軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ホワイトの正体

キング・キャンベル――彼がそうなのか。

かなりガタイのいい金色の髪と顎鬚を蓄えた白のスーツを着ている男。

牛蔵さんよりも年上、もう50近いと聞いていたが、その覇気は年齢を感じさせないどころの話ではない。

さっきから俺は全く動けない。

蛇に睨まれた蛙の気持ちだ。

かつて西条に威圧を受けたときも似たような感じになったが、西条との違いはキングが何もしていないということだ。

気配探知スキルで、その気配を読んでしまったせいで動けなくなったのだ

これがただの恐怖だったら八尺瓊勾玉が無効化してくれていただろう。

だが、八尺瓊勾玉がこれを無効化しないのは、これが悪い状態ではなく、ただ生き延びるための生存本能から来るものだからかもしれない。

そのキングは姫を一瞥すると――何も言わずにこちらに来る。

「確認は済んだだろう。壊させてもらおう」

キングがそう言う。

「いや、それは君の都合だろう? 彼らはこの事件の当事者だ。特にエルフの女王は命を狙われたんだ。このホワイトと呼ばれていた魔物でもない異物の正体を知る権利がある」

「必要ない。私だけが知っていればそれでいい」

「ははは、それは君の娘を巻き込まないためかい? もう無駄だよ。彼女は巻き込んだ。僕が巻き込んだんだ。君の最初の思惑通りにね」

ダンプルは笑って言った。

途端にキングがダンプルを殴った。

ダンプルが弾ける。

死んだ?

殺した? ダンプルを?

「やれやれ、君に殺されるのはこれで何体目かな?」

と思ったら背後からダンプルが現れた。

さっきとは別のダンプルだ。

というか、何回も殺されているのか、ダンプル。

「ダディ……あの黒のダンジョンの一斉攻略はダディがダンプルにさせたことじゃないの?」

「…………」

キングは何も言わない。

「僕が勝手にやった。キングの目的を果たすにはそれが一番手っ取り早いからね。まぁ、事後承諾で良いと思ったんだけど、あの時は七回くらい殺されたな」

ダンプルが笑って言った。

「ダディの目的って何なの? 私も力を――」

「必要ない。今のお前が一緒に来ても足手まといになるだけだ」

彼はそう言うと、拳を振るった。

その先にあったのは剣の形をしているホワイトだった。

キングの拳をまともに食らったホワイトは粉々に砕けると、魔物が死ぬ時と同じように消えていなくなった。

「行くぞ、ダンプル」

キングはそう言って去ろうとする。

姫も何か聞きたいだろう。

だが、キングの背中からは何も聞くなというオーラが出ている。

その状態で質問をすることができない。

「待って……ください」

俺はなんとか声を絞り出して言った。

「トゥーナは――このエルフの女王はホワイトに命を狙われました。これから彼女を守るためにも、ホワイトの正体を教えてください。そうでないと、俺たちは誰を警戒したらいいか、何から彼女を守ればいいかわかりません」

キングは立ち止まって何も言わない。

だが、言ったのはダンプルだった。

「彼の言うことは正しいよ。君の目的は語らなくてもいい。だが、敵の正体は教えておくべきだ」

ダンプルが言う。

やはりキングは何も言わないが、ダンプルはキングの返事を聞かずにこちらを見た。

沈黙は許可とみなすとでも思ったのだろう。

「あれは、終末の獣――その末端中の末端だよ」

「…………っ!?」

終末の獣っ!?

それって、トゥーナの世界を滅ぼしたっていうあれか?

「待ってくれ、それは異世界の怪物だろ? なんでこの世界にいるんだよ」

「もちろん、エルフの世界を完全に滅ぼすためだよ。終末の獣の目的なんてそれしかないからね」

とダンプルは言った。

「つまり、あの終末の獣の末端は、滅ぼし損ねたエルフを探してあっちの世界からわざわざこの世界にやってきてひたすらエルフが現れるのを待っていたわけだ。いやぁ、その根気には僕も恐れ入ったよ」

ダンプルが笑って言った。

「まぁ、終末の獣の末端がそう何匹もこの世界にいるとは思えないからね。そこは心配しなくてもいいかな?」

安心させることを言った後に、「まぁ、絶対とは言えないけどね」と不吉な言葉を残した。

と、黙っていたキングが俺に薬瓶を投げた。

これは――英雄の霊薬か?

「そこの男に使ってやるといい。そいつも終末の獣の被害者だ」

「……ありがとうございます」

俺はキングに礼を言った。

そして、

「解放: 空間転移(テレポーテーション) 」

とキングが言うと、彼の姿が消えた。

「じゃあ、僕もお暇させてもらうよ。ダンポンが管理人として戻ってきたら厄介だからね。これから総理と会談予定なんだ」

ダンプルもそう言って姿を消した。

凄い男だった。

今の俺だと、たとえ琴瑟相和を使っても傷一つ付けることができないだろう。

と、俺は振り返って姫を見る。

姫は泣いていた。

「姫っ!」

俺は彼女に駆け寄った。

必要ない、足手まといだって面と向かって言われたことがショックだったのか。

「よかった……黒のダンジョンの攻略に私たちを指名したのがダディじゃなくて。私たちを殺そうとしたんじゃなくて……本当によかったよぉ」

普段は強気に振舞っている姫の目から、まるで決壊したダムのように涙が溢れ出る。

俺は姫をそっと抱く。

姫は俺の胸の中で涙が尽きるまで泣き続けた。