軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

幕間 ベルリー副隊長の業務日記

〇月×日

本日、第二部隊隊舎近くに別部隊の若い騎士が立っていた。怪しい挙動をしていたので、問答無用で拘束。花を持っていたので何をしていたのかと問いただせば、リスリス衛生兵を待っていたとのこと。

どうやら、リスリス衛生兵に一方的に好意を抱き、声をかけて食事に誘おうとしていたらしい。

彼を見つけたのが私でよかった。ザラだったら、大変な事態になっていただろう。

念のため、リスリス衛生兵はリヒテンベルガー侯爵家に養子に入っているため、交際をしたいのであれば侯爵の許可を取ってからのほうがいいと教えておく。

すると、騎士は顔を真っ青にして去って行った。

さすが、リヒテンベルガー侯爵。虫よけには最適だ。

〇月△日

ガルが新しい技を練習していた。いきなり槍を投げつける。

弧を描いて飛んで行った槍は、目標に置いていた石を砕いた。

強力な一撃であるが、投げたあとどうするのか。

そんな風に思っていたら、ガルの手に槍が戻ってくる。

どういう仕組みなのか不思議だったが、よくよく見てみたらスラが槍とガルの腕に巻き付いていた。

なるほどな。スラのおかげで、手を引いたら投げた槍が戻ってくるというわけか。

訓練を積み、実戦でも使えるように頑張ってほしい。

□月▽日

ルードティンク隊長はまた婚約者と喧嘩したらしい。頬に、真っ赤な手のひらの痕が付いていた。皆の前では「あいつにとって、頬を打つのは挨拶みたいなもんだ。別に、大したことはない」と言っていたが、執務中「痛いな、クソ」と頬を撫で独り言を言っていた。

瘦せ我慢だったようだ。

ザラから、「今日は花束でも持って行きなさい」と助言を受ける。しかし、花屋に行くことが恥ずかしいと言い出した。

それを見かねたリスリス衛生兵が、騎士舎の広場の脇で育てている花を摘み、リボンで結んで持ってきた。

ルードティンク隊長は、しぶしぶ花束を受け取っていた。

翌日。機嫌がよかったので仲直りできたのだろう。

花の力は偉大なのだ。

だが、一番大事なのは、素直に謝ることだ。それができたので、仲直りできたのだろう。

これからも、仲良くやってほしい。

□月〇日

朝、ウルガスが女中から手紙をもらっている場面を目撃してしまう。

女中は頬を染め、恥ずかしそうに手紙を渡していた。

春だなと思う。

しかしそのあと、ウルガスは私のところにやってきて、手紙を差し出した。

女中から預かった手紙だと。

……その、なんだ。

申し訳ないと思った。

△月〇日

会議からの帰り。廊下を歩いていたら、女中の休憩所からアルブムの声が聞こえた。

隙間が空いていたので覗いてみたら、アルブムはクッキーを食べながら女中たちの愚痴に付き合い、『ウンウン、ワカル~~』と相槌を打っていた。

おそらく、菓子を貰う代わりに、話し相手になっているのだろう。

なんという世渡り上手な妖精なのか。

少しだけ、羨ましくなった。

△月×日

ステラが騎乗訓練をしたいと申し出てくれた。

乗せてもいいと許可を出してくれたのは、私とリヒテンベルガー魔法兵、ウルガスの三名。

ルードティンク隊長は顔が怖いから難しいようで、ザラやガルは重量がありそうなので自信がないとのこと。

三名の中で、特にリヒテンベルガー魔法兵の騎乗に力を入れたいと思っている。

訓練の当日、リヒテンベルガー魔法兵は真っ赤な目をしてやってきた。

ステラに騎乗できることが、嬉しくて眠れなかったらしい。

その幻獣大好き体質を、どうにかすることから訓練しなければならないと思った。

△月▽日

遠征部隊の総隊長がやって来る。

最近、第二部隊の指揮を参考にしたいとのことで、話を聞きにやって来るのだ。

リスリス衛生兵が茶とクッキーを持ってくる。クッキーは焼きたてであると、勧めていた。

総隊長は「女の子の手作りクッキーはよいものだ」としみじみ話しながらクッキーを食べる。店で売っている物よりもおいしいと絶賛していた。

そのあと、ザラがやってきて、総隊長に質問する。

「私が休憩時間に作ったクッキーはお口に合いましたか?」と。

総隊長は飲んだばかりの茶を噴きだしていた。

×月〇日

アメリアがエスメラルダに一生懸命何かを言っていた。

しばし眺めていたら、リスリス衛生兵がやってきて通訳をしてくれる。

なんでも、リスリス衛生兵にあまり我儘を言ってはいけないよと、諭しているようだ。

一方で、エスメラルダは別に我儘を言っているつもりはないと返す。

アメリアは、リスリス衛生兵は自己犠牲をなんとも思わない人なので、あまり頼りすぎるな。自分でできることは、自分でするようにと、自立を促していた。

リスリス衛生兵は泣いていた。アメリアがそこまで考えてくれているとは、思っていなかったのだろう。

帰ったら、思いきりアメリアを可愛がるという。

そうしてやってくれと、涙を流すリスリス衛生兵の背を撫でながら言った。

◇月◇日

終業後、リスリス衛生兵とリヒテンベルガー魔法兵と共に食事に出かけた。

一度家に戻り、着替えてから食堂へと向かう。

右にリスリス衛生兵、左にリヒテンベルガー魔法兵、という状態で歩いていたら、自然と道行く人からの注目が集まる。二人共かなり可愛い部類に入るので、仕方がない話ではあるが。

食堂では、目を光らせておかなければならない。

隙を見せれば、声をかけてくる男どもがいるからだ。

できたら個室のある部屋がいいけれど、終業後なので部屋がない場合が多いのだ。

今日は最悪なことに、席を外して支払いをしている間に男の接近を許してしまった。

リスリス衛生兵に触れようとしたので、即座に男の手首を掴んで捻り上げる。

「お前は誰なんだ」と聞いてきたので、彼女らは私の連れだと言っておく。

男はあろうことか、「チッ、二人共お前の女かよ!!」と言う。

どうしてそのような勘違いをするのか。ぽかんとしている間に、男は私の手を振り払って去って行った。

間違いを訂正する暇さえなかった。

その後、リスリス衛生兵とリヒテンベルガー魔法兵に礼を言われる。かっこよかったとも。

どうやら、しつこく絡まれていたらしい。

帰り道、リスリス衛生兵が、「なんだか怖いので、腕を組んでもいいですか?」と聞いて来る。もちろんだと言ったら、ホッとするように身を寄せてきた。

リヒテンベルガー魔法兵にも手を差し伸べると、そっと指先を重ねる。

二人を送り届けたあと、帰宅した。

翌日、ルードティンク隊長からぽつりと話しかけられる。

昨日、私を見かけた騎士がいたらしい。

両脇に美女を侍らせ、夜の街を闊歩していたと。

まさか、目撃されていたとは。

美女はリスリス衛生兵とリヒテンベルガー魔法兵で、おかしな男に絡まれて不安げだったので、身を寄せつつ歩いていたと目撃情報の訂正をしておいた。

ルードティンク隊長は明後日の方向を見ながら、「お、おう、そうだったか」と返事をする。

まったく、どうしてこうなったのか。

世の中わからないことだらけだ。