軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

70話 戦闘開始!

トップギルド合同で、ダンジョン深層へのアタックを続けている。

沢山の魔物とエンカウントしながら、俺たちは目的地である7層の入口に到着した。

ここには、ダンジョンを塞ぐ巨大な壁と、地面から100mの高さに出入り口があるという、厄介な難所だ。

この場所に足場を組んで、さらなるダンジョン攻略のための突破口を作ろうというのが、この度の計画だ。

皆で力を合わせて、半分ほど足場ができたとき、異変が起きた。

ここ7層の入口は安全地帯のはずなのに、魔物がポップしたのだ。

それだけではない。

歴戦の冒険者たちも見たことがないという魔物で、その身体の一部には、俺たち深層への地獄へ送り込んだ共犯者――ギルド踊る暗闇の奴らが取り込まれていた。

皆の見解では、グールではないかと言うのだが……。

「はっ! ダンジョンの中に逃げ込んでグールになってんじゃ、世話がないぜ!」

イロハが吐き捨てる。

「やつらには、ダンジョンの内部を自由に移動できる迷宮教団がついていたはずだ。なんでこんなことに……」

「あたいが知るはずがないだろ? 大方、裏切られたんじゃね?」

確かにその可能性はある。

「利用するだけして、あとはポイってか?」

「あはは、踊る暗闇のやつらには、ふさわしい最期じゃねぇか!」

「いくら悪党でも、ちょっと不憫だな」

「ダーリン! やつらにそんな同情は無用!」

姫の言葉だが、イロハも同調した。

「桜姫の言うとおりだぜ!」

話をしている俺たちの後ろから、魔導師の攻撃が始まった。

「光弾よ! 我が敵を撃て!(マジックミサイル) 」「 憤怒の炎!(ファイヤーボール) 」

魔法の矢や火の玉が次々に打ち込まれるが、魔物の体表で凹んで破片を散らすだけ。

穴はすぐに再生してしまう。

中々に強力な再生能力だ。

それじゃ、次は俺の番だ。

敵の攻撃を縫って、魔物に近づく。

「瓦礫召喚!」

ゴツゴツとした巨大な瓦礫が、魔物の上から降り注いだ。

「グォォォ!」

質量攻撃で潰れているようだが、それほどのダメージは与えられていないようだ。

敵のパワーで瓦礫が押しのけられたが、とりあえず足止めはできている。

「さがってください!」

ダンジョンにカオルコの声が響いた。

重々しく沈んでいたダンジョンの暗闇――その静寂を破るように、床や壁の隙間から微かに光が集まり始めた。

最初は小さな光の粒だったが、それらが次第に互いに引き寄せられ、集束していく。

その光は白銀にも似た輝きを放ち、徐々に形を成していった。

前にいた冒険者たちが一斉に退避する。

「 我敵を穿て!(うが) 」

光は一つの束となり、神秘的な力に導かれ、ダンジョンの中央に立ちはだかる巨大な魔物に向かって、轟音とともに打ち出された。

光の束は肉を断ち切るような音と共に、魔物の厚い皮膚を容易に貫き、内臓や骨をも粉砕する。

敵の咆哮が空間に響き渡り、その声は痛みと恐怖で満ちた。

俺たちを襲っていた巨体は二つに裂け、黒い霧のような血しぶきが宙を舞った。

魔物の身体を引き裂いた魔法だが、その勢いは止まらなかった。

光はそのまま進み、後ろのダンジョンの壁に激突する。

石壁は光の衝撃で崩壊し、無数の破片が四方に飛び散った。

壁の向こう側には、黒い別の空間が現れ、そこからさらに薄暗い気配が漂ってきたが、今はその光景を見つめるしかなかった。

「スゲー!」「キャァァァ!」

イロハのデカい声と女の子たちの悲鳴が響く。

破片が弾丸のように飛んできたので心配だったが、魔導師たちは防御魔法を使って防いでいるようで一安心。

魔法の力の余韻は、まだ空気中に漂い、ダンジョン全体を包むように静かに揺らいでいたのだが――。

「ギュォォォ!」

魔物は絶命するわけでもなく、叫び声を上げ続けている。

ミノタウロスも頭を潰されて動いていたから、それは不思議ではない。

ただ、カオルコの必殺の魔法で死なない厄介な敵との戦闘が続くと解って、俺は少々暗い気持ちになった。

「ん?!」

引き裂かれた魔物の身体の中になにか黒いものがあるのが見える。

もしかして魔石だろうか?

