼じゃないんだけど、何かコツがあるのかな?】

【親会社が押野グループだと、探索者もいっぱいいるだろうから素材をいっぱい提供してくれて楽だろうね】

【やっぱりダンジョンを管理しているグループのお嬢様相手だと、ダンジョン局の審査も甘くなるのかな?】

みたいな誹謗中傷と呼ぶには少し難しい書き込みから始まり、別の人がそれを炎上に繋がるように切り抜き記事で誘導。

そして、それを見た何も知らない人たちがさらに書き連ねて今の炎上になっているらしい。

「まぁ、人数が少ない胡散臭い企業ってのは半分事実だよな」

PDに潜っている時間が多いせいで、通常のダンジョンの出入りも少なかったからな。

普段から通常のダンジョンの中で頑張っていたら、「頑張ってるな。天下無双の人か」と認識されただろうか?

「そうだよね。まぁ、人の噂も七十五日って言うし、そのうち収まるでしょ」

ミルクが気楽に言うが、本当にその通りだな。

ムキになって反論する必要もないだろう。

と俺は気楽に笑うとアヤメが少し困ったように言った。

「あの、皆さん。戦闘に集中しましょうよ」

「集中っていってもなぁ……」

現在、梅田ダンジョンの三十階層で複数の魔物――ロボットゴリラ(見た目から命名)と姫の分身達が戦っていた。

ロボットゴリラは身体の半分くらいを機械に改造したゴリラで、正しくは人造ゴリラ13号という名前らしい。

ド〇ゴンボールのことを思い出すネーミングセンスだ。

人造ゴリラって、絶対人間が造ってないだろう。

1号から12号はどこにいった?

ロボットゴリラたち、一撃はメッチャ強いのだが、動きがそれほど速くなく、さっきから姫の分身に一度も攻撃が当たらない。

一応肩代わりスキルを使ってダメージが来てもいいように身構えてはいるのだが、全くの無駄足状態ならぬ無駄肩状態だ。

「私も混じってきていいかしら?」

「分身だけで様子見って言ったのお前だろ?」

とはいえ、本当に姫の分身達は楽しそうにロボットゴリラを狩ってるな。

アヤメの 風の速足(ウィンドウォーク) を掛けて貰った後に使った分身のため、巧遅拙速の効果が如実に現れていて、風魔のクナイの入りがいいようだ。

現在の姫のレベルだと格上の相手ということになるはずが、もはや子ども扱いになっている。

と、生き残っているロボットゴリラたちが一斉にドラミングを始めた。

これによりロボットゴリラの攻撃値が大きく跳ね上がる。

ロボットゴリラがその拳を振り下ろすと金属製の床が砕ける威力になった。

あんなの姫の分身に当たったら一撃でダウンしてしまう。

が、姫の分身はその攻撃を避けるどころかその腕を足場にして跳躍、半回転し、さらに空中を蹴ってロボットゴリラの首に一太刀を入れた。

攻撃値が上がったのにさっきまでの光景と全然変わっていない。

「そういえば、青木と格ゲーをしているときによく言ってたな。当たらなければどうということはない」

「真理ですね」

「ねぇ、泰良。あっちから魔物が来てるけど、私がやってもいいかな?」

アヤメと話していたら、ミルクが遠くからやってくるロボットゴリラを目敏く見つける。

俺は少し嫌な顔をしたが、まぁ、許可を出した。

「解放: 金属溶解(メルトメタル) 」

ミルクの杖の尖端から液体が噴射されてロボットゴリラたちの身体に当たる。

すると、金属部分が溶けていく。

ロボットゴリラは身体の一部、さらに重要な臓器などは生身の身体のためそれで死ぬことはないのだが、身体を覆っていた金属が溶けてその身体にへばりついて身動きがとれなくなり、もがき苦しんでいる。

あ、金属が口を塞いだ――窒息コースだな。

てな感じで、見るも無残な光景が、ロボットゴリラたちを待ち受けていた。

「本当にお前の魔法って梅田ダンジョンだと最 凶(・) だよな」

「そんな、最強だなんて。泰良や姫ちゃんにはまだまだ敵わないよ」

金属が溶けて、動けず、だが死ななかった魔物はアヤメが風魔法で一掃。

とさっきより大きなロボットゴリラが現れた。

今度は俺の出番だな。

「姫、交代だっ! クロ、行くぞ!」

と姫の分身を下がらせて俺が前に出る。

影の中からクロが飛び出し、雄叫びを放つ。

一瞬、ボスロボットゴリラの動きが止まった。

いまだ!

応用剣術其之 捌(はち) ――

「 龍牙貫天(りゅうがかんてん) 」

気合いを溜めて、斬撃を放つ。

風魔法の銃弾のような剣戟はロボットゴリラの首を貫通し、さらに天井へと突き刺さった。

溜め時間が長いし連発できない、さらに技を使った後一瞬身体が硬直してしまうので使い処に悩む技だが、その分威力は申し分ない。

鞄からチュールを取り出し、頑張ったクロにご褒美をあげる。

「クロちゃんもだいぶ動きが速くなったよね」

「ああ。どうやら俺がレベルアップするのに合わせてクロも成長しているらしい。テイムした魔物ってそういう感じなのか?」

「捕獲玉だとそういうデータはないわね。ただ、GDCグループで行われている通常の魔物を黒のダンジョンに運んで倒してテイムする実験では確かに主人の成長に合わせて魔物の動きが若干俊敏になってるってデータはあるわね。元がスライムやゴブリンだからたかが知れてるけど」

「スライムより強い魔物で実験はしないのか?」

「魔物をダンジョンの外に運び出すのはリスクが高いのよ」

確かに、強い魔物が地上に出たらそれだけでパニックだもんな。

ゴブリンくらいなら対処できるだろうけれど、さっき俺たちが倒したロボットゴリラ一体だけでも町を破壊できる力はある。鉄の鎖でつないでもそれを引き千切り、鉄の檻に閉じ込めても破壊して脱出するくらいの力はある。

「リスク回避のために黒のダンジョンの瀕死状態の魔物を何度か運んで通常のダンジョンで倒してみても、テイムはずっと失敗しているみたい。もしかしたら強い魔物をテイムするには強運が必要なのかも」

と姫が俺の眼を見て言う。

ちなみに、このテイム実験で得られたデータとして、一角ウサギをペットとして飼う金持ちが増えているとのこと。

普通のウサギよりも長生きで、人の言うことを聞き、なにより珍しい、と静かなブームなのだとか。

「坊主、また強くなっておるな。いまならかつての拙者では相手にならんかもしれん」

アヤメの横でふわふわ浮かんでいたゼンが言う。

そういや、天狗は三十階層レベルの敵だって言われていたか。

たぶん、ロボットゴリラのボスくらいの強さだった気がする。

「それって、今のお前ならいい勝負になるって言いたいのか?」

「無論、簡単に負けるとは思っておらん」

チビ鬼姿で堂々と言う。

まぁ、風の力とか天狗の時より強い気がする。

こちらもこちらで、アヤメの成長に合わせて強くなっているのだろう。