軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

リヒテンベルガー侯爵のお茶会

ある日の午後、我が家に一通の手紙が届く。

それはリヒテンベルガー侯爵家で行われるお茶会の招待状だった。

差出人は――リーゼロッテではなく、その父。

「え、どうして!?」

「メルちゃん、どうかしたの?」

「いえ、我が家宛てに手紙が届いたので開けてみたら、リヒテンベルガー侯爵様からのお茶会の招待状だったんです」

「どういう魂胆があって送ってきたのかしら?」

「さあ?」

何か目論みがありそうだったので、リーゼロッテに話を聞いてみることにした。

今日はリーゼロッテが幻獣用の果物を持って、我が家に遊びにやってくる日だったのである。

訪問してきたリーゼロッテとお茶を囲みつつ、リヒテンベルガー侯爵から届いたお茶会の招待状について聞いてみた。

「お父様がお茶会ですって!?」

「ええ、そうなんです」

娘であるリーゼロッテも知らなかったらしい。

「驚いたわ。社交が大嫌いなお父様が、お茶会を開くなんて」

「その、そもそも貴族のご当主様はお茶会を開くものなんですか?」

「開かないわ。お茶会というのは、貴族女性の社交場だから」

「ですよね」

なぜ……? という疑問が脳裏を 過(よぎ) る。

「お父様はきっと、メルの家に遊びに行けるわたくしが羨ましかったのよ」

「そ、そうなのですか?」

「間違いないわ」

お茶会を通じて親しくなり、ゆくゆくは我が家を訪問したい、なんて考えているのだろうか。

「お父様がごめんなさいね。お断りしてもいいから」

「いえいえ! せっかくご招待いただいたので、ザラさんと訪問しようかと」

「いいの?」

「ええ」

リヒテンベルガー侯爵がいったいどんなお茶会を開くのか、少しだけ興味が湧いてきたのだ。

「目的がアメリアのデータを寄越せ! とかだったらお断りをしていたのですが」

「それはないと思うわ。きっと純粋に、あなた達と仲よくしたいのよ」

「光栄なお話です」

そんなわけで、リヒテンベルガー侯爵のお茶会に参加することとなった。

◇◇◇

お茶会当日――お土産はどうしようか話し合った結果、アメリアの抜けた羽根を束ねた花束みたいな物を贈ることに決めた。

「結局、これが一番喜ぶのよね」

「おそらくそうでしょう」

アルブムも一緒に行きたいというので、同行させることにした。

『リヒテンベルガー侯爵家ノ、スイーツモ、ナカナカオイシインダヨネエ』

「アルブム、お利口にしているんですよ」

『ハーイ!』

ちなみにアメリアはお留守番である。

今日は羽を休める日らしい。

「服装はこれでいいのかしら?」

正装ではなく、いつもの私服である。

「大丈夫ですよ!」

ザラさんは少し緊張しているようだった。

私はもう少し緊張したほうがいいのだろう。

ザラさんと私、足してちょうどいいってことにしておこう。

お迎えの馬車がやってきたので、ありがたく利用させていただき、リヒテンベルガー侯爵家に向かった。

使用人から仰々しく出迎えられ、客間へと向かう。

リヒテンベルガー侯爵は腕組みした状態で出迎えた。

「よく来たな」

歓迎されているとは思えない、強面である。

リーゼロッテが隣にいなければ、回れ右をしていただろう。

ザラさんが一歩前に出て、挨拶してくれた。

「リヒテンベルガー侯爵、本日はお招きいただき、ありがとうございました。こちら、お土産です」

アメリアの羽根束に気付いたリヒテンベルガー侯爵は、カッと目を見開く。

「それは鷹獅子の羽根か!?」

「え、ええ。どうぞ」

「いただこう」

リヒテンベルガー侯爵は目がバキバキの状態で接近し、アメリアの羽根束を受け取った。

「お父様、わたくしにも分けて」

「これは私が貰った土産だ」

「ずるいわ」

リーゼロッテの分も用意すべきだったようだ。

心の中で反省することとなった。

「はっ! お父様、こんなことをしている場合ではないわ! お客様に座っていただかないと!」

「わかっている!」

そんなわけで椅子が勧められ、腰掛けることとなった。

メイド達が登場し、次々とティーフードが運ばれてくる。

「こ、これは……!?」

アメリアの顔を模したクッキーに、一角馬の角に似たピックが刺さったサンドイッチ、竜の鱗をイメージしたイチゴタルトに、カーバンクルの額の宝石みたいなゼリー、と幻獣尽くしのかわいらしいお菓子ばかりだった。

いったいどんな顔をして、これを使用人に作るように頼んだのか非常に気になる。

味は――どれも当然ながらおいしい。

『ワーイ!』

アルブムも大喜びでお菓子を頬張っていた。

リーゼロッテの言うとおり、何か幻獣に関する目論みがあるわけではなく、単に私達をもてなしたいだけのお茶会だったのだ。

最後に、ザラさんがリヒテンベルガー侯爵に声をかける。

「リヒテンベルガー侯爵、今度はぜひ、我が家に遊びにいらしてくださいな」

それを聞いた瞬間、リヒテンベルガー侯爵の瞳がギラギラ輝いた。

初対面だったら、怯えていたかもしれない。

そんな感じで、リヒテンベルガー侯爵主催のお茶会は和やかに(?)幕を閉じたのだった。