軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

リスリス、ザラの実家へ行く! その十九

優しそうな、女性の声が聞こえた。パタパタと、走ってくる足音も聞こえる。

なんだか、緊張する。ザラさんも、私の家族と会うときはこんな気分だったのだろう。

とうとう、ザラさんのご両親と面会の瞬間がやってきた。

ザラさんと同じ、金色の髪に青い瞳の、きれいな人である。ザラさんは、お母さん似だったようだ。お姉さん達も、お母さん似なのだろう。行く先々で、勘違いされるのも納得である。

「ザラ、おかえりなさ――んまあ!!」

ザラさんのお母さんは、私を見て驚く。というよりは、胸に抱いた山猫の赤ちゃんを包んだ毛布に着目しているようだった。

「あ、あなたが、メルさん?」

「はい。はじめまして」

「は、はじめまして。ザラが、お世話に、なっております」

ご丁寧に、頭を下げてくれる。私も山猫の赤ちゃんを落とさないようにしつつ、会釈した。

「あ、あの、メルさん。そちらは、もしかして、赤ちゃん?」

「はい、そうなんです」

ザラさんのお母さんは即座に踵を返し、走り出す。そして、居間にいるであろうザラさんのお父さんに向かって、とんでもない情報を叫んでいた。

「お父さん、大変よ!! ザラが、ザラがいつの間にか、お父さんになっていたわ!!」

「な、なんだと!?」

思いがけない言葉に、ザラさんと顔を見合わせる。

「ザラさんの、子?」

「待って。理解が追いつかないわ」

もしかして、山猫の赤ちゃんを、ザラさんと私の赤ちゃんだと勘違いしたとか!?

たしかに、毛布の包みは、生まれたての赤ちゃんくらいの大きさだ。

「ザラーーーーー!!!!」

ドタドタと、体が大きく、厳つい顔をした男性が走ってやってくる。あれが、ザラさんのお父さんなのか。

「お前、物事には、順序というものがあるだろうがーー!! 子どもは、結婚のあとだーー!!」

「父さん、何を言っているの? 理解できないわ」

「理解できないのは、お前のほうだ! まだ結婚していない女性を孕ませるなんて!」

「いや、違――」

「しかしまあ、結婚を決意し、責任を取ろうとする姿勢は、評価する」

「もう、何を言っているのよ。ばかじゃないの……」

騒ぎで山猫の赤ちゃんが目覚めたようだ。『みゃあみゃあ』と、鳴き始める。

「お、おお……! ザラ、お前の子が、泣いているぞ」

「だから父さん、違うのよ」

「何が違うというのだ?」

「あら……! 本当に、違うわ!」

同意を示したのは、ザラさんのお母さんだった。

「ごめんなさい、お父さん。赤ちゃんは、私の勘違いだったわ」

「だから、何が違うっていうんだ」

「この鳴き声、山猫の赤ちゃんだわ!」

「ん?」

ここで、毛布から山猫の赤ちゃんが顔を覗かせる。

「山猫の赤ちゃんだと!?」

『アルブムチャンモ、イルヨオ』

アルブムも、気まずそうな表情で顔を出した。

「山猫の赤ちゃんだけじゃなく、アルブムちゃんもいた、だと!?」

「だから、違うって言ったでしょう?」

「ザラ、ごめんなさいね」

「私はいいから、メルちゃんに謝って」

ザラさんがそんなことを言うので、ご両親は私に深く深く、頭を下げたのだった。

◇◇◇

「いやはや、奥手も奥手なザラが、結婚もしていないのに、子どもをこさえるわけがないよなあ!」

ザラさんのお父さんは、ガハハと笑いながらお酒を飲んでいる。なんだか、ちょっとだけルードティンク隊長に似ているような。

「メルさん、本当にごめんなさいね」

「いえ、どうかお気になさらず」

ザラさんのお母さんは、ごちそうを用意してくれていたようだ。

レインディアの肉団子シチューに、香草串焼き、スネ肉のワイン煮込み、血のソーセージ、白身魚と丸芋のグラタンに、白身魚のまるごとパイ、キノコと白身魚のミルクスープなどなど。

「ごめんなさい、作りすぎてしまったわね」

「いえ。お腹ペコペコですので。どれもおいしそうです」

「よかったわ」

確かに多いが、アルブムがいるので楽勝だろう。アルブムはテーブルの上に並べられたごちそうを見て、瞳を宝石のようにキラキラと輝かせていた。

「では、食べようか」

ザラさんのお父さんが、ベリー酒の入った木製カップを掲げて音頭を取る。

「ザラの帰省と、辺境の地まできてくれたメルさんに、乾杯!!」

ザラさんはお酒に弱いので、一口だけと言っていたが――。

「そうなの! メルちゃんは本当に可愛くて~~~~」

たった一口で酔っ払い、いつもより饒舌になっている。

それだけだったらよかったのだが、ザラさんはご両親に、「可愛いメルちゃんとの思い出」を話し始めたのだ。

本当に恥ずかしかったけれど、話を聞くザラさんのご両親が嬉しそうなので、ぐっと我慢した。

「こんなに可愛い 娘(こ) は、世界のどこを探しても、いないと思うの~~~~!」

どうしてこうなったのか。

山猫の赤ちゃんにお乳を飲ませながら、思ったのだった。