軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

大茸のハンバーグと、野鳥スープ

……お父さん、お母さん、兄さん、姉さん、妹、弟達、犬、そして鳥(※伝書鳥)、元気ですか。メルは元気です。

思えば、手紙を出すのも久しぶりですね。

ミルも元気ですよ。貴重な魔法使いということで、重宝されているようです。

私も、そこそこ頑張っております。

変わったことといえば、ランスが王都まできたことでしょうか。

驚くべきことに、彼も騎士隊に入隊し、元気に……元気に……。

「おりゃああああ!!」

ランスの気合のかけ声と共に、小さな魔法陣が浮かんだ拳を魔物──大狼の額へと叩き込む。

拳から雷鳴が轟き、バチン! と小さな雷が散った。

ランスの拳から雷魔法が、大きく爆ぜる。

ドン! という音と共に、大狼の悲鳴が響き渡る。

『ギャウン!』

魔法拳を受けた大狼だけでなく、周囲にいた五頭の大狼にも感電する。もれなく、失神していた。

大狼は私達を襲う前、仲良く泥水を浴びてきていたようだ。

だが、大狼が失神したからといって、戦闘終了ではない。

止めを刺さなければならないのだ。

「弱った隙に、一気に仕留めるぞ!!」

命令したのは、山賊のお頭……ではなく、隊長である。

威勢よく「おう!!」と返事をしたのは、ランスだけだった。

「おりゃああああ!!」

隊長が、雄たけびを上げながら大狼の首を刎ねる。よくも、抵抗しない魔物を躊躇なく攻撃できるものだ。

まるで、山賊だ。

「この、死ね!!」

ランスも同じく、氷柱を生やした拳で、脳天を貫いていた。

相手の意識があろうがなかろうが、容赦しない。まるで、山賊の子分である。

隊長とランスがいるところから、血が噴き出て雨のようになっている。

これは俗に言う、血祭というものなのか。

「……ガル、私達も、行こうか」

ベルリー副隊長の言葉に、ガルさんがコクリと頷く。

ウルガスの出る幕はないようで、待機を命じられていた。

「おら! おら! 死ね!」

「滅びろ!!」

隊長とランスの戦いを見たウルガスが、ポツリと呟く。

「あの、うちの部隊、なんだか不思議と山賊度が上がりましたよね?」

その言葉に、私はすぐさま答えた。

「山賊度、上がっています。確実に」

傍で見ていたアメリアとステラも、コクコクと頷いていた。

どうしてこうなったのだと、頭を抱えることとなった。

戦闘終了後、頬に返り血を浴びているランスが野鳥と山兎を私に差し出してきた。

「ほれ」

「あの、どうしたんですか、これ?」

「大狼と同じく、俺の雷魔法で感電していたみたいなんだ。食べるだろう?」

「まあ、食べますが」

木の上にいる野鳥や、叢に身を隠していた山兎まで感電していたとは。

魔物の血を浴びていたら食べられなかったが、幸いにも綺麗な状態だ。

ありがたく、昼食の材料にさせてもらう。

何を作ろうか。そんなことを考えていたら、ガサゴソと草陰から物音がした。

「おっ、獲物がもう一匹きたか?」

ランスが腰ベルトに吊るしたナイフを引き抜き、舌なめずりをする。

やはり、彼は隊長同様山賊感がある。ただし、発言と行動だけだけれど。

見た目はエルフ特有の、整った容貌をしている。

ザラさんとは違った方向の美貌を持っているのだ。認めたくないけれど、事実だ。

彼の容姿についてはおいておいて。

「ランス、もうこれ以上お肉はいいです。食べきれないので」

「いいじゃないか。食えない獲物は持ち帰っても」

『エ、獲物ジャナイヨオ! アルブムチャンダヨオ』

出てきたのは獲物の小動物ではなく、両手にキノコを抱えているアルブムだった。

「なんだ、ヘンテコ妖精か」

『ソウダヨオ……』

アルブムはヘンテコ妖精と呼ばれても、気にしないようだ。

ランスが怖かったのか、キノコを捨てて私の足にしがみついている。

手足とお腹が泥だらけのアルブムを拾い上げ、汚れを落としてあげた。

地面に落ちているのは、秋から冬にかけて森や山の中で採れる手のひら寸法の大茸だ。

「大茸、どこにあったのですか?」

『山栗ノ木ノ下ニ、生エテイタヨ』

「へえ、そうなんですか」

よくよく見たら、背中に風呂敷を背負い、その中にも大茸があった。どうやら、人数分採ってきてくれたようだ。

