軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

祭壇へ

てんしばダンジョン22階層に再びやってきた。

現在、政府が雇ったと思しき探索者たちが、シェルターの検査をしている。

次元を超え、長い年月を越えて流れ着いたシェルターだ。

その仕組みには興味もあるだろうけれど、当然、削ったり砕いたりは物理的に不可能なため、この場所で調べる必要がある。

といっても電気を使う装置は一切使えないので、虫眼鏡で調べたり、ダンジョン内に持ち込める薬品を垂らして反応を確かめたり原始的な調査になっているようだが。

てんしばダンジョンは現在も立ち入り禁止状態が続いている。

俺たちは例外的に入場を許可されている。ただし、配信は禁止されているので、今日は配信無しだ。

明日にはその立ち入り禁止制限も解除されるそうなので、最後の調査って感じか。

邪魔をしたら申し訳ないので、横を通り過ぎようと思ったところ、

「もしかして、チーム救世主の皆様ですか?」

一番年長の、五十歳くらいの職員がこちらを見て尋ねた。

「はい、そうです」

姫が言った。

「やっぱり! お会いできて光栄です! あ、私は 月見里(やまなし) 研究所の職員でここの検査責任者の岩倉と申します。ダンジョン内では名刺を持ってきていないので口頭のみの挨拶とさせていただきます」

と岩倉さんが頭を下げる。

「ええ、存じています。国内で唯一EPO法人認定されているダンジョン専門調査機関ですよね? ダンジョンがこの世界に現れてから第一線で調査をし、数々の成果を上げていると伺っています」

と姫が営業スマイルを浮かべてそう言っているがミルクとアヤメは少し気まずそうだ。

俺も少し嫌な感じだな。

というのも、岩倉さんは姫と同じで営業スマイルを浮かべているしほとんどの研究員も好意的に見ているのだが、そのうちの一人、一番若そうな――といっても三十歳くらいの研究員さんがこちらを睨みつけていたからだ。

岩倉さんもそれに気づいたらしい。

「 園部(そのべ) くんっ! その顔を止めなさい」

岩倉さんが彼の名前を呼んで注意をする。

「あの、私たち、何か失礼なことをしましたでしょうか?」

アヤメが恐る恐る尋ねた。すると、園部と呼ばれた彼は申し訳なさそうな顔をする。

「すみません、ただの嫉妬です」

「嫉妬……ですか?」

「詳しく話してもらえませんか?」

とミルクが言うと、園部さんは「つまらない話です」と前置きを入れて言った。

「私たちは、そちらのアルファさん――でいいんですよね? アルファさんが仰ったように十年間ダンジョンに潜って、研究、調査、魔物退治の全てを行ってきました。十年間毎日です。中にはダンジョンで得たお金を元にFIRE――早期退社した先輩もいましたが、このメンバーは結成時から変わってません。いつかはダンジョンの謎の全てを解き明かすんだって思ってレベルを上げてきました。意欲だけは他の探索者に負けないと思っていました。でも、意欲はあっても才能がなかったんです」

と彼は言った。

レベル120を超えたあたりからステータスが全く増えなくなった。それは彼だけでなく、他の研究員も同じだった。

24階層でかなり苦戦を強いられるようになったらしい。

そして、園部さんは袖を捲る。

大きな古傷があった。

「私はこの程度で済みましたが、先輩の一人が亡くなりました」

その話をすると、他の研究員の表情も曇った。

よほど辛い経験だったのだろう。

21階層より下には安全マージンは存在しない。

事前の情報がないまま無茶をすれば命の危険があるだろう。

「私たちには皆さんのような才能がなかった。だから、嫉妬したんです。18歳で、一年にも満たない時間で私たちより遥かに強くなってしまった皆さんに」

「そういうことでしたか。ならばいいです」

「うん、それなら仕方ないよね」

なんか、姫とミルクが頷いた。

何故か二人とも嬉しそうだ。

「なんで喜んでるんだ?」

「「だって」」

と二人は声を揃えて言った。

「私のパパも嫉妬されてたから」

「私のダディも嫉妬されてたから」

あぁ、そういうことね。

二人ともファザコンだもんなぁ。

俺も牛蔵さんと同じ立場になったって聞いたら少し嬉しい。

「園部さん、ありがとうございます。俺たち、もっともっと嫉妬されるように頑張りますね」

「はぁ……」

「でも、嫉妬ついでに応援してくれたらうれしいです」

と言うと、園部さんは――

「ええ。皆さんの配信、実は何度も見ているんです。それで、皆さんがアバター以上に可愛くて少し驚きました」

園部さんがそう言うと、他の研究員も「そうだよな。むしろアバターよりカワイイんじゃないか?」「ああ。アルファちゃんって本当にあんなにちっこいんだな」「俺、ますますファンになったよ」って口々に女性陣を褒め千切る。

彼女たちもまんざらではない様子だが――

「みんな、そろそろ行くぞ」

女性陣を褒められるのは嬉しい反面、褒められすぎるのはなんかイヤな俺は、皆を促して先に進んだ。

22階層の奥に進む。

ベルトコンベアでブロンズリザードマンが運ばれてくる。

基本的にブロンズゴブリンと変わりないが跳躍力が優れているので頭上に注意をしないといけないな。

しかし――

「弱いな」

「私たちが強くなったんでしょ」

ブロンズリザードマンの動きがいつも以上に遅く見えるし、簡単に切り伏せられる。

レベル10上がった結果だろう。

「お宝ダンジョンの成果が如実に出ているな」

最後は、ブロンズゴブリンの時と同じでブロンズリザードマンの大量発生だった。

俺はインベントリからミルク用の武器を取り出して彼女に渡す。

そして、影獣化し、影をその身に纏う。

姫も五人に分身した。

「私から行くよ! 解放: 火薬精製(クリエイトガンパウダー) 、解放: 火薬精製(クリエイトガンパウダー) 、解放: 点火(イグニション) 」

ミルクが持っていた大きな筒から炸裂弾が放たれた。

ブロンズリザードマン群の中心に着弾と同時に破裂する。

鉄砲と違って炸裂弾は水野さんが鍛冶スキルで作っているため使用回数に制限はあるが、その威力は中々だ。

そして――

「 雷竜巻(サンダートルネード) 」

アヤメの雷の竜巻がさらに残ったブロンズリザードマンを消し飛ばす。

「行くぞ、姫」

「うん、泰良、遅れないでよ」

俺たちは突撃した。

ブロンズゴブリンの時は途中で動きが止まってしまったが、今回は一気にブロンズマザーリザードマンのいる場所にまで突撃し、

「 地獄の業火(ヘルファイア) 」

黒く染まった炎が一瞬にして巨大金属リザードマンを撃破した。

リベンジ達成の完全勝利だな。

インベントリに入りきらなかった魔銅を回収し、少し休憩した後、23階層を目指す。

23階層に降りた途端、神聖な気配が周囲に漂っているのを感じた。

これも気配探知スキルのお陰だろうか?

逆に魔物の気配はない。

そこは大きな円卓があるだけのシンプルな部屋だった。

「ここが祭壇なのか」

俺はそう呟き、お宝ダンジョンの管理人をしていたダンポンが眠っている卵を二つ、インベントリから取り出した。