軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

79話 突然の依頼

姫が出かけているので、久しぶりに俺1人でダンジョンに潜った。

途中で、瀕死の黒猫を救助。

回復薬(ポーション) を使って、4層のキャンプで 回復(ヒール) を使える魔導師を探していると、サナがいた。

ソロでダンジョンに潜っていたようだ。

妹のミオもいるんだ。

あんまり無茶をしてくれるなよ。

そんな彼女に頼まれて、レベル上げを手伝うことになり、やることもないので引き受けた。

5層で戦闘を繰り返す。

そうしている間に、サナのレベルも30を超えたようだ。

無茶をしているせいか、上がりかたが早いような気がする。

――いや、最初に高レベルの俺が引っ張って、レベルをドーンと上げてしまったせいもあるだろうな。

やる気があるのは解るのだが、オッサンは少々心配である。

サナももっとレベル上げがしたいようだが、そろそろ姫も帰ってくるだろう。

夕食の準備もしなければならない。

ホテルなのでルームサービスもあるのだが、彼女たちもすっかりと飽きてしまっているようだ。

そりゃ、メニューは沢山あるといっても、一巡したら変わったものも食いたくなるだろう。

サナを自転車の後ろに乗せて、4層のキャンプに戻ることにした。

あそこに預けている猫を回収しないとな。

自転車を漕いでいると、キャンプの明かりが見えてきたので、近くまで行くと自転車を収納する。

「あ、あの! ダイスケさん、レベル上げのお礼は……」

「ゴーレムの魔石でいいよ」

全部で5つだから、全部で500万円。

一つはサナに渡すから、俺の取り分は400万円――少々もらいすぎかもしれんが、普通ならこういうことを引き受ける高レベル冒険者もあまりいない。

確実なのは、トップギルドに入ることだが、希望者が沢山いるので、それもまた難しい。

こんなことを気楽に引き受けてくれる俺の存在は、稀有と言える。

「もっと他のものでも……わ、私の身体とか……」

「え?! なんだって?!」

突然、難聴系主人公の真似をすると、サナにバシバシと叩かれた。

どうも、可哀想な子に手を出すのは躊躇われる。

なんで俺みたいなオッサンが、こんなにモテるようになってしまったんだろうなぁ。

やっぱりパラメーターにバフでもついているのか?

それなら、男からもモテないとおかしいが、異性限定のバフってやつなのか?

「む~!」

サナがふくれっ面をしている。

「俺みたいなオッサンじゃなくて、もっと、若くて格好いい高レベル冒険者とかにしなさいよ」

「私は、ダイスケさんが……」

「はぁ? なんだって?」

「もう!」

また、バシバシと肩の辺りを叩かれる。

彼女もレベルが上がっているから、それなりに痛い。

「う~ん」

困ったもんだ。

女の子に手を出すわけにもいかず、俺は黒猫の所に向かった。

「ちわ~、猫を預けたオッサンだけど」

「おっと! お客さん、肉もできてるよ!」

「それじゃ――半分もらって、あとは売却で」

「毎度あり~!」

買い取り屋から、猫の入ったバックパック、肉と金をもらう。

これで、しばらく肉には困らないぞ。

オークの肉は美味いしな。

最初は人型なんて――と、ちょっと躊躇もあったが、今は全然平気。

慣れってのは恐ろしい。

元人間が相手でも、戦闘に躊躇もないしな。

これももしかして、ダンジョンの影響なのだろうか?

