軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

メル、社交界デビュー!? その二

ザラさんは今晩用事があると言って、騎士隊の門で別れた。

私は幻獣組とアルブムを連れ、旧エヴァハルト邸に戻る。

「っていうかアルブム、契約者である侯爵様のもとに戻らなくていいのですか?」

『ウン、平気』

それでいいのか、契約妖精。

まあ、いいか。アルブムに対して突っ込んでいたら、キリがない。

アメリアに跨り、王都の郊外にあるエヴァハルト邸に帰宅した。

王都近くの森は、すっかり紅葉している。赤や橙色に染まった葉は、とても綺麗だ。

景色に見とれていると、エヴァハルト邸の屋根が見えてきた。

アメリアは玄関先まで飛んでいき、降ろしてくれた。

「お帰りなさいませ、メルお嬢様」

大勢の使用人に出迎えられ、苦笑いを返す。

ここでの暮らしも半年以上たったが、使用人の存在にはいっこうに慣れない。

「本日はお手紙と荷物が届いております。お部屋に運んでおきました」

「ありがとうございます」

手紙と荷物か。実家からだろうか。冬支度の忙しい時に、珍しい。

「あの、リーゼロッテは戻ってきていますか?」

「いいえ、リーゼロッテお嬢様は、ご実家で社交界デビューの準備をされているそうで。しばらく戻ってこないようです」

「そうですか」

まさか、家でも会えないなんて……。

しょんぼりしながら私室に戻ると、大きな箱が五つほど積みあがっていてぎょっとする。

「な、なんですか、これは!?」

箱にはサテンのリボンがかけられている。

『クエクエ!』

『クウクウ!』

アメリアとステラが、この前購入した冬用の帽子にリボンを巻いたら可愛いのではと提案してくる。

そんなことを考える、アメリアとステラが一番可愛いよ。

『コレ、食ベ物カナ~?』

アルブムが近づこうとしたら、エスメラルダが威嚇する。

『キュッ!』

『ウワッ、危ナッ。イ、今、噛ミツカレソウニ、ナッタヨ! コ、怖~~イ!』

「アルブム、エスメラルダには近づかないほうがいいですよ」

エスメラルダのアルブムに対する対抗意識は、未だに解けていないようだ。

なんというか、仲良くしてほしいけれど、難しいだろう。なんたって、エスメラルダはお嬢様だから。

「アルブム、たぶんこれ、食べ物じゃないですよ」

『ジャア、何?』

きっと、 アレ(・・) だろう。リヒテンベルガー侯爵家で、こういう積みあがった箱を見たことがある。

箱を確認してみたけれど、すべてに『メル・リスリス・リヒテンベルガーへ』と書かれてあった。間違いなく、私宛てだろう。

サテンのリボンを手に取り、一気に引いた。しゅるんとリボンを解いて、蓋を開く。

中に入っていた アレ(・・) とは──ドレスだ。

贈り主は、侯爵様のようだ。箱の中にはドレスに靴、帽子に扇子と、貴族令嬢に必要な装備がこれでもかと詰め込まれている。

「いったいどうして、急にドレスなんか……」

嫌な予感がする。ドレスが必要な場所なんて、そう多くない。

ちらりと、手紙を見る。

宛名には『メル・リスリス・リヒテンベルガー』と書かれてあった。

こんなに分厚い紙で作られた封筒なんて、初めて触った。

裏返して見ると、蝋燭で固められたシールスタンプは王家の紋章だった。

「ヒイ!」

まだ開封していないのに、悲鳴をあげてしまった。

「こ、怖い、開封するのが、怖い……!」

『パンケーキノ娘ェ、ガンバレ~』

アルブムのゆるい応援を受けつつ、震える手で手紙を開封した。

封筒の中には、一枚のカードが入っていた。

「こ、これは……!」

『ナンテ、書イテ、アッタノ?』

「舞踏会のお知らせ、です」

どうやら、社交界デビューはリーゼロッテだけではないようだ。

私までも、ご招待された。

「た、大変なことになった……」

リーゼロッテにどうしたらいいのかと相談したかったが、彼女は実家だ。

ザラさんも、どこかへ出かけてしまった。

「うう……いったい、どうすれば……」

『クエクエ』

「あ!」

アメリアが「鎧のおじいちゃんは?」と教えてくれる。そうだ、シエル様がいるんだった。

窓の外を覗き込むと、一点だけポツリと灯りが点いているところがある。

シエル様はコメルヴとアリタと身を寄せあい、エヴァハルト邸の広大な庭で『すろーらいふ』をしているのだ。

焚火から、もくもくと煙も上がっている。

手ぶらでは行けないだろう。この前作った保存食と野菜を籠に詰め、庭に向かう。

「えっと、ついて来るのは──」

アメリアとステラは、お風呂に入りたいらしい。エスメラルダは寒いから嫌だと言われた。

まっすぐ手をあげているのは、アルブムだけだ。

『パンケーキノ娘ェ、外ハ寒イカラ、アルブムチャンヲ、首ニ巻イタライイヨ』

「それも、そうですね」

アルブムを首に巻き、庭に出ることにした。