偉い偉いと褒めると、『ソレホドデモ~』と謙遜する。

「お前ら、行くぞ!!」

「あ、は~い」

次の場所に移動するようだ。

私達は大狼の討伐に来ていた。なんでも、今年は異常に繁殖しており、かなり数が多いらしい。

商人や旅人が襲われているようで、被害が多発していた。

ランスを加えた我々第二部隊は、大狼を千切っては投げ、千切っては投げを繰り返していた。

戦闘をするうちに、隊長とランスの息が合っていくのが見ていてわかった。

それはまるで、山賊に子分ができたかのごとく。二人の連携は、よくなっていった。

騎士とは言葉ではなく、己の得物で語り合うものかもしれない。他の隊員とも、だいぶ打ち解けたような気がする。

よかったよかったと、言うべきなのか。

昼食の時間となり、調理を開始する。

獲物の解体は、スラちゃんに任せる。

最近、血抜きから皮剥ぎ、解体を覚えてくれた。

スラちゃんは山兎をパクリと飲み込み、まずは血抜きをしてくれる。

もぐもぐと口を動かし、ぴゅっと血を吐いた。

次に、皮を剥ぐ。スラちゃんの口の中がどういう構造をしているかは謎だが、綺麗に皮を剥いでくれた。

内臓などを抜き取り、最後に肉の部位に分けて吐き出してくれる。

続いて、野鳥も同じように解体してもらった。

「わ~~、スラちゃん! ありがとうございます!」

スラちゃんは胸を張り、どや顔でいた。

「よし! では、今から挽き肉を作って」

スラちゃんがくいくいと、服の袖を引く。

肉を寄越せと言いたいのか。

「もしかして、挽き肉も作れるのですか?」

スラちゃんはコクリと頷いた。

挽き肉まで作れるとは。天才すぎるだろう。

「しかし、どういう仕組みで加工しているのですか?」

その質問に、スラちゃんは口の中をパカっと開いて見せてくれた。

口の中には、魔法陣があった。

「なるほど。魔法で、処理をしているのですね!」

なんて便利なんだ。スラちゃん。

口の中に肉を放り込むと、数秒で挽き肉状にしてくれた。

「一家に一スラが欲しすぎる……!」

スラちゃんにありがとうと言って、調理を開始した。

アメリアとステラが作ってくれたかまどを使う。

鍋に鳥の骨と乾燥茸を入れ、スープの出汁を取る。鍋はしばらく放置。

挽き肉に小麦粉、香辛料と薬草を入れ、粘りが出るまで混ぜる。

これを、大茸の傘部分に詰め、パン粉をまぶして焼く。

肉厚のキノコなので、しっかりと火を通さなければ。

続いて、鍋の鳥の骨を出し、ぶつ切りにした鳥肉と乾燥野菜を投下。

そのままぐつぐつ煮込む。

『オイシソウナ、匂イ~~!』

アルブムがくんくんと、料理の匂いをかいでいる。

「アルブムには、一番大きなキノコをあげますからね!」

『ワ~イ!』

キノコは焦げないよう、こまめに裏返す。

スープは塩コショウで、味を調えた。

「よし、こんなものですね!」

大茸のハンバーグと、野鳥スープの完成だ。

「みなさ~ん、料理が完成しました」

いつもよりちょっぴり豪華なので、皆喜んでくれる。

手と手を合わせて、いただきます。

大茸のハンバーグは、ナイフを入れるとハンバーグの旨み汁と肉汁が溢れてくる。一口大に切り分け、パクリと食べる。

キノコの食感はコリコリ。山兎の肉は脂が乗っていて、臭みはまったくない。

「んん!」

想像以上に、おいしかった。

ランスはまたしても、おいしさのあまり語彙が少なくなっていた。

「なんだ、これ……! なんなんだ……!」

先ほどから、なんだこれしか言っていない。

一方の隊長はといえば──。

「噛むと、キノコの旨みと肉汁が極上のスープのように口の中に広がっていく。料理人が数週間かけて作る一皿のような、贅沢で手のかかった味わいを猛烈に感じる。うまい、うまいぞ!」

相変わらず、語彙が豊富だった。

ウルガスとベルリー副隊長は、スープが気に入ったようだ。

「リスリス衛生兵、今日のスープは絶品です」

「野鳥だが、淡白な味わいではなく、深いコクがある」

「良かったです」

ガルさんは、大茸のハンバーグをパンに挟んで食べていた。それを見たアルブムも、真似をしている。

『オ、オイシ~イ!!』

私も真似してみたが、驚くほどパンに合う。

そんな感じで、私達は森の味覚を堪能したのだった。