軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

最終決戦! その二十四

『マスタ!!』

コメルヴはシエル様に抱きつき、ポロポロと綺麗な涙を零していた。

なぜか、その様子を見ていたメルヴまで泣き始める。

「メ、メルヴ、大丈夫ですか!?」

『別レハ、辛イカラ……! 別レニナラナクッテ、ヨカッター!』

メルヴも、もしかしたらこれまでに辛い別れがあったのかもしれない。

小さな体をそっと抱きしめてあげると、私にヒシッと抱きついてわんわん泣いていた。

メルヴとコメルヴの涙は、結晶化して水晶のようになる。

メルヴは自身で拾い集め、私に手渡した。

『メルヴノ涙、食ベルト、元気ニナルヨ』

「そ、そんな便利アイテムだったのですね」

ありがたく、いただいた。

「どうやら、迷惑をかけたようだな」

「いえ」

「この冑も、リスリスが持ってきてくれたのだろう?」

「はい。アルブムが、偶然拾いまして」

「そうか。感謝する」

クッキーのカスまみれのアルブムをニクスの中から取り出すと、シエル様は深々と、頭を下げる。

『エッ、何事!?』

「アルブムが冑を拾ってくれたお礼ですよ」

『アッ、ソウナンダ。ソレホドデモ~~』

シエル様を救ったのは正真正銘アルブムだが、実にゆるい返しをしてくれた。

こういうときこそ、妖精の威厳を見せてほしかったのに……。

「シエル様、その板金鎧は――?」

「私にかかっている、呪いの効果を止めるものだ」

「やはり、そうだったのですね」

リーゼロッテの予想通りというわけだ。まさか、絶対に脱がない鎧にそんな理由があったなんて。

「話していなくて、すまなかった」

「いえ……」

突っ込み時を逃していたというか、シエル様は全身鎧姿の生き物だと思い込んでいたところがあったというか。

「これを身に付けるまでになった話は、残酷故に、話すことができなかったのだ」

「そう、だったのですね」

なんとなく、これ以上触れてほしくない空気を感じた。これ以上、深く突っ込まないほうがいいだろう。

「迷惑を、かけたな」

「いえ」

「なんと詫びをしていいものか」

「こうして、目覚めたわけですし」

体は辛くないかと聞いたら、「大丈夫だ」と返してくれた。

鎧を完璧な状態でまとっている限り、呪いは発動しないようだ。

「では、皆に、報告してきますね。外で農作業をしているアリタも、呼んできます」

「すまない」

珍しく、というか、初めてシエル様はしょんぼりする姿を目にした。

冑の紛失はシエル様の落ち度ではないから、気にしなくてもいいのに。

外で待機していた皆に、シエル様が目覚めた旨を報告する。

ルードティンク隊長は話を聞くため、村長の家に入っていった。

中から、ゴッ!! という重たい音と共に、家が揺れた。加えて、「痛ってえ!!」という悲鳴も聞こえる。

天井で頭を打ったか。鼠妖精さんの家を壊さないか心配である。

「あ、そうだ。アリタを迎えにいかなきゃ。あの、ネズミさん。大きな蟻妖精が働いている、畑を知っていますか?」

『はい。存じております』

「案内してもらえますか?」

『お任せを』

「メルちゃん、私も行くわ」

「お姉ちゃん、私も」

ザラさんとミルと共に、鼠妖精の畑へ向かうこととなる。

一応、念のためにエスメラルダにも行くか問いかけたが、高速で首を振っていた。

というわけで、引き続き彼女のことはお姉ちゃん幻獣のアメリアとステラに預けていく。

「では、行きますか」

畑は村を出てすぐの場所にある。広い農園に、鼠妖精がせっせと働いていた。

小さな体だが、キビキビとした動きで収穫を行ったり、水やりをしたりしていた。

「なんていうか、のどかですね」

「癒やされるわ」

「お姉ちゃん、私、ここの村に住みたいかも」

その気持ちは、よく分かる。愛らしい妖精さんに囲まれて働いたら、きっと楽しい毎日だろう。

鼠妖精が働く畑のど真ん中で、巨大蟻を発見した。アリタである。

アリタは鍬を握り、せっせと畑を耕しているようだった。

「アリタ~~!」

『あ、あれ~? リスリスちゃんじゃん!』

アリタは鍬を片手に持ち、空いている手をぶんぶん振る。

「なんだかお久しぶりですね」

『うん、そうだね! あれ、でもなんでここに?』

「どうやら、シエル様の召喚に引っ張られて、私達まで来てしまったようで」

『そうだったんだ』

手短に、シエル様が目覚めた旨をアリタに報告する。

『よかった~~。すっごく心配していたんだ。こうして体を動かしていないと、どうにかなってしまいそうだったよ』

鼠妖精が一週間かけて耕す畑を、たった一日で耕してしまったらしい。

さすが、家まで自作しちゃうほど器用で働き者の妖精さんだ。

『あ、そうだ。鼠妖精からたくさん野菜もらったんだ。それで、みんなが元気になる料理を作らない?』

「いいですね!」

アリタは鼠妖精の村で栽培されている、珍しい野菜を見せてくれた。

『これは、甘露芋。すっごく甘いんだ。こっちは、飴南瓜。これも、びっくりするくらい甘いよ』

鼠妖精は、甘いものが大好きなようだ。

炊き出し用の大きな鍋があるというので、それを借りてスープでも作ろう。

シエル様も、食事を口にしたら元気になるに違いない。