軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

衝撃の事実 その二

とんでもない対策に目を剥く。

竜と契約するだって!?

「でも、竜との契約申請って通らないんじゃないですか!?」

先ほどリーゼロッテが竜を悪用し、謀反を起こした者がいたという話を聞いた。だから、許可なんて下りないだろう。

「まあ、許可が下りた例はない。しかし、私は国に貸しがある。その辺はどうにかなるだろう」

竜の使役許可を力づくで承認させるようだ。

「それに、お前は国に忠誠を誓う騎士だ。その点は考慮されるだろう。だが、どこかの貴族と縁を結んでいたほうがいい。騎士隊の組織以外に、守ってもらえる存在が必要となるだろう」

それは薄々感じていた。

アメリアだけでもちょっと心配だったんだけど、ステラとも契約してしまった。私を利用しようと考える者はこの先きっと現れるだろう。

最適なのはリヒテンベルガー侯爵家を頼ること。わかっているが、なかなか言い出せない。

養子になると、家族とも縁が切れてしまうような気がして悲しくなる。

しかし、アメリアとステラとの平穏な生活のため、決断しなければならない。

「望めば、いつでも相応しい相手を紹介してやる」

「ありがとうございます。その辺は、もう少しだけ考えさせてください」

まだ答えは出せない。一回、ミルとも話をしてみようと思う。

両親はなんて言うか。

能天気な二人なので母は「お言葉に甘えちゃいなさいよ~~」、父は「よっ、玉の輿!」とか言いそうだ。

ここでハッとなる。

もしや、貴族と縁を結ぶとは養子ではなく、婚姻のことなのか。

気になったので、侯爵様に質問してみた。

「あの、侯爵様」

「なんだ?」

「貴族と縁を結ぶとは、結婚することでしょうか?」

「私はそのつもりで言っていた」

「ええっ!」

「もう、結婚適齢期だろう」

お父さん、そんな……! と言いそうになった。

ちなみに、お隣の娘さんも私と同じ十八歳で結婚適齢期ですがどうなっているのですか、と侯爵家の家庭事情が気になってしまった。

「そもそも、お前への結婚の申し入れは以前から届いていた。なぜか私宛に」

「まさかの!」

ほとんどは幻獣保護局の方々だったとか。

まあ、あれだ。幻獣に嫁が付いてくるみたいな。

「下心が見えていたので、勝手に断っていたが」

「ありがとうございます……本当に」

しかし、結婚の申し入れは幻獣保護局の局員だけではなかったらしい。

「騎士団関係者からも数名届いている」

「え~っと、こちらはいったいどうして?」

「さあな。調べたが、この辺の輩は幻獣に興味はないだろう」

「メルを見初めたのね!」

「ま、まさか!」

「別に、おかしな話ではないわ。あなた、可愛いもの」

「へ!?」

リーゼロッテの言葉に固まってしまう。

私が可愛いだと!? ありえない。

「可愛くなかったら、なんでメルに結婚を申し込んだのよ?」

「いや、フォレ・エルフが珍しかったんじゃ?」

「それだったら、結婚じゃなくて、愛人にするでしょう?」

「愛人!!」

貴族には一人や二人、愛人がいることが当たり前らしい。夫婦共々、侍らせていることは珍しい話でもないとか。なんてこった。

「お父様はお母様一筋だから、うちに愛人はいないけれど」

ここで、侯爵様が大きく咳き込む。聞いてはいけない話だったようだ。

「ともかく、相応しい相手がいたら紹介する」

幻獣を愛し、竜や鷹獅子、黒銀狼が自由に暮らせる広大な土地を持っていて、私を守れる力を持った家があったら、紹介してくれるようだ。

「幻獣だけが目的の家には嫁がせない。きちんと、フォレ・エルフの娘を真剣に妻として迎える者を紹介したいと考えている」

「お、おお……!」

なんだろう、この「娘はお前にやらん!」的な侯爵様のお父さん感は。

他人の娘に、ここまでしてくれる人はなかなかいないだろう。

「ねえ、お父様、やっぱり、メルはうちで引き取るしかないのでは?」

リーゼロッテは一人っ子だから、妹がほしいと言う。

「メルのことは大好きだし、お母様だって喜ぶと思うの」

っていうか、同じ年なのに私が妹なのか。なんとなく解せない気持ちになる。

