軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

二人の娘

クエスト発行というスキルについて詳しく聞いてみた。

クエストを発行すると相手に三枚の依頼書が現れる。

そのうちの一枚を選択して受注することができる。

必ず三枚のうち一枚を選択しなくてはいけない。

依頼の期限は約一週間。それまでに依頼を達成できないと自動的に失敗扱いとなる。

依頼を達成、もしくは期限切れで失敗しないと新しい依頼を受けることはできない。

依頼を達成すると、報酬として経験値もしくは技能とポイントを取得することができる。

ポイントが上がると冒険者としてのランクが上がり、より高難度のクエストを受けることができる。

冒険者っていうのは、エルフたちにとっての探索者みたいな感じだろうか?

「技能ってのは何? スキルとは違うの?」

「……技能は特別な力はない。剣術技能を得れば剣の才能が、弓術技能を得れば弓の才能が得られる。冒険者ランクが上がれば装着できる技能の数が増える。技能はダンジョンの中でも外でも効果は発揮するけれど、ダンジョンの外でしか着脱できない。同じ技能を得ることで技能はさらに磨きがかかる。ちなみにトゥーナの冒険者ランクはSランク。技能は5つ装着できる」

「Sランク?」

「……ランクはGから始まって、F、E、D、C、B、A、Sと上がっていく。現在はSSランクまで確認できている。もしかしたらさらに上のランクがあるかもしれない」

Aの上がSとかSSって、本当にゲームみたいだな。

もしかしたら、SSの上にSSSがあるのかもしれない。

「へぇ……でも、私の依頼書、全部経験値しか手に入らないみたいだけど?」

「私の依頼書も経験値だけみたい」

「私もです」

姫たちが自分の依頼書を見て言う。

「低ランクのクエストではまず技能は手に入らない。Gランクで技能を得られた人間は過去に両手の指で数える程しかいない。だから、まずはランクを上げる必要がある」

「俺の依頼書は達成すると料理の技能が貰えるみたいなんだが」

と言うと、ミルクたちは呆れた様子でこちらを見た。

ただ一人、トゥーナだけが「……さすが泰良様。我らの真の救世主」と無表情のまま合掌して感動していた。

俺がエルフの賄い飯の依頼を受けると決めると、他の二枚の依頼書は灰となって消えた。

※ ※ ※

結局、本来今日行われるはずの現場検証は行われることはなかった。

あの白い箱がトゥーナの仲間によって作られたシェルターであることが判明したためだ。

そして、その日の夜、トゥーナは初めてメディアの前に姿を現した。

彼女は全てを語った。

自分の世界のことを。

終末の獣のことを。

クエストを発行する力があることを。

特にこのクエストと技能については世界の探索者は大きく盛り上がった。

しかも、依頼の発行はリモートでも可能らしいし、同時に複数人に発行することも可能。

そのため、ダンジョン局のサーバーを使ってクエスト発行の仕事をすることにした。

一回1000円(税別)でクエスト発行してもらえる。

サービス開始は来月になると伝えていたにもかかわらず、ダンジョン局のサーバーがパンクして落ちた。

尚、俺がエルフの世界を救う救世主だってことは誰にも話していない。

正直、そんなことが本当に可能なのだと思えない。

一応、ダンポンにも聞いてみたのだが、そんな方法はわからないと言われた。

『壱野、ニュース見てただろ? エルフのニュース。すげーよな、マジでエルフっ子だぞ。見た目は小学生だけど、あれで80歳越えてるんだってさ――エルフの寿命は1000年を超えるらしいから人間でいうところの8歳にも満たないらしいけど』

電話越しに青木が言う。

『それでさ、クエストの発行サービスだけど、試験的に行われるらしいんだ。お前も応募してみろよ。二人でSSランクの冒険者を目指そうぜ!』

「俺はいいよ」

『確かに当選確率は天文学的な数字になるけど、お前ってこういうときのくじ運よかっただろ? もしかしたら当たるかもしれないじゃないか』

青木はそう言うけれど俺たちは特別にいつでも無料でクエストを発行してもらえるので、そのテスターに応募する必要はない。

「泰良! こっちに来なさい」

母さんが俺を呼ぶ声が聞こえてきた。

「悪い、青木。また後でな」

通話を終了し、一階に降りる。

「遅いわよ。泰良も食事の準備くらい手伝いなさい」

いつもはそんなことを言わない母さんが、その日に限って俺に注意をする。

その理由は一つ。

目の前に、配膳を手伝っている少女がいるからだ。

「もう、少しはトゥーナちゃんを見習ったらどうなの?」

浴衣姿のトゥーナが俺の家にやってきていた。

彼女が上松大臣と交渉し、俺と一緒にいたいと言ったらしい。

上松大臣はなんとかして断りたかった。

警備の面でも情報統制の面でも、俺の家に彼女を住まわせるのには問題があった。

だが、俺の知らないところでどういう交渉が行われたのか、結局上松大臣が頭を下げて俺の家に一日だけ預かるようにと打診があった。そして、ミルクたちも俺とトゥーナが別の部屋で寝る事を条件に受け入れた。

問題だった母さんと父さんも、説明をすると大歓迎という空気で了承してくれた。

きっと、現在も家の周りには政府のSPが待機していることだろう。

まぁ、万が一のことがあれば庭にいるクロが黙っていないだろうが。

「今日の晩御飯はいなり寿司か……へぇ、珍しい」

お皿には大量のいなり寿司が盛られていた。

「リクエストなのよ。久しぶりだけど上手にできたわ」

母さんがドヤ顔で言う。

リクエスト?

エルフの世界にもいなり寿司があるのだろうか?

そう思っていたら、母さんが思わぬことを言う。

「それにしても、一気に娘が 二人(・・) もできたみたいで本当に嬉しいわ。うちは二人とも男の子だったから」

母さん、今なんて言った?

二人?

トゥーナともう一人は一体誰だ?

そう思っていたら、風呂場の方から気配がした。

その気配はゆっくりまっすぐリビングに近付いてくる。

「ふぅ、いい湯じゃった。母君よ、感謝するのじゃ」

そう言って頭から湯気と狐耳を出して現れたのは、京都ダンジョンの管理をしているはずのお稲荷様――ミコトだった。