ここに籠もる魔力の影響で、人間も魔物になる――みたいな都市伝説の話が以前に出たが……。

まぁ、あまり深く考えないようにしよう。

今のところ、グールにやられたり、迷宮教団のあの女絡みじゃなければ、人間が魔物になったという話も聞こえてこないし。

ちょっと嫌なことを考えつつ、バックパックを開けると、猫が丸くなって寝ていた。

ホッとしているのかもしれない。

その様子を見て、俺もちょっとホッとした。

サナが魔石を換金しようとしているのだが、地上で交換したほうが高い。

「地上で換金したほうが高いぞ。重いし、俺がアイテムBOXに入れて、外まで持っていってやるよ」

「ありがとうございます」

「そのかわりに、猫が入ったバックパックを背負ってくれ」

生き物が入っていると、アイテムBOXに収納できない。

「はい!」

オッサンと少女、猫1匹が、ダンジョンの暗闇の中を疾走する。

やはり自転車は速い。

しかも漕いでいるのは、高レベル冒険者。

あっという間にエントランスホールに到着した。

自転車を収納して、入れ替えでサナの自転車を出してあげる。

「ありがとうございます」

「すぐに魔石の買い取りに行く?」

「はい」

猫の入ったバックパックを受けると、背中に担ぐ。

2人で、そのままダンジョンを出ると、すでに空は赤みかかっていた。

少しグラデーションになり始めた空の下を、市場の買い取り屋に向かう。

街並みはいつものように、騒々しく賑やか。

向かうのは、もちろんいつものオッサンの店だ。

「ちわ~」

「おっと、兄さんかい。今日はどんな珍しいもんを持ってきてくれたんで?」

彼は愛想よく応えてくれる。

「俺じゃなくて、彼女な」

俺はアイテムBOXから魔石を出して、サナに手渡した。

「お願いします」

「おお、魔石か!? デカいな。こりゃ――ゴーレムのコアか」

「ピンポン!」

「「ははは!」」

オッサン同士で笑っていると、サナに服を引っ張られた。

「ダイスケさん、『ピンポン』ってなんですか?」

「「え?!」」

オッサン同士がハモって、真顔になった。

まさか、ピンポンが通じない時代になっているとは……。

まぁ、世界が止まっているときには、TV放送どころじゃなかったしなぁ……。

気まずい状態になってしまったので、魔石の換金を済ませた。

俺がゲットした魔石は、そのままアイテムBOXの中だ。

まぁ、金は十分にあるからな。

ダンジョンの中なら、この魔石が通貨代わりになるから助けを求めたりできるし。

そういうときのために、ホールドしておく。

換金が終わったので、市場で猫缶を買った。

「お~い、地上に戻ってきたぞ」

バックパックの中を覗くと猫が寝ていた。

具合が悪いとか、そういう感じではなさそうだが……。

人が少ないところを探すと、座れる場所があったので、猫を出す。

ダンジョンの中じゃ暗くて解らなかったが、本当に真っ黒な子だな。

「にゃー」

「元気そうだな」

頭をなでてやる。

アイテムBOXから紙皿を出して、猫缶を開けてやった。

「ハグハグ!」

結構な勢いで餌を食べ始めた。

要は腹が減っていただけか。

がっついているが、黒い毛皮がかなり汚れている。

ホコリだらけだ。

「サナ、ちょっと見といてやってくれ」

「はい」

俺は市場に戻ると、猫缶を買った店に戻った。

「すみません~猫用のブラシってある?」

エプロンをしている女性の店員に話しかける。

「はい、ありますよ」

見せてもらうと、ちょうどよさそうなので、一つゲット。

「猫缶があるってことは、猫を飼っている人もいるの?」

「はい――犬は放し飼いできませんが、猫は問題ないですからねぇ」

そういえば、野良猫もいる。

あの黒猫もそうなのだろうか?