魔石があるということは、あいつらは本当に魔物になってしまった――ということになる。

「うう……」

後ろで、魔力を使い果たしたカオルコが倒れそうになった。

マッハで駆け寄ると、支えてお姫様抱っこする。

そのままダンジョンの壁の辺りに彼女を連れて行こうとしたのだが、幽鬼が叫んだ。

「あれを見てください!」

魔導師の強力な魔法で引き裂かれた魔物の身体が元に戻り始めたのだ。

みるみるデカい傷がくっついていく。

「グォォ!」

苦悶の表情を浮かべていた魔物の顔に生気が戻ると同時に、攻撃も再開された。

やつを魔導師の所に向かわせるわけにはいかない。

俺も単管ミサイルを打ち込んで、チマチマとヘイトをこちらに向ける。

幸い、知能は残っていないらしく、感情と本能のままに動いているようだ。

これなら、魔法を使ってくるレッサーデーモンのほうがヤバかったが、再生能力があるせいで、こちらがジリ貧になりそうである。

「こんなやつ、どうするんだ?! エンプレスのスゲー魔法も通用しなかったんだぞ!?」

イロハの言うとおりだが、なにか方法があるはず。

考え込んでいると、敵の動きが止まった。

「どうした?! 止まったぞ!」

姫の言葉がダンジョン内に響いたのだが、止まった原因がすぐに暗闇から姿を現した。

目を凝らしても何も見えない深い黒の世界に、突如として、白い肌を持つ不気味な裸の女が現れた。

まるで湧き上がる黒い霧の中から形作られたように、徐々に輪郭が浮かび上がり、その存在がゆっくりと確定していく。

彼女の肌はまるで血が通っていないかのように、異常なまでに白く、闇の中でぼんやりとした光を放っているように見える。

その顔は無表情だが、瞳の奥に冷たい狂気が潜んでいた。

髪は長く、黒い糸のように濡れた質感で肩から垂れ下がり、まるで闇と一体化しているかのよう。

「迷宮教団!」

「たしかに――ダーリンが観せてくれた動画の中にいた女だ!」

イロハは、ギルドの打ち合わせで俺の動画を観たからな。

他の者も、俺の動画サイトにアップロードしたものを観たに違いない。

彼女は音もなく、足音さえ立てずにゆっくりと動き出す。

静かで冷たい雰囲気が周囲に満ち、息をすることさえ忘れさせるような緊張感が張り詰めていく。

「そいつらは、お前がやったのか?!」

俺は女に化け物に変わってしまった連中のことを尋ねた。

「……あら?」

彼女は俺のことを覚えていたようだが、まるで興味がないように薄ら笑いを浮かべている。

ダンジョン深層に飛ばした冒険者のことなど、端からどうでもいいのだろう。

「おい!」

「……彼らは、ダンジョンと一体になり、神の力によって生まれ変わったのよ。素晴らしいでしょ?」

「クソ! なにが神の力だ……」

俺は、女の言葉を聞いて、行方不明になったレンがもう生きていないと確信した。

「このクソッタレがぁ!」

イロハが大剣を振り上げる。

「待て!!」

彼女が突っ込んでいきそうだったので、慌てて横から蹴りを入れた。

「なにすんだ、ダーリン!」

彼女がすっ転んで、俺に悪態をついたのだが――その瞬間、彼女がいた場所に光の柱が立ち、周囲のものが巻き込まれる。

転移だ。

「迂闊にやつに近づくと、ダンジョンの深層に飛ばされるぞ!」

「あら……惜しい」

裸の女が微笑みを浮かべている。

「く、クソ!」

イロハは歯ぎしりをしているが、単独で飛ばされたら、まず生きて帰ってはこれない。

ここから迎えに行くという手もあるが、深層のどこに飛ばされたか解らないんじゃ、探しようがない。

