作品タイトル不明
リヒテンベルガー侯爵家の親子参戦!?
今日は朝から遠征に持って行く携帯食作りを行っていた。
一人台所に立ち、作っているのは「ギー」と呼ばれる健康にいい油。
貴族の間で流行っているらしく、ザラさんに作り方を教えてもらったのだ。
脂肪を分解、燃焼させ、美肌効果もあるらしい。
他にも、ギーで目を洗えば眼精疲労に効果をもたらし、傷口に塗ったら治癒力が向上するのだとか。
作り方は簡単。無塩バターを角切りにして、弱火で煮込むだけ。ぐるぐるかき混ぜずに、灰汁が浮いたらそっと取る、ということを繰り返す。
バターが琥珀色になったら鍋からボウルに濾過し、粗熱を取る。
瓶に詰めてしっかり蓋をしたら、ギーの完成だ。
ただバターを煮詰めて不純物を取り除いただけなのに、健康的な油になるなんて不思議だ。
元はバターなので、卵料理と相性がいいらしい。
早速、ギーを使った料理を作る。
粉末ひよこ豆に小麦粉、卵、砂糖、牛乳、炒った木の実、ギーを入れてかき混ぜる。
まとまった生地は、ナイフで細長くカットした。
鉄板にギーを塗り、生地を並べていく。かまどで二十分ほど焼いたら、ひよこ豆のクッキーの完成だ。
ひよこ豆は肉にも負けない栄養価がある。食物繊維も豊富にあり、むくみや冷え性も改善してくれるのだ。
遠征にぴったりな一品となるだろう。
ひよこ豆の水煮も用意している。スープなどに使いたい。
一仕事終えたら、隊長に呼び出された。私だけでなく、みんな執務室に集まっていた。
何かと思ったら、リヒテンベルガー侯爵家の親子が来ていた。
「あれ、侯爵様にリーゼロッテ、どうしたのですか?」
隊長から「まずは座れ」と言われたので、長椅子に腰かける。
侯爵様は眉間に皺を寄せていた。何かあったのか。
それは隊長の口から語られることとなった。
「リヒテンベルガー侯爵とリーゼロッテ嬢が、邪龍退治に同行することになった」
「え、そうなのですか!?」
邪龍は幻獣ではなく、魔物寄りの生き物だ。ある時代では「魔王」とも呼ばれていた。
それなのに、なぜ二人が同行するのか。
「邪龍は竜が邪悪なる心に支配された存在だという研究がある」
「わたくし達は、それが本当か確かめたいと思っているの」
「な、なるほど」
いつものメンバーに加え、リオンさんにザラさん、ミル、リヒテンベルガー侯爵家の親子と、大所帯になるようだ。
回復魔法の名手である侯爵様がいると、正直心強い。リーゼロッテの魔法も、頼りになる。
「そんなわけで、人数が増えることとなった。そして、遠征日も決まった。十日後にフォレ・エルフの森を目指し、王都から出発する」
とうとう、遠征日が決まったようだ。
王都からフォレ・エルフの村まで一週間ほど。馬と馬車を使い、移動するらしい。
「ねえ、メル。アイスコレッタ家のリオン様は、竜をお持ちなのよね?」
「ええ。リオンさんは、竜で移動するらしいです」
リーゼロッテは頬に手を当て、「は~~」と熱い息を吐いていた。
侯爵様は眉間の皺がなくなり、口元が僅かに弧を描いている。
二人共、嬉しそうだ。
「それで、今日から三日間、休日とする。残りの日数で、訓練と旅支度をするように言われている」
「おお~~!」
急な話だが、隊長はメリーナさんと新婚旅行に行くようだ。
ガルさんは家族と一緒にのんびり過ごすらしい。スラちゃんも一緒だ。
ランスは王都観光をするらしい。ウルガスが案内するようだ。
ベルリー副隊長は、実家がある港町に帰省すると。
リヒテンベルガー侯爵家の親子は、邪龍についての記録をまとめてくれるようだ。
「メルはどうするの?」
「私は、そうですね。ミルを家に招いて、ザラさんやみんなでゆっくり過ごします」
「それがいいわ」
一日の仕事を終えたあと、仕事終わりのミルを捕獲し、家に帰った。
「えへへ~~、お姉ちゃんと一緒なの、久々だな~~!」
ミルはとても嬉しそうだった。休みが合わず、なかなか一緒に過ごすことができなかったのだ。
ミルが騎士になると言った時は驚いた。けれど、上手くやっているらしい。
貴重な魔法の使い手として、活躍しているようだ。
「でも、よかったの?」
「何が?」
「私、邪魔じゃない?」
「邪魔だったら、連れて帰って来ないから」
「そうだけど」
なんで邪魔とか思ったのか。実の姉に気を遣うとか、百万年早い。
「いや、ほら、ザラお兄さんと一緒に過ごさなくていいのかな~と」
「え、別に、ザラさんはいつも一緒にいるし」
「そ、そっか」
何に気を遣っているのかと思いきや、ザラさんにだった。
「ザラさんの休みは明後日だから、明日はずっとミルと一緒に過ごそうと思って」
「あ、そうなんだ。だったらよかった。明日は、お姉ちゃんと遊ぼう!」
「遊ぶって、何をするの?」
「う~~ん、追いかけっことか!」
いい歳をした姉妹が、庭で追いかけっこ。がっくりと脱力してしまう。
「なんで追いかけっこなの?」
「だって、フォレ・エルフの森で暮らしていた時のお姉ちゃん、忙しくて一緒に遊べなかったでしょう? ずっと、遊びたいって思っていたの」
「そっか」
私はランスだけでなく、ミルの気持ちにも気づいていなかったらしい。
それだけ、余裕がなかったのだろう。
「よし、明日は、くたくたになるまで遊ぼう!」
「やったー!」
そんなわけで、明日の休日の過ごし方が決まった。