人馴れしているし、元は飼われていたのかもしれないな。

ブラシを買うと、サナの所に戻る。

猫はすでに、食事を終えて、サナの膝の上で丸くなっていた。

「やっぱり人馴れしているな。飼い猫だったのかもしれない」

「そうですね」

猫を抱きかかえると、身体にブラシをかけてやる。

黒い毛皮に這わせると、尻尾を立てて伸びをしているから、嫌がっている感じもない。

一通りブラシをかけると、それなりに綺麗になった。

「洗ってあげたいが――猫って水やお湯を嫌がるしなぁ」

基本猫は綺麗好きなので、あとは自分でなんとかするだろう。

ブラシをかけ終わったので、地面に降ろしてやった。

「にゃー」

「達者でやれよ」

「にゃー」

「……」

「まさか、サナが飼いたいとか言わないよな?」

「え? 可愛いですが……ギルドの本拠地も借りてる部屋ですし」

「まぁ、そうだよなぁ。ウチもホテルだし無理だ。可愛いけどな」

「にゃー」

「愛想はいいし、街の皆が面倒みてくれるんじゃないか?」

「はい」

黒猫はチラリとこちらを見ると、人混みの中に消えていった。

さすがにダンジョンの中は、ヤバいって気がついてくれたと思いたい。

換金も済んだし、黒猫も元気になったので、サナともお別れだ。

「カレーを食べたくなったら、言ってくれよな。作ってあげるから」

「……ダイスケさんと、一緒に食べたい」

「姫がなぁ――ミオすら警戒しているし、ははは」

「むう」

サナは面白くなさそうであるが、現在は姫が優先なのだ。

今のホテルも、姫のお陰で住めているし。

彼女のカリスマで、トップランカーたちとも知り合いになれた。

普通にやってたんじゃ、雲の上の連中だからな。

「カレーより、大事な話がある」

「はい」

「サナのレベルだと、他のメンバーと釣り合いが取れなくなってきているかもしれないぞ」

彼女がキララたちを引っ張っていければいいが、まだ若いしなぁ。

いや、若いから駄目ってことはないのだが。

俺と一緒で、冒険者になりたてだが、すでにベテランのキララのレベルを超えてしまっている。

ここは、色々はルートを考えてみるべきだろう。

「は、はい」

「もっと、ランクの高いギルドに移籍するのも手だ」

「……」

「キララとも、話し合ってみてな」

「はい」

移籍先に、イロハの所と幽鬼を紹介しておく。

両方、トップがしっかりしているし、メンバーに女性も多い。

「そうだ」

彼女に、温泉のお湯を渡す。

「これは?」

彼女が瓶に入っているお湯を掲げて見ている。

「巷に出回ってないが、魔力を回復できるお湯だ」

「え!? 本当ですか?」

「でも、普通の 回復薬(ポーション) みたいに瞬時に回復できないぞ? 二晩かかるのが寝て起きたら、回復する――って感じだ」

「それでも、すごいですね」

「まぁ、使ってくれ」

「ありがとうございます」

彼女がペコリとお辞儀をすると、開いている胸の部分が目に入る。

ゲフンゲフン。

「それじゃな」

「あ、あの! ダイスケさん!」

「ん? なんだ?」

「遠征することがあるなら、私も加えてください!」

「ええ? 俺たちが潜るとなると、絶対に深層へのアタックになるぞ」

「解ってます」

俺を見つめる真剣な眼差し。

オッサンは、若者のそういう目に弱い。

なんとかしてやらないとな――などと、考えてしまうのだが……。

果たして、彼女をあの殺戮の舞台へ上げていいものなのだろうか?

