軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

確かな愛

ロランはジゼルの頬からそっと指を離し自らのローブを脱ぎ捨てた。

結っていた髪を徐に解き、ゆっくりと両手でかき上げる。

熱を帯びた沈黙の時間。

それをじっくりと堪能するように笑みを浮かべ、ロランはジゼルを見下ろした。

強く煌々と燃える絶対的強者の眼差しは語る。

『もう逃さない、この手から逃げることは許さない』

ジゼルは仰向けのまま微動だにせずロランを見つめている。ロランの強い眼差しを受け止め、緊張と、喜びを孕んだ視線をロランに向ける。

ローブは役目を終えたように床の上に落ち、ロランはジゼルを見つめたまま胸元のボタンを外した。

目の前のジゼルだけがロランの生きる意味。

ジゼルもロランから目を逸さない。ロランの全てを受け入れるような眼差しを向けながらも、この甘美な緊迫感に息を飲み込んだ。

ロランはブラウスを脱ぎ去り覆い被さるようにジゼルを真上から覗き込む。

前髪の隙間から額の傷が見えた。

抜糸が済んだその傷にそっと触れる。ジゼルはその優しい触りに一瞬体を硬くしたが、すぐに力を抜いた。

ジゼルはもうわかっている。ロランがジゼルを求めていることを。

そしてジゼル自身もロランを受け入れようとしている。

そこにあるのはお互いを求める純粋な気持ちだけだ。

抜糸が済んだ傷跡を見て大切な人を傷つけられた痛みと同時に愛しさが爆発する。この傷すら愛おしい。ロランは優しくも、意図してジゼルに触れる。

ジゼルもそれをわかっているように笑みを溢す。触れるか触れないかの境界線。鳥の羽でジゼルの肌をなぞるように指先でそっと触れた。

ジゼルは目を細めロランに応える。真っ直ぐにロランを見つめるその瞳はロランへの思いが溢れている。ロランもジゼルの思いを受け止め、そして真っ直ぐに返す。

今までの時間を取り戻すかのようにロランはジゼルに触れる。ジゼルは身を捩りロランに笑いかける。恋人同士のような甘い時間。こんな時間をジゼルと過ごしたいと心の中でずっと願っていた。

ロランの髪がジゼルの肌に触れ、ジゼルは顔を綻ばせ愛おしそうに髪を見つめた。

ジゼルの愛するロランの髪は戦闘で毛先が焦げつき艶がなくなった。戦争を連想させるこんな髪を見せたくないとロランは一旦顔をあげ顔周りに落ちてくる髪を後ろに撫で付けまたジゼルを覗き込んだ。

撫で付けた髪がまた顔周りに落ちる。だがジゼルは気にする様子もなく口元を緩ませ見続けている。

ジゼルの顔の上に落ちる金色の長い髪は荒々しい息遣いに合わせ揺れ動き、ロランの昂りをそのまま表していた。

もう何も隠す必要はない。

ジゼルを求めている。

我慢できないほど、愛する人を求めているのだ。

ロランは額の傷から耳へと指を滑らせた。ジゼルの体が反応し、与えられる感覚を我慢するように唇を結ぶ。

そんなジゼルの反応を見てロランは口角を上げる。我慢できないほどの喜びを与えたいと、触れる指先に強弱をつけジゼルの肌に触れた。指先は首筋、耳たぶ、顎のライン、そして唇に移動する。

ロランの指は余すことなく味わうようにジゼルに触れ、その足跡を辿るように肌が熱を帯び桜色に変わってゆく。痺れるような感覚に身を捩るその姿が艶めかしく、ロランの欲求を昂めた。

紳士的なロランはもういない。

ジゼルを強く求め、荒々しいまでの昂りをそのままジゼルにぶつけたい!

ジゼルは仰向けになったまま両手でシーツを握る。うっすらと汗ばんだその肌はロランの野生的な感情に火をつけた。

ロランの変化を感じたジゼルはその視線から逃げるように顔を背ける。だがそんな抵抗は許さない。肌をなぞる指先がジゼルの頬を包み背けた顔を正面に戻す。

『私から目を逸らすことは許さない』と、ロランの瞳は語り、再びジゼルを覗き込む。

鼻先が触れ合うほどの距離。このままキスができるほどの距離。

お互いの呼吸が感じられるその距離をさらに詰めようとロランは瞼を閉じようとした。

(ダメだ! 今この唇はジゼルへの愛を語れない!!)

ロランはギリギリのところで踏みとどまる。誓約魔法をかけられたこの口は自分の一部ではない。そんな感覚のまま愛する人と初めてのキスをしたくない。ロランはジゼルの額に自分の額をつけ瞼を閉じた。

静かな部屋に二人の息遣いだけが聞こえる。

溢れそうになる思いを押し込め、額にお互いのぬくもりと思いを感じながら呼吸を繰り返す。バラバラだったお互いの呼吸が重なった時、ロランは顔をあげジゼルを見つめた。

ジゼルは涙を浮かべロランを見つめている。

溢れる愛情が込められたジゼルの涙。その涙が堰き止めていたロランの強い感情を解放した。ロランは高ぶる感情のまま強引にジゼルを抱きしめた。

突然強く抱き寄せられたジゼルは、持ち上げられた上半身に力を入れ緊張に体を硬くさせた。が、ロランはさらに強くジゼルを抱きしめる。ジゼルは観念したように力を抜きロランに身を任せた。

力強い抱擁が合図となり、ロランはジゼルの首筋に唇を当てながらゆっくりとジゼルをベットに倒し片手でジゼルの寝巻きのリボンを解く。

ジャスミンの甘い香りが鼻を掠めた。

香りの形跡を辿るようにジゼルの首筋から肩、鎖骨へと唇を這わせる。

「っ……」

我慢していたジゼルの声が漏れる。甘くとろけるようなその声にロランは唇で応える。

一回目の契りはジゼルにとって初めての経験。できるだけスマートに優しく、導くように行なった契り。二回目の契りは心を閉ざした冷たい契り。

三度目の契りは思いを込めた愛の契り。恋人同士のような甘い時間を過ごしたい。本当の夫婦のように愛を交わし、思いを交わし、心と体の充実を感じたい。

ロランの愛撫は止まらない。ジゼルを味わい尽くすようにゆっくりと体の隅々まで唇を移動する。

ジゼルは恥ずかしさに顔を背け、ロランが与える刺激に反応し逃げようとする。だがロランは逃さない。そしてジゼルはそれを受け入れる。

ロランはジゼルの両手に指を絡ませた。ジゼルもそれに応えるようにロランの指を握りしめる。

言葉がなくとも二人の間には愛がある。

ロランは片手を離し、ジゼルの傷に触れ、その頬を優しく包み込むように手を止めた。

ジゼルは頬を覆うロランの手に顔を傾け、瞼を閉じる。

互いの気持ちを確かめ合うようなその動作には、揺るぎない確かな愛があった。