探索している間に、彼女が餓死してしまうだろう。

皆が歯ぎしりをしていると、女の姿が暗闇の中に消えた。

「グォォォ!」

女がいなくなると、魔物が再び活動を始めた。

俺とイロハをめがけてパンチが襲ってきたので、飛び退いた。

カオルコの必殺魔法は一発で打ち止めだ。まさかアレが通用しないとは……。

「ちくしょう! ……ん?! もしかして!」

「どうしたダーリン?!」

姫がこちらを見ているのだが、俺はあることを閃いた。

「ちょっとまて! 奴がグールなら、俺のアイテムBOXが使える!」

「はぁ?! アイテムBOX?!」

イロハは当然知らないが、生き物じゃないものなら収納できる。

「グールはアンデッドだろ? 死んでいるから、アイテムBOXに入るんだよ」

「本当かよ?!」

「ああ! 試してみるか!」

「グゴォォォ!」

敵は、俺たちめがけて突進してきた。

一斉に躱すと、俺だけ攻撃で飛び散る瓦礫の間を抜けて、敵の脚に取りついた。

「オラァァァ! 天地返しぃ!」

渾身の力を込めて、巨大な身体を放り投げた。

巨体が宙を舞い、頭から地面に激突した。

「グォォ!」

悶絶する敵に俺は、掌を向けた。

「収納!」

……なにも起こらない。

「グゴォォ!」

敵が起き上がってきたので、一旦距離を取る。

怒りくるった敵が、こちらに向かってきたので戦闘再開だ。

「キャァァァ!」

魔導師の女の子たちは、集団で悲鳴を上げながら壁際を走り回る。

「ガァァ!」

突っ込んできた敵が、苦労して作った足場に突っ込むと、積み木が崩れるように上部から構造物が落下する。

金属同士がぶつかるデカい音とともに、魔物が単管の下敷きになった。

かなりの重量だとは思うが、俺の出した瓦礫の直撃にも耐えたんだ。

これぐらいじゃくたばらないだろう。

「くそ! せっかく作ったのに!」

完全に壊れてしまったので、もう修理は不可能だ。

ダンジョンに捨てて、外から新しい足場を持ってきて、再び組み立てるしかない。

なにか途方もない作業が頭の中にちらつき、軽い目眩がする。

このクソ野郎が。

こいつらは、どんだけ俺に嫌がらせをすれば気が済むんだ。

崩れ落ち曲がった単管が絡みついて、魔物の動きが止まった。

そこに向かって、次々と魔法が打ち込まれたのだが――これとて、まったく効いていない。

「ダーリン!」

姫たちと合流する。

「アイテムBOXに収納できなかったということは、あれはグールじゃないってことだ」

「マジかよ!? じゃあ、アレはなんなんだ?!」

イロハの言葉に幽鬼が反応して、化け物を指した。

「……もしかして、あれはキメラの一種なのかもしれません」

「キメラか……おそらく、さっきの女がやったんだろ」

「そんなことができるのかい?!」

イロハは信じられないといった顔をしているが、俺だって信じたくはない。

「神の力とか言っていたが、本当にそんなものがあるのか?」

いや――いつも言っているように、このダンジョンじたいが、人智を超えた代物だ。

まさに神の力と言っても過言ではないだろう。

「ダーリン――それじゃ、あの女が神の力にアクセスできたとでも言うのか?」

「わからん」

俺は姫の言葉を肯定しなかった。

したくもなかった。

神の力だって?

神っていうか、邪神かなにかじゃないのか?

迷宮教団のことはさておき、眼の前の敵をなんとかしなくては。

ここから逃げても、やつは追ってくるだろう。

そもそも安全地帯に湧いたんだ、どこでもお構いなしなはず。

キメラというと、色々な生物を合体させたというやつか?

