作品タイトル不明
ヤキトリピクニック!後編
野生の山賊は、凄み顔で問いかける。
「お前ら、突然現れて、何者なんだ? ここが、ウェイウェイ様一派の縄張りだって、知らなかったとは言わねえよなあ?」
どうやらここは、山賊の縄張りだったようだ。
数は、五、六名ほどくらいか。皆、武装している本物の山賊のようだ。
それにしても、私達はどこに飛ばされてしまったのか。転移魔法が発動する前に、シエル様が焦った声をあげていた。
きっと、ルーチェがシエル様の転移魔法に干渉してしまったのだろう。
「あの、すみません。ここって、どの辺なのでしょうか? 私達、道に迷ってしまって」
「ああん? どこの世界に、ウェイウェイ様一派に道を尋ねる者がいるってんだ!!」
「す、すみませんでした、つい……あ、いいえ、なんでもありません」
「なんだよ、ついって」
「いえ、知り合いに、山賊がいたもので、親しげに話しかけてしまったなと」
「おい、それはどこの山のもんだ!!」
どこの山の者かと聞かれても、困ってしまう。知り合いの山賊は、山で活動するタイプの賊ではないので。
今度は、ウルガスが挙手して質問した。
「あの~、ウェイウェイ様っていうのは、どなたなのですか?」
「ウェイウェイ様はアジトにいる。お頭が見回りなんて、するわけがないだろうが」
「あ、そうでしたよね。うちのお頭は、一緒に見回りをしていたもので」
「な、なんだ? お前、坊ちゃんみたいなナリして、山賊なのかよ?」
「いえいえ、俺はそんな、たいそうな者ではないですよ」
「謙虚な賊だな」
賊ではありません、騎士です。なんて、言わないほうがいいだろう。
続いて、ミルが質問する。
「おじさん達、コロムク鳥ってこの辺で見かけたことある?」
「コロムク鳥だと!?」
山賊共の目の色が変わる。何やら革袋をゴゾゴゾしていると思っていたら、中に入っていた物を見せてくれた。
「どうだ、羨ましいだろうが! これが、コロムク鳥だ!」
「お、おおお!!」
コロムク鳥は本当にコロコロムクムクしていた。山賊の顔よりも大きく、食べ応えがありそうだ。
「お前達、まさか、コロムク鳥狩りにやってきたのか?」
「そうだけど」
「残念だったな。この辺りは、ウェイウェイ様の土地だ。よって、コロムク鳥狩りは、許可できない」
「ええ~~!!」
ここが、ウェイウェイ様の土地というのは、ありえないだろう。
きっと、どこかの貴族様の領地だ。
シエル様は、国内であればどこでも自由に行き来して、薬草の採取や野生動物を狩る許可を国王より得ている。だから、本当にウェイウェイ様の土地であったとしても、狩りをすることは許されているのだ。
それを、この山賊共に説明しても、理解できないだろう。
はてさて、どうしたものか。
眉間の皺を指先で解していたら、ありえない罪で糾弾される。
「お前ら、怪しいと思ったら、コロムク鳥の密猟をしようとしていたのだな!?」
「いやいやいやいや」
密猟しているのは、山賊達のほうだろう。
「おい、金目の物を出せ。さすれば、密猟に来たことを、許してやろう」
「あ、いやー、私達、金目のものはまったく持っていないんです。ほら!」
鞄の中に入っていたアルブムの首根っこを掴み、山賊に見せびらかす。
アルブムは爆睡しているので、いくらぶらぶら動かしても目覚めない。
「こんなのしか、入っていません」
「んん? それも、ウェイウェイ様の山で密猟したやつか!?」
「いえいえ、これは、私物です」
「怪しいな。おい、それを寄越せ」
「いやいやいや、これは、預かり物なので、無理ですよ」
「誰のもんなんだ?」
「怖いおじさんです!!」
山賊達はガハガハ笑っているが、アルブムのご主人様は本当に怖いおじさんなので、侮らないほうがいいだろう。
「つーかお前ら、なんで俺達を怖がらないんだよ!!」
「いや、だって」
「ねえ?」
「うちのお頭のほうが、迫力ありますよねえ?」
本物の山賊に勝ってしまう、隊長っていったい……。
