軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

26話 新しいダンジョン

ダンジョンの外でのトラブルから、俺のアイテムBOXの存在がバレてしまった。

まぁ、いずれはバレるだろうから、それは仕方ない。

今後の俺は政府の管理下に置かれて、監視がつくらしい。

たとえば、外国からの接触も考えられるからだ。

日本政府があまり無茶をすれば、外国に亡命――なんてことにもなりかねない。

俺としても復興してない外国に行くつもりなんてないが、アメリカ辺りならありかも――などと考えてしまう。

アメリカなら、たくさん金を出してくれそうじゃない?

俺を査問したメンバーには、今の総理大臣もいたし、そこら辺は解っているだろう。

アイテムBOXなんてものは、使いかた次第では、戦略核に匹敵するわけだし。

そうだ――国と取引するなら、個人ってわけにはいかんな。

会社でも作るか。

動画の収益もかなり入ってくるしな。

その前に、俺は特区の武器屋に行くことにした。

金が入りそうなので、武器の新調だ。

――と、いっても、剣と言うにはあまりにも大きすぎた――みたいなものを作るつもりではない。

俺のレベルだと、アニメやゲームみたいな巨大な剣でも振り回せそうな気がするがな。

実際、そういう武器を使っている連中もいるのだが、俺はちょっとな。

アイテムBOXもあるから、巨大な剣でも持ち運びは可能ではあるが……。

武器のことを考えつつ、武器屋の前にやってきた。

ショーウィンドウには、鋭利な刃物から重厚な銃器まで、多様な武器が一目で見渡せるように陳列されていた。

一角には光沢のある刀身が鮮やかな日本刀、優美な彫刻が施された古代風の剣が誇示されている。

その隣には、光を反射するようなポリッシュされた斧やバルディッシュが整然と並び、その優美さが目を引く。

更に奥に進むと、戦場での勝利を約束するようなコンパウンド式のボウガンや、未来的なデザインのエアライフルが並ぶ。

そのすべてが、力強さや自分の店の技術を誇示するかのように、一つ一つ丁寧に展示されている。

「お~、すげ~な」

特区の武器屋はボッタクリだと聞いていたので、足が遠のいていたが、これは男の子ならワクワクするんじゃね?