たしかに合体しているが……。

「グールじゃない、再生能力があるとなると――やっぱり、中にある魔石を破壊する必要があるな」

敵の身体が裂けたときに、チラリと見えた黒いものだ。

「やはり、それしかないか」

姫が剣を構えた。

「だが、さっきの攻撃で見えたが、魔石は複数あるようだったぞ?」

「5体が合体しているということは、魔石も5個あるのかもしれん」

「う~む……そうか」

俺は、敵の再生能力を邪魔するいい方法を思いついたかもしれない。

「ダーリン?」

「姫、やつの身体をもう一度、切り裂けるか?」

「承知!」

彼女が剣を構えて、突っ込もうとすると後ろから声がした。

「まってくれ!」

声の主は、今まで沈黙を守ったままのゴリラだった。

「俺にやらせてくれ! ミカン、俺にバフを!」

「なにを言ってるの?! あんたのレベルじゃ、バフがあっても無理だって!」

「それでもやらせてくれ!」

正直、彼に無謀な突撃をされて怪我をされたりすると、余計な 回復(ヒール) や 回復薬(ポーション) を消費することになる。

それは避けたいのだが……。

「姫!」

リーダーは彼女だ。

ゴリラを見ていた姫だが、強く頷いた。

「よし! 任せた!」

「マジで?!」

「ありがたい! ミカン! バフだ!」

「どうなっても知らないよ! 筋力強化(フィジカルアップ) ! 速度上昇(ヘイスト) !」

魔導師が唱えた魔法が、青い光の粒になって、ゴリラの身体に染み込んでいく。

バフの重ねがけだ――そんなこともできるのか。

「うぉぉぉ!」

大剣を構えたゴリラが、敵をめがけて突撃を敢行した。

「グゴォォ!」

魔物の繰り出したパンチをくぐり抜けて、鋼の刃が敵の脚を切り裂いた。

巨体が膝をつきつつも、腕を振り回しての反撃を、彼はバックステップで躱す。

その間にも、最初の傷が修復しつつあった。

魔物が立ち上がると、両手を重ねて高く頭上まで振り上げた。

圧倒的な質量を使った、超重量級の攻撃である。

いくら高レベル冒険者といえども、あれを食らってはひとたまりもないだろう。

「コタロー!」

ミカンの叫ぶ声が、ダンジョンの中に響いた。

あそこまで近づいてしまうと、援護の攻撃もできない。

魔法などを撃つと、彼に当たる可能性がある。

ゴリラは、魔物渾身のスレッジハンマーを身体を捻って躱すと、丸太のような敵の腕に飛び乗った。

再び彼が身体をドリルのように回転させると、敵の腕が螺旋状に切り裂かれる。

「ギャォォォ!」

叫ぶ魔物の腕で駆け上がり、大きくジャンプ。

両手で握りしめられた巨大な剣が、空を裂くように高く天井を指した。

剣の重厚な金属が鈍く光り、周囲の空気がピンと張り詰める。

彼の筋肉が緊張し、剣は重力に引き寄せられるように一気に振り下ろされた。

剣の刃が魔物の硬い皮膚を突き破り、肩口に深々と食い込む。

黒い血飛沫が舞い上がり、魔物は苦悶の声を上げながら大きくのけ反る。

剣の衝撃が地面に伝わり、周囲の床が震えるほどの力だ。

「だが、浅いか?!」

彼の剣は魔物の肩口で止まっており、身体を引き裂くまでは至っていない。

「うおぉぉぉ!」

ゴリラが魔物の身体をキックして、巨大な剣を引き抜くと、その場でジャンプ。

身体を1回転させると、再び同じ場所に刃を食い込ませた。

「ギャィィィ!」

魔物の叫び声が、ダンジョンの中にキンキンと反射する。

巨躯が真っ二つに引き裂かれて、黒い体液と臓物が露出した。

「「「おおお~っ!」」」

固唾をのんで戦闘を見ていた冒険者たちから歓声が上がる。

バフがあったとはいえ、あのような動きができるということは、やはり彼はトップランカーに相応しい実力を持っていた――ということなのだろう。

魔物の身体の両断に成功したゴリラだが、巨大な手によって弾き飛ばされて、暗闇の中に飛ばされた。

「コタロー!」

ミカンの声が響くと、彼女が暗闇の中に走り出す。

2人を助けてやりたいが、俺にもやることがある。

「次は俺だ!」

アイテムBOXから腐敗の短剣を取り出すと、切り裂いた魔物に向かって突っ込んだ。

踏み切ってジャンプすると、敵の傷口めがけて、投げつける。

魔物の傷口は、すでに塞がりつつあったが、短剣に付与された腐敗の効果によって、それが邪魔された。

傷口はグズグズになって、溶け出している。

