軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

新しい隊員 その二

アメリアに跨り、ザラさんの跨る馬と並んで出勤する。私達のあとを、ステラがたったと駆けていた。

アルブムは朝食を食べたあと、眠ってしまった。そのため、手巾に包んでニクスの中に顔だけ出して詰め込んでいる。

『ウ~~ン、モウ、食ベラレナイ』

幸せな夢を見ているようだ。羨ましい奴め。

エスメラルダは今日もお留守番だ。行ってらっしゃいと、侍女さんが持つ籠の中から見送ってくれた。なんとも優雅なお見送りである。

森の中は、うっすらと雪が積もっていた。

頬に触れる風は、ちょっとした凶器である。吐く息も白い。

「本当に、寒くなったわね」

「ですね。今からの遠征が、辛くなります」

「そうね。温かくして──」

ザラさんの言葉が途切れる。いったいどうしたのか。

「ザラさん?」

「あ、ごめんなさい。私はもう、第二部隊のみんなと遠征に行けないって思ったら、寂しくなって」

「そう、ですね」

ザラさんとリーゼロッテはもういない。

寂しいけれど、これからは新しい隊員と力を合わせて頑張らなければならない。

「どんな人が来るか、ドキドキです」

「そうね」

上手くやれるか心配だけれど、どんな問題児が来ても隊長がいるから大丈夫だろう。

あっという間に、到着してしまう。

「メルちゃん、じゃあね」

「はい」

王太子の親衛隊であるザラさんの職場は、城である。ここでお別れだ。

なんだか、騎士舎までの道のりが遠く感じてしまった。

第二部隊の騎士舎の前に、ガルさんとスラちゃんがいた。

「おはようございます、ガルさん、スラちゃん! ここで、何をしているのですか?」

ガルさんは地面を指差す。氷柱が落ちていた。どうやら、騎士舎の屋根にぶら下がっていた氷柱を、落していたようだ。

どのようにしていたのか、見せてくれた。

スラちゃんがガルさんの槍に巻き付き、氷柱に手を伸ばす。手先をナイフのように鋭くさせ、氷柱を斬り落した。

「わっ、すごい! スラちゃんの手が、ナイフみたいに!」

なんでも、氷柱を見て思いついた技らしい。

さすがスラちゃんというか、なんというか。

万能スライムである。

この力は、戦闘でも使えそうだ。

と、話をしている間に、始業十分前を知らせる鐘が鳴ったので、休憩室に移動した。

アメリアとステラもついてくる。

「あ、リスリス衛生兵、おはようございます」

「ウルガス、おはようございます」

「え~っと、なんでしょう。あはは……」

「はい?」

ウルガスは乾いた微笑みを向けながら、いたたまれないような表情を浮かべていた。

その視線はなんなのか。問いかけようとしたら、続けて休憩室にやってきたベルリー副隊長より声をかけられる。

「リスリス衛生兵、おはよう」

「おはようございます」

ベルリー副隊長もまた、私にいたたまれないような視線を向けている。

ガルさんまで、何か思い出したかのようにいたたまれない表情となった。

「あれ、みなさん、どうかしたのですか?」

「よう、リスリス衛生兵!」

「んん?」

第二部隊では聞きなれない声がしたので、恐る恐る振り返る。

そこにいたのは銀色の髪を一つにまとめ、尖った耳に整った顔立ちを持つ青年──騎士隊の制服に身を包んだランスだった。

「!?」

ザラさんとリーゼロッテが抜けたあとの新しい人員は、魔法兵であるランスだったのだ。

私は反射的に叫んでしまった。

「どうしてこうなった!!」

私の嘆きに、アメリアが『クエ~~~~……』と間の抜けた鳴き声を返してくれた。

ランスはいたずらが成功した男の子のような笑顔を浮かべている。

驚きすぎて、かける言葉が見つからない。

呆然としていると、始業五分前を知らせる鐘が鳴り響く。

「朝礼だ。執務室に移動しよう」

ベルリー副隊長の言葉に従い、執務室に向かう。

ランスは口笛を吹きながら、私の前を気楽な様子で歩いていた。

隊長は今日も、険しい表情でいた。

「あ~、今日は、第二部隊に新しい隊員を迎え入れる。ランス・ハントだ」

ランスは一歩前に出て、軽く手を上げながら挨拶した。

「フォレ・エルフのランス・ハントだ。これから、よろしく頼む」

なんて軽い挨拶なのか──と思っていたら、隊長がランスをジロリと睨み、恫喝するような声色で注意した。

「おい、新入り。よろしくお願いいたします、だろうが!」

思わず「ヒイ!」と悲鳴を上げそうになるほど、怖い顔と声色だった。

しかし、ランスは隊長の鬼の形相や物言いにも気にすることなく、ケロリとしていた。

「はいはい。よろしくおねがいいたします、これでいいのか?」

「そういう問題じゃないが……まあ、いい。あとで、個人的に 教育(・・) してやるから」

隊長の個人的教育発言に、なぜかウルガスが顔を青くさせて「ヒッ!」と小さな悲鳴を上げていた。なんて繊細なのか。

なんというか、小生意気なランスがいると、素直なウルガスが可愛く見える。

「この通り、こいつは右も左もわからないひよっこ騎士だ。皆、寛大な心で接するように」

なぜ、ランスがうちの部隊にやってきたのか。

隊長が説明してくれる。

「入る予定だった騎士が、他の部隊の補充に取られてしまった。それで、代わりに送られてきたのが、こいつだ」

やはり、コロコロ変わる騎士隊の人事の関係でランスが来ることになったようだ。

続いて、ランスの能力が説明される。少々、特殊らしい。

「ランス・ハントはフォレ・エルフの魔法使いだが、魔法兵ではない」

てっきりリーゼロッテの代わりとなる魔法兵かと思っていたけれど、そうではないようだ。

「どちらかといえば、ザラの代わりだな。『魔法拳』、だったか」

「ああ、そうだ」

魔法拳──魔法剣士の拳版と言えばわかりやすいのか。

ランスは魔法を己の拳に纏わせ、戦う騎士らしい。

「へえ、知りませんでした」

「村の中では使わなかったからな。主に、魔物退治で使っていた」

ランスの意外な一面が判明する。

「そんなわけで、新しい隊員と共に、これから遠征に向かう。各自、準備するように」

隊員の補充があったので、さっそく任務が入ったようだ。

久々の遠征である。