まぁ、冒険者になって、ここまでレベルを上げてきたんだ。

相当恐ろしい場面にも遭遇したはず。

それでいて、なおも渦中に飛び込もうというのだから、彼女の決意は本物なのだろうな。

「う~ん、わかった――だが、パーティに加えるかは、姫の判断になるぞ。彼女がギルドのリーダーだからな」

「わかってます」

サナも死線を越えて、それなりの自信をつけているはず。

実力を伴えば、姫もNOとは言わないとは思うが……。

「それじゃ、そういう話があれば、連絡を入れる」

「はい」

「さっきも言ったが、キララや他のメンバーともすぐに話し合ってな」

「帰ったらすぐに話し合おうと思います」

「それがいい」

大きな胸の女の子魔導師と別れると、市場で色々と買い物をしてからホテルに戻った。

「む~!」

帰ると、姫の機嫌が悪い。

「センセの所はどうだった?」

「……10日ほど、薬を飲んだり、注射を打ったりする必要があるようだ」

それぞれの身体の周期に合わせるので、時期はみんなバラバラになるらしい。

今回は妊娠できるかの検査が主だが、卵子を保存しておけば、非常時にも選択肢が増える。

「そうか、中々大変だな」

「それより――どこに行っていたのだ?」

「久々に、ソロでダンジョンに行ってたよ」

「む~」

信用してないような顔だが、これはマジだし。

「ほら」

俺はアイテムBOXから、ゴーレムのコアを出した。

「6層のゴーレムか」

「倒し方が解っていれば、いい金稼ぎになるしな、ははは」

「ダーリンが、ゴーレムをいくら倒しても経験値にはならないじゃないか」

「まぁ、そうだけどさ。動画を撮りためておく機会でもあるしな」

「……わかった」

納得してくれたようだ。

晩飯にする。

今日は、ラーメンにするか。

姫とカオルコはどうなのか? 一応確認を取るが、問題ないらしい。

基本お嬢様なので、ラーメンなんて食わないのかと思っていたらそうでもないようだ。

そんなわけでラーメンに決まったが、スープをなん時間も煮込んだりはできない。

市販のスープに色々と足す。

野菜炒めも作り――化調も少々。

だいたい化調と脂を入れれば美味くなる。

別に、ハチマキを締めて、腕組みをするつもりはない。

簡単に食えればいいのだ。

餃子は市場で買ってきたものを並べた。

足りなかったら、おにぎりでも食べてもらう。

こいつも、市場で買ってきたが、マジでなんでも売ってるな。

「さて、召し上がれ。お嬢様たちのお口に合うか解らんけどな」

「大丈夫だ。ダーリンの料理はだいたい美味い」

だいたいか。

まぁ、俺もただのオッサンだから、一流のシェフってわけにはいかん。

「本当に美味しいと思いますよ」

「ありがとう、カオルコ」

彼女たちは、俺の作る食事をいつも美味しそうに食べているので、言うとおりなのだろう。

「姫、オークの肉も取ってきたから、しばらく肉には困らないぞ」

「そうか! それは楽しみだ」

美味しい食事をしていると、姫の機嫌も直ってきた。

こういうときには美味いものを食わせるに限る。

機嫌の直った姫を眺めていると、フロントから電話が入った。

「俺が出る」

電話を取ると、どうやら客らしい。

「どうした、ダーリン」

「イロハがやって来たらしい」

「オガか」

「飯をたかりに来たかな?」

「それならいいのですが、なにかあったのでしょうか?」

カオルコが心配そうにしている。

3人で顔を見合わせていると、ドアがノックされた。

俺が出る。

「は~い、いらっしゃい」

「……」

ドアを開けると、いつものように豪快に笑う彼女ではない。

真剣で青い顔をしている。

姫も、イロハの顔を一目見て、異常に気がついたようだ。

「オガ、どうした? なにかあったのか?」

「……」

姫の言葉に、彼女が部屋に入り込むと、絨毯に手をついた。

「助けてくれ!」

「オガ! どうしたんだ!」

突然の彼女の行動に姫も驚いたようだ。

普段のイロハから想像もできないので、無理もない。

こんなに必死になるってことは、男か――いや、男がいたら俺と勝負してないな。

あとは、身内か?