リーゼロッテは熱い訴えを続けていた。

「幻獣達が暮らす環境は、侯爵家以上の場所はないわ」

「それは――私もそう思うが、本人が望まない限りはどうにもできん」

私と侯爵様の間には溝がある。それは、時間が経っても埋めることはなかなか難しいだろう。

「侯爵様には、いろいろ尽力してくださり、感謝をしています。先ほど言った通り、考える時間をいただきたいなと」

「しっかり考えて、答えを出せ。難しいことだとは思うが」

「はい……」

自分を守る足場が完成したら、竜と契約ということになる。

「しかし、竜っているのですか?」

「国内では二世紀ほど、目撃情報はない。他の国では竜を使役している家もあるというが、古い魔法使いの一族だ」

二世紀ということは、二百年!?

まさに、伝説級の幻獣なのだ。

「あの、竜と契約することは無理なのでは?」

「いくつか竜について情報を握っている」

「お父様、竜の噂話や情報収集が趣味なの」

それはまあ、良いご趣味で。

いろいろとアテがあるので、その辺は心配しないように言われた。

「そういえば、お前のところの村にもあるだろう? 竜の伝説が」

「へ?」

「知らないのか?」

「知りません、そんなこと!」

侯爵様は十五年ほどまえに入手したフォレ・エルフの村の伝説を語って聞かせてくれた。

「遥か昔、世界を恐怖へと陥れた邪悪な竜がいた――」

幾多の国を滅ぼし、世界は瞬く間に壊滅状態となった。

絶望に包まれた中、異世界より勇者が召喚される。

「勇者はなんとか邪悪なる竜を倒し、強い結界を施したフォレ・エルフの森に封じた」

「あ!!」

邪悪なる竜の存在に心当たりがあり過ぎて、ついつい叫んでしまう。

「どうした?」

「い、いや……村に、 ある(・・) んです。何かを封じている、祠が。村では百年に一度高い魔力の者を生贄に捧げて――どうしているのかわかりませんが……」

大精霊とか神聖な存在として祀っていたのに、まさか邪悪な竜を封印していたとは。

恐ろしくなって、ガタガタと震えてしまう。

「しかし、生贄はどういう風に使われていたのか……」

結界の強化か、邪悪なる竜を鎮めるために使われているのか。

「その辺は、妹のほうが詳しいかもしれません。巫女をしていたらしいので」

「そうか。一度、聞いたほうがいいだろう」

「ですね」

……もうなんだか、いろんな話を聞きすぎて頭の中が大混乱だ。

今日は帰ってゆっくり休もう。

「メル、今日は泊まっていったら? もう、外も暗いし」

お菓子作りをして、ここで話をしている間に、すっかり暗くなってしまった。

「ありがとうございます。でも、アメリアとステラがいるので大丈夫です」

『アルブムチャンハ……?』

今まで大人しくしていたアルブムが、足元にやってきて私を見上げながら言ってくる。

ちょっと罪悪感を覚えたものの、ぷっくりと膨れているお腹を見ていたら我にかえった。

「アルブムは減量を頑張ってくださいね」

『ダヨネ』

アルブムはしょぼんとしながら、侍女さんが用意してくれた籠に入って丸くなる。

なんだその、減量は明日からみたいな雰囲気は。今日、今この瞬間から頑張れ!

「あ、そういえば、エヴァハルト夫人はどうしたのですか?」

ノワールだけここにいるけれど、別室で過ごしているのか。

「お祖母様、お父様に相談をしているうちに具合が悪くなってしまって、眠っているわ」

「そう、だったのですね」

使用人には侯爵家に泊まると手紙を送っているらしい。

「伯父様とのもめ事でお疲れになっていたみたいで」

「お気の毒に……」

たぶん、血縁関係にないザラさんに屋敷を譲ったり、ノワールの契約を頼んだりしたことが問題になっているのだろう。

「お父様が良いように取り計らうから、心配いらないわ」

「はい」

とりあえず、今日は帰ろう。

侯爵様とリーゼロッテにお礼を言って、侯爵家を出る。

アメリアに乗って、エヴァハルト伯爵邸まで戻った――が。

「え!?」

驚きの光景が広がっていた。

エヴァハルト伯爵邸の門に有刺鉄線が張られていて、中に入れないようになっていた。

さらに、門から吊るされている一枚の板にとんでもないことが書かれている。

――売家、と。