軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

アルブムちゃんとサツマイモ掘り!

秋の味覚――それは甘芋!!

アルブムが知り合いの農家さんから苗を貰い、春先にザラさんやリーゼロッテと一緒に植えたのだ。

いくつか品種があるようで、農家さんから習ったらしいアルブムの指示のもと、世話をしていた。

『甘芋ハネエ、ヨク肥エタ畑デハナクテ、乾燥シタ、痩セタ畑ノホウガ、ヨク育ツンダヨオ』

アルブムの説明を、ザラさんは信じがたいようは表情で聞く。

「肥料すら、必要ないですって!?」

「びっくりしますよね」

なんでも、甘芋は肥料を与えると地上に生える蔓ばかり生長してしまうらしい。そのため、肥料は最低限、または与えなくてもいいのだとか。

『ソモソモ甘芋ハー、自分デ栄養ヲ、作レルンダヨオ』

「ジャガイモは肥えた畑と肥料が必要だというのに、そんな作物があったなんて」

ちなみに、甘芋は寒さに弱いらしく、ザラさんが暮らしていたような雪国では栽培に向かないらしい。

「一応、大きく育つし、食べたときの食感も申し分ないけれど、甘くならないのですって」

「甘芋と言えば、甘さが特徴ですからね」

「そうなの。王都で初めて甘芋を食べたとき、驚いたわ」

蒸したら果物のように甘くなる芋は衝撃的だった。

ちなみに甘芋は庶民の間で流行っていたようで、食べたリーゼロッテも驚いていた。

普段、果物しか口にしないアメリアも、甘芋だけは大好物なのだ。

今日は甘芋掘りを行う。リーゼロッテはズボンを穿き、髪をまとめた姿で登場した。

「今日は、やるわよ」

「おお、リーゼロッテ、頼もしい……!」

リーゼロッテのあとに続く人物に気づき、ひっくり返りそうになるほど驚いた。

農民の服装に頬っ被り姿の侯爵様である。

まさか、親子で甘芋掘りに参戦するなんて。

「こ、侯爵様、なぜここに!?」

「人の手が必要だと聞いたので、やってきた」

そんなことを言いつつも、視線はアメリアをはじめとする幻獣達にあった。なんという下心!

しっかり働いてもらおう。

そんなこんなで、甘芋掘りを開始する。

アルブムが耕したという広大な畑には、趣味の領域を超えたサツマイモ畑が広がっていた。お腹いっぱい甘芋を食べたいと望んだら、大量に苗をくれたらしい。

商売ができそうな規模である。

『サア、掘ルゾー!』

アルブムは拳を突き上げ、甘芋掘りを開始する。

手袋をはめて、スコップを握り、私達も続いた。

まず、畑は蔓と葉に覆われているので、軽く刈り取っていく。そうすると、掘りやすくなるのだ。

「このようにちまちま掘っていたら、埒が明かない。魔法で一掃する」

「だったらお父様、わたくしが魔法で」

「焼け野原となるので、お前はいい」

たしかに、リーゼロッテの炎魔法だと、地中に埋まった甘芋まで炭と化す可能性が大いにあった。

ここは侯爵様に任せよう。

「巻き起これ、 風よ(ヴィント) !」

ナイフのような鋭い風が舞い、甘芋の蔓を切っていく。一瞬にして、刈り取ってしまった。

「さすが、元国家魔法使い!」

「お父様レベルの魔法使いなんてめったにいないのだから、国家魔法使いに戻ったらいいのに」

「断る。もう、他人の組織で働きたくない」

侯爵様に幻獣保護局という居場所があってよかったと、心から思ってしまった。

蔓を掘り進めていくと、赤紫色の甘芋が出てきた。優しくスコップで掘り起こす。

「わー! 大きな甘芋が埋まっていました」

『パンケーキノ娘ェ、アルブムチャンノモ、見テー!』

「おお、一度に何個も掘り起こしたのですね」

キャッキャと楽しみながら甘芋を掘っていたのは三十分くらいだろうか。

畑が広いので、掘っても掘っても、終わらないのである。

「ええい、面倒くさい!」

作業に飽きた侯爵様は人払いをし、畑全体に魔法をかけた。

「うちふるえろ―― 地振動(ヴィブラシオン) !」

畑がガタガタと揺れて、地中に埋まっていた甘芋がひょっこり顔を覗かせる。あっという間に、魔法で甘芋を掘り返してしまった。

その現場を目にしたザラさんが、ボソリと呟く。

「やだ、農業界に革命児が生まれてしまったわ」

「侯爵様、本気で農業に取り組んだら、天下が取れそうですよね」

幻獣のために果物や野菜を育てているらしいので、常日頃からこういうことをしている可能性がある。

侯爵様、おそろしい子……!

甘芋を拾い集めたあとは、焼き芋大会と言いたいところだが、アルブムより待ったがかかる。

『甘芋ハ、熟成シタホウガ、甘クナッテ、オイシイ』

「そうなんだ」

三ヶ月ほど、倉庫で寝かせるようだ。ただ、アルブムは今日、この瞬間に食べたいらしい。

『ソンナワケデ、オ願イシマス!』

アルブムはリーゼロッテに深々と頭を下げる。なんと、魔法で熟成を促すことができるようだ。

リーゼロッテが呪文を唱え、甘芋に熟成を促す。

「――ふかまれ、 熟成(エージング) 」

甘芋は光に包まれ、魔法が甘芋に浸透しておく。

見た目は変わらないものの、しっかり熟成されているようだ。

アルブムがいそいそと焚き火を準備していた。焼き芋作りを開始するらしい。

魔法では加減が難しいので、焚き火で火の通り具合を確認しながら焼くのが一番だという。

鋳鉄製の鍋を置き、そこに甘芋を並べていく。

ひっくり返しつつ、三十分。甘芋に火が通ったようだ。

侯爵様用に、お皿とフォーク、ナイフを用意した。

リーゼロッテは遠征で慣れっこなので、そのままかぶりつけるだろう。

アルブムは火鋏で甘芋を掴み、みんなに配っていった。

さまざまな種類があるようで、私はアルブムのオススメをチョイスしてもらった。

『ジャア、食ベヨウ』

「いただきます」

まずは半分に割ってみる。眩しいくらいの黄色さだった。

ふーふーと息をひきかけてから、頬張る。

「んんん! おいしい!」

バターと生クリームが練り込まれているのでは? と思うほど濃厚でねっとりしていた。

信じがたいほど甘いのに、後味はスッキリしている。

アルブムが食べたのは、ホクホク系の甘芋。

『アー、オイシイ! 幸セ!』

これまでの苦労が報われた瞬間だっただろう。

リーゼロッテや侯爵様も、口元に笑みを浮かべながら食べていた。

ザラさんも、甘芋を絶賛する。

『タクサン食ベテネエ!』

アルブムは追加で甘芋を焼きに行く。

なんというか、感慨深い姿だと思ってしまう。人間から食べ物を奪っていたアルブムが、他人に食べ物をふるまっているなんて。

今後も、善き妖精であってほしいと願ったのだった。