「もしかして、イロハの身内になにかあったのかい?」

「……うう……妹が……」

「妹?! 妹がいたのか?」

姫が驚く。

姫も彼女の家族構成は知らなかったようだ。

俺も知らなかったし、普段からそんな話はまったく出てこなかったしなぁ。

まぁ、こんな仕事をしているってことは、訳ありの人も多そうだし……。

「俺たちに助けを求めるってことは、ダンジョン絡みなんだろう? 妹さんは、冒険者なのかい?」

俺の質問に、彼女はちょっと迷っていたが、口を開いた。

「……モグラなんだ」

「へ~、そうなのか」

モグラってのは、ダンジョンに穴を開けて新しい階層を探している連中だ。

一番最初に新しい階層を発見できれば、宝やアイテムなどをゲットできる確率が上がる。

まぁ、とんでもない所につながることがあるのが、このダンジョンだが。

カオルコの魔法で大穴を開けたときにも、穴はどこかにつながっていた。

あの先がどうなっているのか? なんて、誰にも解らない。

俺なら、そんな穴に入るなんて絶対に無理。

それを平気でやるのが、「モグラ」という連中だ。

イロハの妹なら冒険者かと思ったが、モグラとは。

「それじゃ、穴を開けた先で遭難したのか?」

「……どうも、そうらしい……」

彼女もよく解らないみたいだな。

ダンジョンに穴を開けにいった部隊が、戻らない――遭難した。

――ということしか解ってないのかもしれない。

「どこがどうなっているのか解らんダンジョンに突っ込むとなると――トップランカーに頼るしかないだろう」

「頼む! このとおりだ!」

イロハが、再び絨毯に手をついた。

口には出さないが、俺は気がすすまない。

だって、ビビリなオッサンだし。

「姫、どうする? リーダーである姫の決定に従うが……」

「無論、助ける!」

即決か――まったく男前だなぁ。

「わかった。姫に従うよ」

「は~」

カオルコが、軽いため息をついた。

姫がどこかに行くとなると、問答無用で行動が一緒になるからな。

こんな感じで引っ張り回されたんだろう。

「あ、そうだ……」

口に出してしまってから、ちょっと迷う。

この捜索に、サナを連れて行くか、否か。

彼女の真剣な眼差しを見てしまうとなぁ。

女の子を死地にぶち込むことに、もちろん抵抗はあるのだが、ここで彼女のやることに真剣に向き合わないと、本当に嫌われてしまうかもしれない。

「イロハ、君の所からのメンバーは?」

「あたいのサポートで、コエダを連れていく」

「わかった」

こういう危険な作戦への投入を即決できるということは、相当信頼しているのだろう。

もしかして、次期のリーダーなどを任せることも想定に入れている人材なのかもな。

「姫、連れて行きたい冒険者がいるんだが……」

「ダーリンが?」

「ああ」

「ダーリンがそう言うなら、能力があるのだろう――承知した」

姫はそう言ってくれたが、サナを見たらなんて言うだろうなぁ……。

心配ではあるが、彼女もかなり実力をつけた。

いや、この短期間での上昇は、驚くぐらいだ。

俺のように、最初にインチキで高レベルになったわけでもない。

姫の許しが出たので、俺はサナにメッセージを入れたのだが――すぐに返事がきた。

『行きます! 絶対に行きます!』

「最初に言っておくが、かなり危険が伴うぞ? 人命優先だから、金も稼げないかもしれない」

『覚悟してます!』

「君がなにかあれば、ミオちゃんはどうする?」

『キララさんにお願いして、祖父の所につれていってもらうことになってます』

「そこまで、キララたちと話をしたのかい?」

『はい、レベルのことも話しました』

「わかった」

終わったかと思ったのだが、次のメッセージがきた。

『キララだけど、サナになにかあったら、許さないからね!』

キララはサナの端末を借りているようだ。

俺は彼女からブロックされてるし。

「大丈夫だよ――とは言えん。かなり危険な話なんで、こちらに来て詳細を話してから、決めてもらう」

『もう!』

サナはやる気だが……。

「イロハ、いつ出発する? 今からたつのか? 幸い、俺のアイテムBOXの中には食料を詰めたばかりだし」

「悪いが、すぐに発ちたい……」

「姫!」

「承知した、すぐに準備する」

「スマン!」

彼女は再び、絨毯に手をついた。

「それじゃ、イロハも戻って準備か? ダンジョンの入口で待ち合わせってことで」

「わかったぜ!」

彼女が立ち上がると、急いでドアから出ていった。

「妹さんがいたとはなぁ……」

「そうですね」

カオルコも意外そうな顔をしている。

「カオルコに兄弟姉妹は?」

「いません」

「姫は双子だしなぁ」

「ダーリンは?」

「弟がいて、都会で働いていたが、世界が静止したときにな」

「そうか……」

おっと、その前に、サナに連絡をいれなければ。

「すぐに出発するそうだ。ダンジョンの入口で待ち合わせになる」

彼女にメッセージを送った。

『わかりました! すぐに準備をします!』

「食料は俺のアイテムBOXに入っているものを使うから、持ってこなくてもいい」

『はい!』

――と言いつつ、ダンジョンに入るときに最低限の食料を配っておかないと、なにがあるか解らんからな。

なにかの事故で、単独行動にならないとも限らない。

俺と姫たちが、迷宮教団によって飛ばされたようにな。

まぁ、あの状態になったら、多少の食料を持っていたとしても、即詰みの可能性がデカいが。

実際、姫とカオルコは、ギリギリのところだった。

俺は迷宮教団のことを思い出して、不吉な思考に支配されていた。

イロハの妹さんも、迷宮教団絡みかもしれないからだ。

まったくなぁ……。