軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

エルフの少女

少女はまだ生きていた。

寝ているだけのようだ。

どうしたものかと思っていると、

〔サポーター:配信を終了してください〕

と明石さんから連絡が。

姫は頷き、

「ええと、皆さん。これから彼女を連れて地上に戻ります。彼女がエルフか人間なのかはわかりませんが、彼女のプライバシー保護のため、一度配信を終了させていただきます」

姫がそう言って頭を下げた。

リスナーたちは渋る声を上げたが、姫は謝罪し、配信を終了。

現在は明石さんとだけ繋がっている状態になった。

「明石、どうしたの?」

〔サポーター:上松大臣より連絡がありました。1時間後。彼女を連れて地上に戻ってください。政府の方で保護するそうです〕

「まぁ、そうなるわね」

姫が頷いた。

俺も拒否はしない。

よくアニメとかなら、「彼女の安全を保障するまで預けることはできない!」とかなんとか言って政府への引き渡しを拒否して奮闘することになりそうだがな。

「でも、なんで1時間後?」

〔サポーター:てんしばダンジョンを封鎖する時間が必要なのと、防疫検査をするためです。彼女と接触した皆様にも検査を受けていただきます〕

逆に60分あれば準備できるってことか。

スゲーな。

「どうやって運ぼうか……二本の剣にTシャツを通して即席の担架でも作るか?」

「んー、意識はないけど顔色は悪くなさそうだし、普通に背負っていいんじゃない?」

「じゃあ、俺が背負うよ」

「変なこと考えてない?」

「考えてない考えてない」

さすがにそこまで無節操じゃない。

膝を曲げて屈み、ミルクとアヤメが両脇からエルフ少女を持ち上げて腕を俺の前に回す。

俺は彼女の太ももの裏に手を回して持ち上げた。

しかし、姫といいこの子といい、こうしておんぶしていると保育士さんになったような気持ちになるな。

※ ※ ※

21階層の魔法陣の前で待つ。

1時間を待たずに、明石さんから連絡が来て、地上に戻ってもいいと通達が来た。

受付の人も誰もいない。

無人のダンジョンを地上に上がると、防護服を着た人たちが待ち構えていた。

エルフの少女を預ける。

男女別れてテントに入った。

用意されていた服に着替えて、唾液、血液、尿を採取される。

健康診断みたいだ。

結果が出るまで待合室に用意されていた菓子を食べてジュースを飲む。

結構サービスがいい。

一時間後、検査の結果問題ないということで普段着に着替える。闇火鼠の革衣とリュックなどの荷物は綺麗にクリーニングされて戻ってきた。

何もしていないのに疲れた。

これなら魔物と戦う方がマシだ。

一通り事情を説明し、後日再度事情を説明するということで解放された。

妖精の輪について聞かれるかと思ったが、それもなかった。

封鎖されている公園の正面はマスコミが待ち構えているからと、裏口からこっそり外に出ることになった。

これだけ封鎖されていたら、そりゃマスコミだってエルフ少女が見つかったのがてんしばダンジョンだって気付くだろうな。

返してもらったスマホを見ると、不在着信が何件かあった。

一番新しいのは兄貴からだった。

メッセージも入っていたので、短く返事する。

母さんには遅くなるとだけメッセージを送った。元から晩御飯は要らないって伝えてたから大丈夫だろう。

女性陣も出てきた。

「お疲れ……飯でも食べに行くか?」

さっきお菓子を食べたが、それでも空腹は続いている。

地獄の業火(ヘルファイア) で限界まで魔力を使いきったからな。

魔力の回復には栄養が必要なのだ。

「ハルカスの14階に、リーズナブルなイタリアンのお店があるんだけど行かない?」

「私も行きたい。オムライスが美味しいお店だよね!」

ミルクの案にアヤメが乗る。

俺はなんでもいいし、ちょうどハルカスにも用事があった。

姫もそこでいいらしく、四人でその店に。

少し並んで食べた。

腹が減っていたので、四人でパスタ、オムライス、ピザをそれぞれ大盛りにして注文してシェアすることにしたんだが、それが本当に大きすぎて食べるのに苦労した。

その間、俺たちはエルフの少女のことは全然話をしようとは思わなかった。

周囲の目を気にしてという理由もあるが、話をしたところで俺たちにはどうしようもないことだと考えていたからだろう。

ただ、あいつなら何か知っているかもしれないと、俺は食事が終わってから、ハルカスの地下食品売り場に向かった。

※ ※ ※

「これは、俺が一番美味しいと思う料理だ」

庭に設置したPDに入り、俺はダンポンにその赤い紙の箱を渡す。

「この箱なのです?」

「ああ。大阪の人間はこれがあれば笑い、これが無ければ落ち込んでしまう。大阪人にとってソウルフードなんだ」

「そこまでなのですかっ!?」

ダンポンが驚いている。

そして、その赤い紙の箱からそれを一個取り出した。

「僕にそっくりなのです」

確かに、その料理はダンポンに似ていた。

双子だと言われたら、なるほど――頭の形が少し違うだけで納得するくらいは似ている。

頭だけ違う双子……サ〇エさんの波〇さんと海〇さんだろうか?

豚まんだ。

三桁の数字が最初に入ってくる豚まんだ。

賛否別れると思うが、俺はこの豚まんこそが世界一の食べ物だと思っている。

「食べるときはからしを塗って、底の薄い松の木を剥がして食べるんだぞ」

「わかったのです」

ダンポンは念動力を使い、からしを千切った。

この時、指先にからしが付かないのは念動力の最高の利点だ。

この時、俺は生まれて初めてダンポンの念動力を羨ましいと思った。

からしをまんべんなく豚まんにつけたあと、ダンポンは底についている薄い松の木を剥がす。

念動力の力の調整が難しいのか、皮の一部がごっそり持っていかれ、中の肉が丸見えになった。

やっぱり念動力いらないや。

だが、ダンポンは気にする様子もなく、豚まんにかぶりついた。

「美味しいのです! とっても美味しいのですよ! 食べた瞬間、肉汁が口の中に広がるのです! このほのかに甘い白いのも美味しいのですよ!」

「喜んでもらえてうれしいよ」

「もう一個――」

とダンポンが2個目の豚まんに手を伸ばす――念動力を伸ばそうとしたが、俺は咄嗟に箱を奪った。

「おっと、約束は果たしただろ? ちゃんと世界一うまいものを食べさせたぞ」

「タイラは意地悪なのです! 一個では我慢できないのです!」

「だったら、俺の質問に答えてくれ」

俺は肉まんを人質に取ってダンポンに尋ねる。

「てんしばダンジョンでエルフの少女を保護した――彼女は何者なんだ?」