軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

新しい隊員 その五

図々しいことに、密漁者は無人島の岸に桟橋を作っていたようだ。

この辺の海中は岩がごつごつしていて、小型船でも近づくことが難しいらしい。

この辺も、ランスが魔眼を使って調べてくれた。なんとも便利な魔法だ。

「他にも、植物に毒があるか否か調べたり、果物が熟れているか調べたり、食べ物が腐っているかいないかもわかるぞ」

「羨ましいです」

「エルフだったら誰だって使える──あ、いや、なんでもない」

ランスは隊長に睨まれたので、口を閉ざし大人しくなる。

エルフの常識において、私は例外だということを早く覚えて欲しい。

「次に、リスリスに変なことを言ったら、ぶっ飛ばすからな」

「わかったよ。もう、言わない」

「どうだか」

なんだろう。隊長ってば、私のことをすごく守ってくれる。

ありがたいけれど、今までそんなことはなかったので、裏があるのではないかと心配になる。

「隊長、リスリス衛生兵のお父さんみたいですね」

「お父さん……」

そう言われてみたら、しっくりくる。

「お父さん!」

「誰がリスリスの親父だ。俺はザラから頼まれていただけなんだよ」

「あら、そうだったのですね」

人事より情報を得たザラさんが、隊長宛に手紙を送っていたらしい。

ランスの暴言から、私を守るようにと書いてあったのだとか。

「手紙が届いた時には、過保護だと思ったが──」

ランスのエルフの中での常識は、思っていた以上に強く根付いていた。

そのため、何度もツッコミを入れる結果となったようだ。

「ランス・ハント、いいか? エルフの中の常識は、ここでは非常識だ。当たり前のように語らないように」

「……」

「返事は?」

「はいはい」

「はいは一回でいい」

「……はい」

まだまだ、ランスが騎士隊に慣れるまで時間がかかりそうだ。

「あの……メル、じゃなくて、リスリス先輩」

「なんですか?」

「その、どうやって、ここでの常識に慣れたんだ?」

「慣れたというか、フォレ・エルフの常識と照らし合わせて、ここが違うんだと気づいた点を出さないように気を付けていたまでで」

「難しいな」

「まあ、最初から上手くできる人はいないと思いますし」

私だって、最初はいろいろやらかしている。

森の中での任務の際、食料を発見して確保していたらはぐれかけたり、毒草の種類を知っていることを当たり前だと思い込んでいたり。

大抵、隊長に怒られて、非常識だったことに気づいていた。

「いろいろあると思いますが、隊長に怒られながら常識を学んでください」

「あ~、くそ、どうしてこうなった!」

きっと、一年もいたら、常識を知るエルフとなっているだろう。

◇◇◇

無人島の桟橋に船は停まっていない。どうやら、密漁中のようだ。

アメリアに空から海の様子を確認してもらったけれど、密漁船らしきものは見つからなかった。

「無人島に上陸して、待ち伏せするしかないな」

海中にごつごつとした岩があるので、船を無人島近くに寄せることは難しい。

「泳いでいくか?」

隊長の提案に、ウルガスがわかりやすく表情を曇らせる。

「なんだ、ウルガス、お前、泳げないのか?」

「泳げますが、寒そうです」

雪もちらつく気候だ。寒いに決まっている。

「あの、隊長、私、泳げません」

挙手して宣言しておく。

「あ、俺もだ」

ランスも便乗して、泳げないことを告げた。

フォレ・エルフの森には足がつかないほど深い湖や川はないし、漁をすることはない。そのため、泳ぐ能力は必要としていないのだろう。

ベルリー副隊長とガルさんは、泳ぎが得意らしい。隊長も、ある程度泳げるのだとか。

「泳ぎも訓練しとかないとな」

騎士隊に水泳用の訓練施設はないが、貴族の邸宅には水泳用の池が作られているらしい。

「え、わざわざ、池を作ったのですか?」

「ああ。貴族の間では、けっこう流行っているんだよ」

夏季に限定し、涼むことを目的に水に浸かって遊ぶようだ。

水着なる、水泳用の衣服もあるらしい。

「騎士たる者、いつ、どのような状況になるかもわからないからな。水中訓練も必要だろう」

「……」

私とランスは、揃って「嫌だな」と思ったに違いない。表情がそう語っている。

初めて、ランスと気持ちが一つになった。

「まあ、今の時季は体を濡らすことは得策ではないだろう。そこで、だ。アメリア、隊員全員を岸まで運んでくれないか?」

『クエクエ!』

アメリアは胸を張り「もちろん、いいよ」と答えてくれた。

ステラは運べないので、船でお留守番となる。錨を下ろし、船が波に攫われないようにする。

まずは、隊長から運ぶようだ。バサバサと翼をはばたかせ、軽やかに飛んでいく。

「アメリアさん、最初はリスリス衛生兵やガルさんしか乗せなかったのに、今は隊長も乗せてくれるのですね」

「ええ、大人になりましたから」

「っていうか、なんでお前、幻獣と契約できたんだ? しかも、二頭も」

「家にももう一匹いますよ」

「はあ!?」

『アルブムチャンモ、イルヨ!』

鞄の中からアルブムがひょっこり顔を出して、ランスに挨拶する。

「アルブムは妖精でしょう」

『ソウダッタ!』

「よ、妖精だと!?」

「ちなみに、この子は契約していません」

「契約していない妖精が、なんでお前の鞄の中で眠っているんだよ」

「さあ? ちなみに、鞄は私と契約している妖精です。ニクスといいます」

『よろしくねん』

「うわ!! その鞄、生きていたのかよ!!」

そんな話をしているうちに、アメリアが戻ってきた。

ついでに、アメリアとステラも紹介する。

「この子は、鷹獅子のアメリア。子どもの時に出会って、ここまで育てました」

『クエ~~』

「純白の鷹獅子とか、超絶稀少じゃねえかよ」

「こっちは、黒銀狼のステラです」

『クウ』

「その犬、黒銀狼だったのかよ! めったに人に懐かないって聞いたことが! なんで懐いている!?」

よくわからなけれど、モフモフした生き物とはすぐに仲良くなれるのだ。

「なんていうか、お前、すごいよ」

「そうですか?」

初めて、ランスから褒められたような気がした。