軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「――――何だって? 今、〝ガラ〟って言った?」

翌日、さっそく長門と二人きりで、例の〝ガラ〟についての情報交換を行うべく、先日体験したことを彼に話したのだが、何故か信じられないといった表情を見せてきた。

「言ったけど……何だ? そんなにヤバイ奴ってことか?」

「……そうじゃない。いや、そうでもあるんだけど……」

「何だよ。気持ちの悪い言い方するなって。その〝ガラ〟って結局どういう存在なんだ?」

実際のところ、《アイテムボックス》のお蔭で〝ガラ〟の正体は知っていたが、確認の意味でも長門に尋ねた。

「……僕が知ってる〝ガラ〟ってのは、いわゆる君たちが今まで戦ってきた妖魔とは違い、人工的に造られた妖魔なんだよ」

その言葉に《アイテムボックス》の情報が正しいことが分かった。

「人工的……ね。つまり誰かが造ったってことか。それは誰?」

「…………」

「羽竹?」

「! ……ああ、悪い悪い。ちょっと厄介なことになったと思ってね」

「どういうことだ?」

「確かに【勇者少女なっくるナクル】には〝ガラ〟って存在は出てくるし、君に聞いた通りの外見もしている。ただ……」

「ただ?」

「…………ゲーム版に出てくるだけの存在なんだよね」

「は? ゲーム?」

「前にも言ったろ? 【勇者少女なっくるナクル】は大人気コンテンツで、漫画原作だけじゃなくて、アニメ、映画、そして……ゲーム化もしてるって」

「ああ……つまりゲームだけのオリジナルキャラクターってこと?」

その問いに長門は大げさに肩を竦めながら頷いた。

彼の言う通りならば、それは本編の原作には登場しない。ゲームではそのほとんどがIFの世界観で描かれるらしい。ナクルを主軸として、あの時彼女が別の選択肢をしていたらという流れが生む別の世界。それがまた新感覚ということで人気を博してシリーズ化していたとのこと。

「それにしてもよりにもよって〝ガラ〟……ねぇ」

「そのゲーム版じゃ、どんな役回りなんだ?」

「さっきも言ったように人造妖魔としてナクルたちの前に立ちはだかる存在さ。確か設定ではダンジョンコアの欠片から生み出された〝不完全な妖魔〟らしいけどね」

「不完全な妖魔?」

「君はさっき言ったろ? 〝ガラ〟が灰化したってね」

「ああ、言ったな」

「〝ガラ〟ってのは文字通りダンジョンの化身みたいな存在でね。こっちの世界じゃ、その存在を確立できていないらしいんだ」

「……あーつまり、普段はダンジョン内の存在だから、こっちの世界じゃ存在を保てない?」

「保てることは保てる。ただ、エネルギーを使い過ぎると、その負担に器が崩壊してしまうってこと」

「なるほど。ていうかコアから妖魔って造れるものなのか?」

「普通は無理だね。けど、原作の中でもかなり厄介なヤツがいるんだけど、そいつだけが使うことができる妖術で造り出したんだ」

「妖術……」

「簡単に言えば妖魔人が扱う力のことさ」

「! じゃあエーデルワイツって妖魔人が使ってた茨も?」

「そういうこと。妖魔人にはそれぞれ固有の妖術が備わっててね。妖魔力ってエネルギーを駆使して扱うことができる。まあ、ナクルたち勇者が持つブレイヴオーラみたいなものかな」

「つまり妖魔人だけの特別なオーラみたいなものか」

その解釈で合っていたようで、長門は「まあね」と短く答えた。

話を聞けば、妖魔とはその妖魔力が結集したものだという。

「ちょっと待て。その〝ガラ〟ってのはコアでできてるんだよな? じゃあ妖魔じゃないってことだろ?」

何故ならコアが妖魔力で構成されているという話は聞いたことがない。

「ああ、コアそのものは妖魔力とは無関係さ。〝ガラ〟は、コアのエネルギーと妖魔力を掛け合わせて造られてるんだ」

「……そんなこともできるのか?」

「普通は無理。だけどその厄介な妖魔人ができるってだけさ」

「ふぅん。ずいぶんと面倒なことをしてくれるなソイツ。一体どんな奴なんだ?」

「名前は――クロゴロモ。妖魔人の中でも立場的にはリーダーみたいな感じかな」

「黒幕みたいな?」

「そこまでは……いや、どうだろうな」

「知らないのか?」

「……前にも言ったっけ? 【勇者少女なっくるナクル】は大長編で、まだ完結してないって」

「あーそんな話も聞いたな」

壬生島このえからもそう聞かされていた。

「ナクルたちがクロゴロモと戦うこともあるんだけど、決着はしてないんだよ。というか、決着前に僕はこっちの世界に来ることになったからね」

つまり彼やこのえは、原作完結の前に転生したということ。それは最終的な結末を誰もしらないという話だ。

「第四期が終わって、いざ最終期が始まるってとこだったんだけどね。最後まで見ることができなくて、そこだけは悔いが残ってるね」

本当に残念に思っているのか、深い溜息を零す長門を見て、沖長もまたその気持ちは理解できた。

沖長も大好きな連載漫画というのはあった。それもまた長編であり人気なコンテンツだったが、できれば最終話をこの目にしたかったという思いはやはりあるからだ。

「ん? ということは第五期で【勇者少女なっくるナクル】は終了だったわけか?」

「一応公式からは最終シリーズって話だったしね。もっともスピンオフ作品とかいろいろあるから、あくまでもナクルの物語としては終わりってことだろうけど」

「なるほどね。というかやっぱこの世界は、本編だけの物語が流れてるわけじゃないんだな」

「……みたいだね。まったく、本編だけじゃなく読み切りや映画、そしてゲームまでごっちゃになってるなんて……」

長門が頭を抱えたくなるのも分かる。大筋は本編通りに進んでいるようだが、IFの世界が結合しているとしたら、これから先、原作知識が役に立たなくなる可能性が大いにあるからだ。何がどう絡んで、どんな結末を生むのか予想しいくいからだ。

(……先が読めない未来か。けどま、それが普通……なんだよな)

そんな当たり前なことを思いつつ、それでも不安が胸に膨らみつつ、今後の展開を長門と話し合うことにしたのであった。