「とにかくだ。命が惜しかったら」
「ギャアアアアアアアア!!!!」
野太い男の叫び声が、山をこだまする。
「あの声は!?」
「ウェイウェイ様だ!!」
「そう遠くなかった!!」
ウェイウェイ様が、何者かに襲われたらしい。山賊達はコロムク鳥の入った革袋を落とし、ウェイウェイ様の悲鳴が聞こえたほうへ走って行く。
が、続いて山賊達の悲鳴も聞こえた。
命だけはーー!! という叫びも聞こえる。
「リスリス衛生兵、これ、俺達も逃げたほうがいいのでは?」
「で、ですよね」
「お、お姉ちゃん、どっちに、逃げる?」
ミルの体をぎゅっと抱きしめながら、どうしようか考える。
すると、突然エスメラルダが私の服の裾を掴んで訴えた。
『キュキュウ!!』
「ええ!?」
「リスリス衛生兵、どうかしたのですか?」
「ウェイウェイ様と山賊をやっつけたのは、シエル様みたいです。アメリアやステラもいるとか!」
「な、なんと!!」
エスメラルダの誘導で山道を進むと、シエル様やアメリア、ステラを発見した。
山賊達は、縄でぐるぐる巻きにされている。
「シエル様~~!!」
「おお、リスリス! 無事であったか!」
「おかげさまで~~!!」
なんでも、シエル様とコメルヴは二人ぼっちで山に降り立ったらしい。私達を探していたら、用を足していたウェイウェイ様と出遭ってしまったと。
ウェイウェイ様が下半身を露出した状態で襲いかかってきたので、思わず倒してしまったらしい。ウェイウェイ様の悲鳴を聞きつけて、アメリアとステラもやってきたようだ。
「とりあえず、こやつらは密猟をしていたゆえ、騎士隊に突き出す」
「り、了解でーす」
狩猟にきたのに、山賊を捕まえてしまうとは。
ウェイウェイ様一派を騎士隊へ突き出し、事情聴取を終えたころには、すっかり夜になっていた。
麓の街は、なかなか賑やかな街だ。近くに鉱山があるので、そこそこ栄えているらしい。
買い付けにやってきた商人や貴族が、行き交っている。
「すまなかったな、コロムク鳥狩りができなくて」
「いえ、私達は騎士ですから、当たり前のことをしたまでで」
ちなみに、山賊達が仕留めたコロムク鳥は証拠品として提出してしまった。
アルブムが大粒の涙を零してしまったのは、言うまでもない。
「何か、食べてから帰ろうか」
『アルブムチャン、オ腹、ペコペコダヨオ』
もう、口がヤキトリを食べる口になってしまったが、どこかに鳥料理を食べられるお店がないものか――。
「あ、お姉ちゃん、見て! コロムク鳥の料理店があるよ」
「本当だ!!」
半信半疑で、入店する。
そこは、本物のコロムク鳥を提供するお店だった。
店主の話によると、コロムク鳥はあまりにもおいしいので、あまり余所に出荷されることはないという。そのほとんどが、この街で消費されるらしい。
勇者が好んだというヤキトリも、この街の名物だった。
「こ、これが、ヤキトリですか!」
コロムク鳥を串打ちして、大豆ソースと砂糖を混ぜたタレを付けて炙ったものらしい。
ドキドキしながら、頬張る。
「んんっ!!」
コロムク鳥のお肉は、驚くほど脂が乗っていて、柔らかかった。
タレは香ばしく、コロムク鳥のお肉との相性は最強!
どんどんパクパク食べてしまった。
ルーチェも、お気に召したようだ。
……いや、私の手料理じゃなくてもいいんかい。
まあ、好き嫌いがないのは、素晴らしいことであるけれど。
現に、エスメラルダは料理を食べようとしないし。安定安心のツンデレお嬢様だ。
アメリアとステラは、二人で仲良く果物を食べていた。微笑ましい。
アルブムは口の周りにタレを付けながら、はふはふと焼きたてのヤキトリを食べている。
『イヤハヤ、山賊狩リノアトノ、ヤキトリハ、タマリマセンナア!!』
「アルブムは、寝ていただけでしょう?」
『マ、マアネ!』
それにしても、コロムク鳥狩りをしにきたのに、どうして山賊狩りになってしまったのか。
人生は、本当に何が起こるかわからないものである。