この状態異常を解除しなければ、切り裂かれた身体が塞がることはないだろう。

「「「おおお~!」」」

冒険者たちから、再び歓声が上がった。

「とりあえず、再生は止まったぞ! あとは魔石を壊せばいい――オラァァ、そこだぁ!」

崩れる魔物の身体から、黒いものを見つけた俺は、アイテムBOXからミサイルを取り出した。

弾頭が超硬タングステンのやつをお見舞いしてやる。

敵の魔石までの航跡が白い線になって、俺の目に映る。

それをめがけて、ミサイルを投げ込んだ。

一直線に飛んだ武器が、肉の中に埋没していた黒いものにヒット――暗闇に閃光が走り、ダンジョンの形が露わになる。

隅っこに飛ばされたゴリラと、そこに駆けつけたミカンの姿も見えた。

「よっしゃ! 次はあたいだぜ! うぉぉぉ!」

イロハが剣を振り上げて、魔物に向かって突進する。

溶けた敵の身体から、無数の触手らしきものが伸びてきたのだが、彼女はそれを一閃――敵の懐に入ると、下から切り上げた。

「ギャォォォ!」

叫ぶ魔物の傷口から、黒いものが露出する。

「おらぁぁぁ!」

彼女が飛び上がると、見えた魔石に向かって剣を振り下ろした。

切っ先が漆黒に食い込むと、再び閃光を放ち石が砕け散る。

「グォォォォ!」

「あと、3つか! こいつは厄介だな」

俺は魔物の身体を見つめた。

崩れた魔物の身体は、人型を保てなくなっており、臓物から触手を四方に伸ばしている。

「次は私だな!」

剣を構えた姫が、敵の元に向かうと無数の触手が彼女を襲う。

姫と触手――なにか「クッコロ!」みたいな展開になったりしないだろうな?

大丈夫だとは思うが、ちょっとハラハラしながら、彼女の戦いを見守るしかない。

「おいおい桜姫、大丈夫か?! エロ漫画みたいな展開になったりするんじゃないだろうな?! そんなことになったら、男どもが喜ぶだけだぞ、あはは!」

俺の思っていたことを口に出しやがった。

さすがイロハ。

そこに痺れる、憧れるぅ! のだが、もちろんそんなことには、ならなかった。

彼女の剣の捌きは、百花繚乱――襲ってくる無数の触手を切り刻み、なんなく魔物の魔石を破壊して見せた。

「私を誰だと思っている!」

彼女が、苦しむ魔物に背を向けて残心している。

無論、警戒を怠ってはいない。

「さすが、姫」

「次は私の番ですね――圧縮光弾! 我が敵を撃て!(マジックミサイル) 」

すでに幽鬼の前には青い光が集まっており、閃光とともに、針のように細い光の束が敵の身体を貫いた。

遠距離から、正確に敵の魔石を貫通したらしい。

魔石が光を放ち、破片を四方に撒き散らした。

残るはあとひとつ。

「ダーリン!」

「最後はやっぱり俺か! お~い、女の子たち! 俺にもバフをくれ」

「「「は、はい!」」」

魔導師の女の子たちから、 筋力強化(フィジカルアップ) の魔法を受けると、俺はアイテムBOXから岩を取り出した。

「すごい! 身体が軽い」

レベルアップしてから、身体がとんでもない速さで動くのだが、バフを受けるとそれが1段階上昇するようだ。

俺は岩を握りしめると、脚を高く上げた。

「オラァァ! いけぇぇぇ!」

俺は全パワーを、腕に集中した。

俺が放った 礫(つぶて) は、耳をつんざく轟音とともに、敵に命中――。

魔物の身体に大穴が空き、構成していた身体の一部が飛び散った。

おそらく、俺が放った弾が音速を超えて、衝撃波が発生したものと思われる。

命中したときに、閃光も見えたので、衝撃波によって魔石も砕けたのかもしれない。

その証拠に、もはや魔物の身体は再生することもなく、その動きを止めてしまった。

最後の力を使って、なんとか触手を動かそうとしているのだが、徐々にその力も弱々しくなり――ついには動かなくなる。

その場には、半分腐敗した肉の塊が残った。

「やったのか?」

剣を構えたイロハがつぶやいた。

「わからんが――本当に死んだのなら、俺のアイテムBOXに入るから、試してみるか」

警戒しながら、魔物に近づくと収納を試みる。

「収納」

眼の前から、肉の塊が消えた。

「「「おおお~!」」」

「やったぞ!」

「「「おおお~っ!」」」

ダンジョンのホールに、冒険者たちの歓声が響いた。

それはさておき、事後処理だ。

やれやれ。

ひとつ判明したことがある。

やつら――迷宮教団は絶対に許すことができない。

これだけだ。