作品タイトル不明
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特徴的な好戦的な吊り上がった瞳。それが真っ直ぐナクルたちが立つ戦場へと向けられていた。そんな彼女――火鈴が何故ここにいるかと沖長は疑問に浮かぶ。
「何でココに……?」
自然と出た言葉に対し、火鈴は若干面倒臭そうにしながらも答えてくれた。そしてその内容を聞いた沖長はさらなる疑問を口にする。
「……匿名の電話?」
「みたいだぜ? アタシもよく分からねえけど、少し前に【異界対策局】の本局に通報が入ったみてえでな。んで、ちょうどこの近くに仕事で来ていたアタシがその対応を任されたってわけだ」
ダンジョンに関してだが、これは周知されていない。何故なら国指導のもと情報を秘匿されているからだ。故に、ダンジョンはもとより、【異界対策局】の存在自体も公にはなっていないので、一般人が直接通報できるわけがないのだ。
(しかもこんなタイミング良く通報がいった? こっちはお蔭で助かったけど……)
何も知らない一般人ではないはず。もしそうだとするならまず警察に通報がいくだろうから。それが直接【異界対策局】へ通報されたということは、間違いなくダンジョンのことやその周辺に関わる諸々の事情を知っているはずだ。
一体誰がわざわざ……?
そんなことを思ったが、すぐに今はそのような疑問を解決する場合ではないので頭を振って思考を切り替えた。
「へぇ、あのウサギ娘、ちょっとはやるようになったじゃねえか。それに新入りもいるみてえだしよぉ」
火鈴の言うウサギ娘とはナクルのことだろう。そして当然雪風の存在も知られた。
「けどあれじゃ、決定打に欠けるな。もう一人は勇者じゃねえみてえだし」
沖長が思ったことと同様のことも、一目見て彼女は判断したらしい。それだけ戦闘経験が豊富だということが分かる。
「ま、ココまで来てただ見てるってのもつまんねえし、えっと……確か……」
「札月沖長だよ」
「あーそうだったそうだった。オキナガな、オキナガ。んでオキナガ、アレ……アタシが潰してもいいか?」
「え? あー……こちらとしては助かるけど」
「んじゃ、サクッと片付けますかね」
すると彼女の身体からジワジワとブレイブオーラが溢れ出てくる。
「――〝ブレイブクロス〟」
口角を上げながら火鈴が呟いた直後、眩い光が彼女を中心にして広がっていき、その光の中から真紅の鎧を纏った彼女が姿を見せた。
前にもこの姿は見たことがあるが、改めてそこに立っているだけで存在感が強い。まるで常に周囲を威圧しているかのような圧迫感が伝わってくる。加えて燃えるような熱量もまた雄々しさとともに感じる。
「ん? 何だよジロジロ見やがって」
「あ、悪い。その姿、勇ましいなって思って」
「当然だぜ! これがアタシの勇者としての姿――〝レッドタイガー〟だからな」
名前もいかつい。確かナクルは〝ホワイトラビット〟って名前だったはず。それこそ勇ましさでいえば火鈴の方が相応しく思える。
「戸隠さん、ナクルたちを頼むよ」
「火鈴でいい。苗字はあんまり好きじゃねえしな。んじゃま、先輩としてカッコ良いところを見せてやっか!」
少し屈んだ火鈴が、すぐにその場から跳躍しその場からデュランドの頭上へと近づいた。
そんな火鈴の存在に気づいたナクルたちがギョッとする。
「お前らぁっ、何をチマチマしたやり取りしてんだ! こういう相手にはこうするんだよ!」
刹那、火鈴の全身から発せられているオーラが変質し炎へと形を変えた。そして彼女がその炎を両手に集束し、そのまま合わせるように組んだ。同時に凄まじいエネルギーが彼女の組まれた両手に集まっていることが見て取れた、
「!? ナクル、そこから離れなさいっ!」
「え? あ、わ、分かったッス!」
何かを察した蔦絵の忠告により、二人はすぐさま距離を取る。その際に蔦絵は、雪風を横抱きにして一緒に離れていった。
デュランドも異常な熱を感じたのか、頭上にいる火鈴の存在に気づいて顔を向ける。
その間にも火鈴は、すでに攻撃準備は整っていた。組んでいた両手を、力を溜め込むように右腰付近へと引き寄せる。
「オイ、骨野郎! コイツは燃えちまうぜ! くらいやがれっ――《虎炎咆哮》っっっ!」
同時に開いた両手を前方に突き出すと、そこから大口を開けた虎を模したような炎の塊がデュランドに向かって放たれた。
回避する暇はない。気づくのが遅かったことと、その攻撃規模によりデュランドにはその身で受けるしか手段はなかった。故にダメージを最小限に抑えようとしてか、長い両腕で炎を受け止めるためにグッと伸ばす。
衝突する炎と骨。幾ら硬度が高いとはいえ、相性は些か炎の方が軍配が上がる。受け止めたものの、炎は徐々に骨を削り燃やしていく。
「ウグッ…………ヌグゥゥゥゥ……ッ!」
苦悶の声を絞り出しているデュランド。そしてそんな攻防を見ていた沖長は素直に驚嘆していた。
「す、すげえ……これが第二次覚醒を果たした勇者の力か」
すでに火鈴が二回目の覚醒を果たしていることは知っていた。あの炎がその証拠。そしてその威力に開いた口が塞がらない。あれだけ苦戦していたナクルとは違い、火鈴の攻撃力は圧倒的であり、デュランドもまた今にも崩れ落ちそうだ。
「アタシの炎を舐めんな! さっさと燃えちまえっ!」
まだ火鈴には余裕があったのか、さらに膨れ上がったオーラが炎に上乗せされる。一層巨大化した炎塊は、デュランドの両腕を灰と化し、その先に待つ肉体へと襲い掛かった。
炎に包まれ声にならない声を上げて暴れ回るデュランドだが、その炎は少しも弱体化せずに纏わりついている。
そして地面に降り立った火鈴が、人差し指を立てた右手を天へ掲げ、ゆっくりとデュランドの方へと降ろして一言。
「――――《バーニング・エンド》」
同時に炎に包まれたデュランドを中心に爆発が起きた。
爆炎の中から無残に砕かれた骨の欠片が飛散していく。
「……これが……本物の勇者……!」
その光景を見て、誰にも聞こえないような声でナクルは呟いていた。