軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

三度目の契り2

だが、今は目前の戦いに集中しなければならない時だ。

王命を受けたその日、ジュベール公爵家から使いが来た。

だが、全て門前払いし、この先一切取り次ぐなと伝えた。

一方、次期公爵の立場を捨て、一人戦うなど想像していなかった公爵夫妻は取り乱し、城の執務室まで訪ねて来た。だがロランは二人に会うことはなかった。

シャルロットとの結婚を撤回しない限り、ロランは絶対に折れない。その意思を貫いている。

「ロラン! お前本当に一人で戦うのか!?」

城の執務室で仕事をしていると勢いよくドアが開き黒魔法使いのグレアムが現れた。ノックをしない親友の登場にロランは苦笑する。いつでもグレアムはこの調子だ。

「ああ、そうだ。私はあの女と一緒になるなら死んだほうがマシだからな」

ロランは髪をかき上げグレアムにソファーを勧める。その麗しい姿にグレアムは口角を上げ、ニヤリと笑ってロランに言った。

「……お前、シャルロット様をそう呼ぶとは恐れ入るよ。でもロランらしい冷たさで安心した」

グレアムはそう言いながらドカッとソファーに腰掛ける。

「で、なんの用だ?」

ロランも向かいに腰を掛けグレアムに聞く。

「……ロラン、一体どう言うつもりだ? なぜ魔法使いたちの申し出を断った? 俺たちは陛下など恐れない。ロランと共に戦いたい」

グレアムは身を乗り出し決然とロランに言った。グレアムの言葉には重みがある。王に反逆を疑われても仕方ない発言だからだ。その言葉は友情の証でもある。

「……ありがとう。だが、お前たちは良いとしても、一族はどうなる? 陛下の意向を無視し私に手を貸したとなれば、一族にも迷惑がかかる。私はお前たちのその気持ちだけで十分だ」

グレアムの言葉は温かく、すり減った心を埋めてくれるほどの力がある。

愛とは違う友情。天秤にかけることはできない唯一のもの。

ロランは心配そうな眼差しを向けるグレアムに「フッ」と笑い、頷いた。そうしなければ崩れてしまいそうになる。

一方、親友のピンチに手を差し伸べることができない状況にグレアムは両手を握り締める。

ロランはたった一人で戦うと覚悟を決めている。

大魔法使いは無敵ではない。一人で戦うということは相当な魔力を使う。それは魔力の高い魔法使いにとってどれほど危険なのかグレアムは知っている。だが、目の前のロランは怯える様子もなく、湖のように穏やかな瞳に強い覚悟の光を湛えている。これ以上何を言っても無駄だとグレアムはため息を吐いた。

「――ロランの覚悟はわかった。だが、俺も好きにやらせてもらうからな!」

グレアムは口を尖らせ部屋を出て行った。

夕方、ロランは別邸に戻った。

夕食が終わり執務室に立ち寄るとランスロットが現れた。

「ロラン様、予想より早くブルレック軍が辺境に現れました!」

その言葉に緊張が走る。

ロランはすぐに戦闘用のローブに着替えた。

ジゼルとの契りを交わす時間はない。

愛する人の温もりを感じる隙も与えない状況にため息が漏れる。

だが、一刻を争う事態に気を引き締めた。

今から戦いが始まる。

ロランはジゼルに会いに部屋に行った。

入浴を済ませたジゼルからほのかにジャスミンの香りが漂う。エミリーが気合を入れたのだとわかる。髪も丁寧に手入れされ立ち上がった時に光が髪を滑り降りる。

(このままジゼルに触れられたら……)

ロランは唇を結びジゼルを見つめた。

目の前にいるジゼルはロランの姿を見て顔色が変わる。

何かあったと気がついたようだ。

ジゼルの不安げな視線を見て、心配かけないよう、ロランはさらっとした口調を使い言った。

「今から出かける、今宵は無しだ」

ロランは何千もの言葉を胸に、短い言葉でジゼルに別れを告げた。