なるほど、バルディッシュって手もあるなぁ。

心惹かれるものはあるが、俺の武器はそうじゃない。

俺は店の奥に進んだ。

「ちわ~」

「いらっしゃいませ」

カウンターにいたのは、ヒゲを生やしたヒョロリとした爺さん。

ファンタジーなら、こういう場所にいるのはドワーフなんだが、当然日本にドワーフはいない。

武器を作るといっても、ここで作っているわけじゃないだろうし。

知り合いの鉄工所などに頼んでいるのだろう。

「どんな武器でも作ってくれると、ネットで見たんだが……」

「もちろん、ご注文には可能なかぎりお応えいたしますよ。料金はかかりますが――どんな武器でしょうか? 高レベル冒険者には超大型の剣などが人気ですよ」

彼が、壁に立てかけてある、大きな剣を指した。

それは剣と呼ぶにはあまりにも大雑把過ぎるのだが、こういうのは強度重視なのだろう。

質量で攻めるタイプだと思うし。

「いや、俺が頼みたいのは、こういうのだ」

アイテムBOXから、単管ミサイルを取り出した。

「ひょ! も、もしかしてアイテムBOX?!」

爺さんが、突然現れた単管に飛び上がった。

「そうなんだ」

「あの、公報に載っていた、アイテムBOX持ちを公言された方というのは――」

「それが俺だよ」

「ははぁ――なるほど。今後とも当店を宜しくお願いいたします。で、この武器は投擲武器――槍ですか?」

「そうなんだ」

武器としてはほぼ完成しているのだが、もうちょっと強度がほしい。

「中は中空ですか?」

「いや、砂が入っている」

「ははぁ――なるほど」

彼は武器の専門家だ。

俺の狙いが解ったらしい。

「こいつは手っ取り早く単管を使ったんだが、もうすこし肉厚と重量が欲しい」

「それでは二重構造にして――目標に衝突すると弾芯が飛び出すようにしましょうか?」

「いいね、運動エネルギー徹甲弾だな」

「はい」

「弾芯は超硬タングステンにしてくれ」

「お値段が跳ね上がりますよ」

「武器が通じない強敵にだけ使う予定だから、そんなに数を揃えるつもりはないんだが――1本どのぐらいになりそう?」

オッサンが電卓を弾いている。

「多分、10万円ぐらいですかねぇ」

「それならOKだ。6本ほど注文したい」

「承知いたしました」

「劣化ウランが手に入るなら、弾芯をそれにしてほしいところだが」

「……」

彼がだまって手招きをしたので、顔を近づけた。

「実は、少しなら手に入ります」

「マジで?」

「世界が静止してからウランが核分裂しなくなってしまったじゃないですか?」

「ああ」

「それで、行き場所がなくなったウランが結構あるんですよね」

「それって、劣化ウランじゃなくて、生ウランだよな?」

「放射能がなくなったので、どっちでも大丈夫ですよ」

そりゃそうか。

超重元素は、放射能がないただのクソ重い物質ってことになってしまったわけだし。

そもそも、劣化ウランの加工なんてかなり難しいと思うのだが、それができるということなんだろうな。

「それじゃ、そいつを2本ほど追加で」

「ということは、合計で8本ですね」

「ああ」

たいして使い道がないものなので、値段もそんなに高くないらしい。

合計で100万円ということだった。

「それじゃ、頼むよ」

「かしこまりました」

スマホを使って前払いをする。

金はあるから大丈夫だ。

これで、ミサイルのランクを上げて、敵によって使い分けることができる。

さて劣化ウラン弾を使うような強敵が現れるのか。

なんかフラグを自分で立てた気がするのだが、気のせいだ。

「あと、こいつの強化をできないだろうか?」

俺はアイテムBOXから、プラバットを取り出した。

こいつは対人戦闘や手加減をするときに便利だ。

「オモチャのバットですか――う~む、これは……」

店主がバットを持って俺の狙いが解ったようだ。

さすが、武器のプロ。

「う~ん、それではこうしましょうか?」

彼が紙に図面を描いた。

タブレットじゃないところが、若い世代じゃないという印象。

こういうのは慣れなんだろうな。

生まれてからタブレットがある世代なら、それを使うのが当たり前になっているし。

彼から提案されたのは、砂鉄が入ったバット型の袋に金属バネの芯を通す。

袋は防弾ベストなどに使われる繊維で補強される――という代物だ。

印象的には、手持ちサンドバッグか。

値段は――10万円。

高いと思うかもしれないが、ワンオフならこんなものだ。

嫌なら自分で作らねばならないが、ある程度自作をしている俺には解る。

そんなのデキッコナイス。

特殊繊維の加工なんてできないし。

「それで頼むよ」

「かしこまりました」

仕上がったら、スマホに連絡をくれるそうだ。

どういう感じになるか、ちょっと楽しみでもある。

武器の注文をして外に出ると、ちょうど昼頃。

いつもの露店で、魔物ケバブを10個ほど買って、アイテムBOXに放り込む。

「え?!」

ここでも店主に驚かれる。

まぁ、そのうち慣れてくれるだろう。

「ははは」

とりあえず、笑ってごまかしながら、ケバブにかぶりつく。

相変わらず、ここのは美味い。

「これって、旦那なのかい?」

店主がスマホのニュースを見せてきた。

「そうなんだよ」

「そんなすごい方だとは、おみそれいたしました」

「実はそんなにすごくないんだがなぁ。普通のオッサンだし」

「普通のオッサンが、アイテムBOXは持ってないんだけどな」

「ははは」

ケバブを入れたり出したりぐらいじゃ、通行人たちの目にも止まらない。

俺のことをつけているのは、監視をしている連中だけだ。

もしかして、某国の特殊部隊などがやってきて、ドンパチを始めたりしないだろうな。

そんなことになったら困るが、こっちも、今のところ黙って拉致られるつもりはない。

全力で抵抗させてもらう。

「あ! そうだ」

せっかく、総理に直に連絡できるようになったじゃないか。

直接聞いたほうがよくないか?

「え~と、『お忙しいとは思いますが、暇なときでいいので質問させてください』」

俺を狙って第三国の特殊部隊やらギャングやら、カルテルなどに拉致られそうになったら、やっちゃってもいいのか?

