軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

襲われたダンポン

ビルの一階に移動し、そこから階段で地下に移動する。

ここは整備点検用のフロア兼倉庫フロアになっていて、そのうちの一室を天下無双が借りて、ダンジョン内で獲れたアイテムの一部の保管を行っている。

そこに入った俺たちは、早速PDを設置した。

ここなら、梅田ダンジョンまで直線距離で500メートル以内のはずだから、内部で梅田ダンジョンと繋げることができる。

さっそく転移魔法陣で21階層に――

「四人とも、ちょっと待つのです!」

と思ったらダンポンが声を掛けてきた。

焦る気持ちはあるが、ダンポンの声も鬼気迫るものがあった。

緊急事態なのだろう。

「仲間がこっちに向かってるので、待って欲しいのです」

「仲間って、梅田ダンジョンの管理をしているダンポンが?」

そういえば、PDのダンポンと梅田ダンジョンのダンポンは何度か会ってるんだよな。

「梅田ダンジョンの管理人なら何か知ってるかもしれないわね」

「PDの中なら時間の流れも1/100ですし、待った方がいいと思います」

「うん……そうだね。それに着替える必要もあるし」

俺たちは奥の寝室に行き、戦闘用の服に着替える。

その後、ミルクは持っていた鞄を広げて、銃やバズーカ、炸裂弾の確認を始めた。

相変わらずの重武装だ。

俺も剣を確認する。

水野さんに研ぎ直してもらったので問題ないな。

腰に差していつでも抜けるようにしておく。

だが、梅田ダンジョンのダンポンが来ない。

「ダンポン、ちょっと遅くないか?」

「んー、もうすぐ……来たのです!」

とダンポンが言うと、天井から別のダンポンが降ってきた。

一体どこから現れたんだ、どこから――って……え?

落ちてきたダンポンがボロボロだった。

頭の一部が焦げている。

「大丈夫かっ!?」

「ミルク、ポーションを使うのです!」

「う、うん! 解放: 超回復薬の雨(ハイポーションレイン) 」

ハイポーションの雨が降り注ぐと、梅田ダンジョンのダンポンの傷を癒す。

「ん……んん」

「大丈夫なのです?」

梅田ダンジョンのダンポン――長いのとPDのダンポンと差別化するために心の中で梅ポンと呼ぶことにする――が目を覚ました。

「何があったのです?」

ダンポンが尋ねた。

「何かに襲われたのです」

「魔物か?」

「ダンジョンの魔物は僕たちが管理しているので僕たちを襲うことはないのですよ」

「ダンプルの作った魔物とか?」

「ダンプルの作った魔物も同じなのです」

そういや、クロが生まれ変わる前のダークネスウルフも、俺のことは襲ってきてもダンポンのことは一切襲おうとはしなかったな。

だが、何に襲われたのかはわからないらしい。

梅ポンは襲われたとき咄嗟に、リソースの大半を使って自分の分体を作り、それを囮に逃げ出したそうだが、リソースを使い過ぎたせいで怪我を治せなくて困っていたところ、PDの接続を感じ、ダンポンに助けを求めたらしい。

「Dコインがあったら分けて欲しいのです。リソースがないと死にそうなのですよ」

「わかった」

換金せずにそのままにしていたDコインを全部取り出して、梅ポンに渡した。

するとDコインが宙に浮かんで消える。

「ふぅ、少し落ち着いたのです。この借りはいつか返すのです」

「いや、今すぐ返してほしい」

「といっても、返す物は何も持ってきていないのです……はっ!? 払うものがないなら身体で? もしかして、望むのは僕のこのモチモチボディーっ!?」

梅ポンが身をよじって後ずさる。

確かにダンポンを枕にしたら気持ちよさそうと思ったことはあるが、そんなもの望んでいない。

「俺が欲しいのは情報だ。トゥーナが梅田ダンジョンの23階層で西条虎って探索者に襲われた可能性がある。お前は梅田ダンジョンの管理人なんだろ? 何か情報がないか?」

「トゥーナって、エルフの生き残りなのですよね? それで、西条虎って誰なのです?」

梅ポンが尋ねる。

有名人らしいが知らないのか? って、そういや俺も知らなかった。

「日本国内ランキング12位の探索者で、ホワイトドラゴンを手懐けている銀髪の探索者よ」

「普段は手袋に偽装してるからわかりにくいけど」

姫の言葉に俺が続ける。

「手袋に偽装しているホワイトドラゴン? そんな魔物知ってるのです?」

「んー、知らないのです。形を変えるドラゴンなんて知らないのですよ。ホワイトドラゴンもこの世界にはまだ作っていないはずなのです」

ダンポンと梅ポンが言う。

「でも、事務所で見たのは確かに手袋のフリをしていたドラゴンだったぞ?」

「んー、でも知らないのは知らないのですよ……ドラゴンは種類が少ないから全部把握しているのですが……」

「ダンプルが作った魔物じゃないのです? あっちなら僕たちが知らない魔物がいても不思議じゃないのです」

「いや、10年前から一緒にいるらしい」

ダンプルがこの世界に干渉を始めたのは四月のことだ。

黒のダンジョンが現れたのも富士山の山頂に現れた時期が初めて。

ダンプルのダンジョンの魔物をテイムできるとは思えない。

「どういうこと? D缶の卵から生まれたってのも嘘なら、そもそもホワイトドラゴンもいないって言うの?」

「あの、西条さんが個人で孵化器を持っていてD缶から出た卵を孵化させたって可能性はない?」

「D缶の中の魔物の卵は基本、弱い魔物しかいないのですよ。スライムとかキラーラビットとかビーンズドッグとかピヨコとか」

「福岡銘菓が出てくるのか?」

「ドラゴンは生まれないのです」

俺は姫を見た。

彼女はこの国の魔物の孵化の情報を持っているからだ。

姫は頷いた。

やっぱりドラゴンは卵から生まれない。

「じゃあ、ドラゴンに化ける魔物とかは?」

「メ〇モンみたいな魔物のことですか? その可能性は確かにあるのです。スライムの中に擬態を得意とする魔物はいるのですよ」

梅ポンがわかりやすく言う。そういや、こいつもポ〇モンが好きだったな。前にダンポンと交換していたし。

可能性の一つとして考えておこう。

ただ、別の可能性も考える。

梅ポンを襲った謎の敵の正体がホワイトという可能性だ。

ダンポンや梅ポンも知らない魔物。

もしかしたら、トゥーナを攫った理由もそれと関係しているんじゃないか?

そんな風に考える。

俺は梅ポンから23階とその上下数階層の地図と、隠れられそうな場所、出てくる魔物の情報を教えてもらった。

西条はあまり深い階層には潜っていないと思う。

彼が21階層の転移用魔法陣を封鎖した現在、もっとも近い転移陣は31階層の転移用魔法陣だ。それを警戒するのなら、あまり深くは潜らずに23階層付近に潜伏している可能性が高い。

絶対に追いつける。

俺はそう確信し、PDの21階層行きの転移用魔法陣へと向かった。