軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

王都にて

やっと戻ってきた、王都!

賑やかな街の中にいると、なんだかホッとする。

なんてことを言ったら、隊長よりツッコミが入った。

「リスリス、この喧騒の中が落ち着くって、お前、本当にフォレ・エルフなのか?」

「間違いなくフォレ・エルフですよ」

この長い耳が目に入らないのかと聞きたい。

「なんでしょう。見知らぬ場所って、落ち着かないじゃないですか」

「その気持ち、わからなくもない」

ベルリー副隊長も同意を示してくれた。

「こうして皆が平和に生活している様子を見ると、安心する」

「それだったら、俺もわかります」

ウルガスも同意していた。

そうなのだ。

魔物が出現する森の中や見慣れぬ遠征先は、どうにも胸がざわつく。

この街は、私にとって平和の象徴なのかもしれない。

リーゼロッテがポツリと呟く。

「だとしたら、街や人を守る私達って、すごい仕事をしているのかもしれないわ」

「ええ。その通りよ、リーゼロッテ」

ザラさんは言う。騎士とは崇高な職業であると。

私は、騎士をしている自分が誇らしくなった。

「だったら、平和を継続するために、こいつを牢屋にぶっこまないとな」

しんみりしていたところに、隊長のこの一言である。

デイ・ユケルは縄で繋がれ、隊長がしっかり拘束しているのだ。

「俺とベルリー、ガル、ウルガスはとりあえず、一度騎士隊に戻って報告をする。リスリス、リヒテンベルガー、アートは幻獣保護局に行け」

その決定に、ウルガスはしょんぼりしていた。幻獣組に加わりたかったようだ。

「ウルガス、なんか文句あるのか?」

「いえ、ぜんぜんないです」

「だったら行くぞ」

「了解です」

ウルガスは肩を落とし、デイ・ユケルのあとに続いてトボトボ歩いていた。

いや、犯罪者のあとを歩いたら、ウルガスまで連行されているみたいに見えるんだけれど。

まあ、内心的には連行されるようなものかもしれない。

合掌。

「メルちゃん、私達も行きましょう」

「ええ」

ザラさんとそんなやりとりをしていたら、リーゼロッテの様子がおかしいことに気づく。

カッと目を見開いて、私を凝視している。

「あの、リーゼロッテ、どうかしましたか?」

「え、だって、いいの? 幻獣保護局って、幻獣保護局よ?」

「ええ、わかっていますよ」

そういえば、今まで散々お世話になっておきながら、幻獣保護局の本部に行ったことはなかった。

「何か、お菓子とか買って持って行ったほうがいいですか?」

「いえ、いいの。そんなのぜんぜん、いいから」

だったらなぜ、リーゼロッテはこんなにもあたふたしているのか。

気になるので聞いてみた。

「だ、だって、幻獣保護局は、アメリアを保護した時に、メル達に酷いことをしたでしょう?」

「ああ、ありましたね。そんなことが」

もう、遠い日の記憶のように思える。

あれは本当に、酷い目に遭った。遭ったけれど、そのあと、幻獣保護局の人達──局長である侯爵様は誠意を見せてくれた。

だから、綺麗さっぱり水に流している。

「ごめんなさい。本当に、謝っても謝りきれないことだと思うの」

「私だけのことではないので、気にしないでくださいとは言えませんが、こういうのって、あとからの対応のほうが大事だったりするんです」

自分が悪いのはわかっているのに開き直っておざなりな対応なんかしたら、絶対に許せなかっただろう。

「その辺、侯爵様はきちんとしていたので」

「メル……ありがとう」

「だから、幻獣保護局に行くのは──」

アメリアのほうを見る。「別にいいよ」って言ってくれた。

「問題ありません」

「そう。よかったわ。あなた達が来てくれたら、みんな喜ぶから」

なんでも、幻獣保護局の定例会議の中に私を幻獣保護局に招待する案が話し合われていたらしい。

「食事会だったり、舞踏会だったり、さまざまな催しが企画されたけれど、お父様が許可を出さなかったの」

幻獣保護局のしたことは許されていない。そのため、誘っても断られるだろうと。そんな判断をしていたらしい。

「なんてことを話し合っていたんですか」

「ごめんなさい」

「いえ、そうではなく……。誘っていただけたら、いつでも行ったのに」

「え?」

「私、幻獣保護局の方々には、感謝をしているのですよ」

だって、アメリアやステラがこの王都で快適に暮らしていけるのは、幻獣保護局のおかげだから。

「今日、みなさんにお礼を言わないとですね」

「メル、ありがとう」

「いえいえ。日が暮れないうちに、急ぎましょう」

その前に、リーゼロッテからこのままでは行けないと言われる。

「たぶん、アメリアやステラを見て鼻血を噴く人がいるのは仕方がないとして、 魔石獣(カーバンクル) なんか見たら、失神者がでると思うの」

「え?」

それだけ、希少種の幻獣を見せることは大ごとになるらしい。

「だから、エスメラルダのことは、姿が見えないように運んだほうがいいかなと」

「な、なるほど」

エスメラルダはずっと私が抱えているんだけれど、このままでは危ない事態になるようだ。

一応、入れ物ならニクスがいる。ダメ元で聞いてみた。

「エスメラルダ、ニクスの中に入ってはくれないですよね?」

『キュウッ!!』

一言、「イヤ!」とのこと。まあ、予想はしていたけれど。

ニクスは気にしていないようだからいいけれど、なんというツンツンお嬢様なのか。

初めての事態なので、戸惑ってしまう。

アメリアとステラを見る。二人とも「困ったね~」みたいな表情を浮かべていた。

途方に暮れていたら、ザラさんが助言してくれた。

「メルちゃん、だったらそこの雑貨屋で何か買っていく?」

「ええ、そうですね」

「ご、ごめんなさい。幻獣保護局支払いにするから」

そんなわけで、雑貨屋でエスメラルダが入る籠を捜し、その中に入ってもらうことになった。

しかし、このお嬢様幻獣はそのままの籠には入らないと言い張る。

あれやこれやと試行錯誤した結果、 天鵞絨(ビロード) の襟巻を籠の中に敷いた状態にしたら入ってくれた。

なんて手のかかる幻獣なのか。

「しかし、魔石獣なんか連れて行ったら、侯爵様も驚くでしょうね」

「そうかしら? お父様、この前、メルが突然竜を連れてきてもぜんぜん驚かないと言っていたわ」

「さすが侯爵様ですね!」

と、そんな話をしていたが──幻獣保護局で侯爵様に魔石獣を保護した旨を報告し、実際にエスメラルダを見せた途端、大変な事態となった。

侯爵様は鼻血を噴き、その場に失神してしまう。

「だ、誰か~~、衛生兵、衛生兵って、私がそうでした!!」