――という、質問だ。

すぐには答えが来ないと思うが、まだ昼だし、時間がある。

俺は、ダンジョンに潜ることにした。

今日は俺1人だし、好き勝手できる。

ならば、例の新しく発見されたダンジョンに行ってみるか。

俺1人なら、女の子たちの心配をしなくても済むしな。

「よし、決めた!」

――と、ダンジョンに向かおうとすると、総理から返信が着た。

『そういうときのために、公安と特殊作戦群がいるんだが、君を拉致られるのは絶対に阻止したい。特区内なら問題ないが、外でも大抵のことには目を瞑る』

「え?! 自衛隊も投入されているの?」

クルクルと見回してみるが、まさか常時俺に張り付いているわけではないだろう。

そういう情報が入ってくれば、投入されるということだと思う。

そもそも、そういう事態になるのを否定しないのね。

やれやれ――かなりのおおごとになっているが、そのぐらいアイテムBOXってのはヤベー能力なのだ。

「そうそう、ついでに聞いてしまえ『ダンジョンから離れても、魔法が使える特殊部隊がいるそうなのですが、本当ですか?』」

返事がきた。

『他言無用だが――そいつらは【紋章隊】だな。相手が冒険者崩れの可能性も考えられるし、当然投入される選択肢はある』

総理が嘘は言わないだろうから、本当に魔法を使える特殊部隊がいるんだな。

「ふう……」

俺はため息をついた。

俺の能力を欲しがる連中は多いだろうが、手に入らないと解ったら、抹殺に切り替えてくる可能性がある。

俺の能力は敵にとっても脅威だろうし、そういう決断をしてもおかしくない。

もちろん、同盟国のアメリカといえど信用はできないだろう。

アイテムBOXを公表して儲けられるとは思うけど、命を狙われるのはなぁ。

俺だけならいいが、女の子たちをそんなのに巻き込むは可哀想すぎる。

やっぱり、サブリーダーにキララを立てて、基本的にはソロでやるべきだろうか?

今後の計画を考えていると、また着信。

「お?」

今度は望月君か。

『ニュースを見ました。丹羽さんが、そんなにすごい方だとは思いませんでした。トロルを一発で仕留めたのも納得です。私は、冒険者には向いていないと解りましたので、他の職を探すことにしました』

あら~、望月君は、冒険者辞めちゃうのか。

まぁ、怖い思いも痛い思いもしただろうしなぁ。

こういうのはやっぱり、適性ってのは大事だと思う。

俺は僻地で狩りとかしてた人間だし。

ヒグマとも戦ったしな。

残念だが、仕方ない。

「次の仕事がすぐに見つかるといいな」

――と、返信した。

ダンジョンに到着したので自動改札を通過して、中に入る。

そのままアイテムBOXから自転車を出して、真っすぐに2層に向かった。

目的地は、発見された深層への入口だ。

新しい階層にも興味があるが、新しい装備を試したい。

いつも撮影に使っているカメラに照明を取り付けたのだ。

一緒にアイテムBOXに収納しているので、取り出すと一緒に出てくる。

アイテムBOXのバグも適用されるようである。

これが本当にダンジョン内で使えるかどうか? ――その検証をしたい。

到着すると、なん人か先客がいた。

近代的な防具を装備している4人ほどのパーティである。

ドアがついた小屋が建てられており、光ファイバーのライトが設置されて看板を照らしている。

下りてなにがあっても責任を持ちません――みたいなことが書かれていた。

こんな場所に行くやつが、そんなことを気にするはずがないのだが、役所としては「一応、警告はしましたよ」という、言い訳みたいなものだろう。

あと、通路は上り優先らしい。

先客がドアを開けたので、俺も一緒に入った。

中は真っ暗である。

「なんだよ、明かりはないのか?」「 光よ!(ライト) 」

先客がブツブツ言っていると、仲間が明かりの魔法を使ったようだ。

彼らが通路を下り始めたので、ちょっと離れてついて行く。

俺は暗くても、目が見えるからな。

通路は狭く、人1人が通れるぐらいのスペース。

「上り優先って書いてあったが、すれ違いはどうするんだろうな」

俺がつぶやくと、通路の脇に凹みが見えてきた。

どうやら、ここに身を入れて、上り客を 躱(かわ) せってことらしい。

心配していたが、上りの冒険者には出逢うことはなかった。

しばらく下りると、明かりが見えてくる。

通路に明かりはないが、出口にはあるようである。

そのまま明かりに照らされたデッキに出た――そこは、単管で組まれた足場。

巨大な縦長の形をしたホールの天井部分に出たらしい。

デッキから、下への階段が螺旋状に続いている。

下を覗くと、まるで目の前には終わりの見えない暗黒の海が広がっているかのよう。

自分の立っている場所には、天井から差し込む暖かな光。

その周囲はわずかに明るく照らされているのだが、その明かりから奥に行くほど、暗闇が急速に広がっていく。

まるで明るさが光速で消失していくかのように――。

その先にはただの無限の闇が広がっているかのように思える。

俺の心の奥底に深い不安がよぎるのだが、同時に何かがそこに隠されているのではないかという強い好奇心も感じられる。

奥は漆黒だが、明かりがチラチラと動いているようにも見える。

先客たちの魔法の明かりだろうか?

「おい、どうする?」「ここまで来たんだぞ?」

先にいた冒険者たちは、揉めているようだ。

さすがに未知の領域だからな。

「ちょっと、俺が先に行ってもいいかい?」

「え? ああ……」「どうぞ」

待ってても仕方ないので、俺が先に下りることにした。

暗闇でも目が見えるというのは本当にありがたい。

何もない通路でも階段でも、真っ暗だと本当に恐怖が先立ってなにもできない。

階段を下りるたびに、景色は色をなくしてモノクロになる。

結構見えるのだが、遠くの景色は徐々に黒く霞んで溶けていく。

下に到着した。

ここはずっと石畳のようだ。

「さて、マップもなにもないから、迷うとヤベーな」

アイテムBOXに食料はあるから、多少迷っても平気だと思うが、トラップなどがある可能性がある。

某ゲームの *いしのなかにいる* みたいなやつだ。

そうなれば、いかに高レベル冒険者であろうが、一発でアウトだ。

いや、高レベルゆえに簡単には死ねないから、余計に地獄か?

ホールにはなにもないようなので、脇道を探して左の壁伝いに進む。

通路を発見したので、左折。

中も石畳がずっと続いているようだ。

俺はアイテムBOXからノートを出した――マッピングだ。

いつもは、大きな通路だけ通ってポップする魔物だけ倒しているのだが、今日は違う。

ここは未踏破のダンジョンなので、アイテムなどが落ちている可能性がある。

誰も来ていないってことは、罠などもそのままになっているわけだが。

オートマッピングみたいなスキルもあるのだろうか?

ガチ勢なら、是非欲しい能力だろうな。

それがあればかなり楽になるはず。

「1、2、3、……」

アイテムBOXから、メイスを取り出して、床を叩きながら歩く。

数えながら歩き、マップに記入していくと――足が止まる。

床の右側に不自然な複数の穴がある。

「コレってアレだろ? 下からブスッといくやつ」

俺はカメラの用意をした。

カメラが出ると、床が明るく照らし出される。

カメラに固定された照明も一緒に機能してくれているようだ。

使える! 実験は成功だ。

これで、魔法の明かりがなくても撮影ができる。

まぁ、魔法の明かりのほうが明るくて広範囲を照らせるんだが……。

こっちはバッテリーの容量の問題もあるし。

カメラはさておき、トラップが作動する動画は、絵的に面白そうだ。

まぁ、トラップに引っかかったやつらからすれば、全然おもしろくないだろうが。

アイテムBOXから、土嚢を召喚してみる。

空中に出た土嚢が床に落ちると、金属製の棘が飛び出てきた。

「おわっ!」

やっぱりか。

俺は足元も見えるから気がついたが、ケミカルライトなんかじゃ見逃すな。

先端もあまり尖っていないし、こいつを食らっても串刺しになるとは思えないが、大怪我はするはず。

俺が落とした土嚢も、貫通していないので、アイテムBOXに収納した。

あえて怪我をさせて戦力を削ぎ、魔物でトドメを刺す。

現代兵器の威力が低いのも怪我をさせるため――というのを聞いたことがある。

殺害するより、怪我をさせたほうが敵の戦力を削ぐことができるというのだ。

怪我人を後送するためには、多数の人員が必要になる。

そう考えると、ここはやっぱり悪意に満ちているよな。

棘は通路の右側にあったが、ちょっと離れた左側にもある。

ジャンプして飛び越えたら、そこには落とし穴があったりして。

1人なら落ちないが、複数人だと落ちるとか。

俺は曲がりくねる通路をマッピングして、1つの部屋にたどり着いた。

木製のドアには鍵はかかっていないようなので、カメラを用意すると隠れてドアを開ける。

矢が飛んでくる――ゲームだとそんな罠も定番だ。

このダンジョンはゲームに類似点が多いから、可能性が高いかもしれない。

そっと中を覗くと――小さな部屋に宝箱が1つ。

「う~ん?」

こういうのってミミックの可能性がないか?

俺はずっと考えていたことを、ここで試してみたい。

ミミックだろうが、本物の宝箱だろうが、最初に一撃入れればいいんじゃね?

魔物なら、それで正体を現すだろうし、先手を打てる。

「よし」

俺はメイスを握って、部屋の中に躍り込んだ。

宝箱と対峙しようとすると、いきなりドアが閉じる。

「え?!」

次には落ちてくる天井。

「そっちかよ!」

俺はドアを破壊しようと、一撃を入れた――が、壊れない。

表側は木製かと思ったが、内側は金属で補強されているようだ。

「くっそ! きたねぇ!」

文句を言っても、あとのカーニバル。

天井が徐々に迫ってくる。

「そうだ!」

俺は、自分のひらめきを試してみることにした。

「収納!」

ひらめきというのは、天井じたいをアイテムBOXに収納してしまうのだ。

俺の一か八かは成功して、落ちてきた天井は消えた。

天井がなくなると、そこにはかなり高い空間ができていた。

「小さい部屋でよかった、もっと大きな天井だったら収納できなかったかもしれない」

一安心したが、部屋が広くなると、吊り天井の仕掛けもかなり大掛かりになる。

基本は、小さな部屋にしかないと考えるべきだろう。

もう一つ学んだことがある。

部屋に入るときには、ドアが完全に閉まらないように、なにか挟んでおく必要があるな。

上を見ると、大きな鎖が部屋の隅にぶら下がっていた。

あれで吊っていたのか。

試しに収納してみると、途中までアイテムBOXに入った。

やっぱり、あまり離れていると無理みたいだな。

「さて、罠も片付いたし――宝箱かミミックか確認させてもらおうじゃないか」

俺は箱に近づくと、メイスを振り上げて、箱を殴りつけた。

もちろん箱を壊さないぐらいの手加減はしている。

そうしないと、中身まで破壊してしまうからな。

「ギェェェ!」

箱が口を開けて、鋭い牙をむき出してきた。

やっぱりミミックだったな。

魔物だと解ったが、別に手足が生えて動き回るわけでもない。

定位置で、バタバタと口を開けているだけ。

待ち伏せタイプの魔物なので、それをスカされたら、たいしたことはないな。

俺はミミックが動かなくなるまで殴りつけた。

「ギ……」

敵が動かなくなると、なにかが落ちてきて金属音を立てる。

辺りを探すと――指輪を見つけた。

ドロップアイテムか?

俺はカメラを止めた。

アイテムはいいんだが、使ってみないことには、なんの効果があるのかまったく解らないのがなぁ。

もしかして、 呪い(デバフ) のアイテムもあるのだろうか?

とりあえず、指を入れてみた――が、なにも起きない。

ゲームみたいにエフェクトがあれば解りやすいのに……

「ミミックって金になるんだろうか?」

とりあえず、アイテムBOXに収納。

ついでに、ドアも内張りに金属が使われているので、こいつも収納。

「あ、そうか! ドアを収納して開ければよかったのか……」

オッサンになって、咄嗟のことだと頭の回転がいまいちなのがツライ。

若いときとくらべて、ひらめきってのが少なくなったよね……。

収穫としてはこんなもんだろうか?

俺は昼過ぎにダンジョンに入ったので、そろそろ女の子たちも外に出てくるかもしれない。

部屋の外に出ると、来た道を引き返す。

途中、床から飛び出た棘の収納も試してみた。

「棘もアイテムBOXに入るのか」

これなら、罠を発動しまくって、アイテムBOXに入れてしまったほうが、他の冒険者のためでもあるな。

それにしても、この収納の容量はどのぐらいなんだろうな?

今のところ、吊り天井とか、俺の愛車も入っているわけだろ?

かなりの容量だと思うけど。

細い通路から出て、ホールに戻ろうとすると、叫び声が聞こえてきた。

「ぎゃぁ!」「誰か!」「助けてくれぇ!」

ホールは魔物がいないと思っていたのだが、冒険者のパーティがなにかに襲われているようだ。

敵は大きな人型の魔物で、大きな斧を持っている。

なんだろう、あれは……頭に角が見えるな。

「う~ん?」

いや、そんなことより、助けてやらんとまずいな。