軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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その日は日曜日、朝食が終わり少しまったりした時間を過ごしているような頃だった。

もう何度か感じていたダンジョンの発生気配。しかし今回はそれがより濃密なものであることが伝わってきた。

同時に、スマホには数人から報告が入る。ナクルを筆頭として、蔦絵、長門、千疋、そして水月までもがダンジョンの気配を察知したようだ。

(この強烈な気配……確かに今までのダンジョンとは別物みたいだな)

言葉にするのは難しいが、この感覚は間違いなくハードダンジョンであることを示していた。

(さて、どうしたものかな)

長門との話で出たように、挑む挑まないはこちら次第だ。

するとナクルから着信があり応答する。

「よ、ナクルも気づいたみたいだな」

『はいッス。それで……どうするッスか?』

「ナクルはどうしたい?」

『う~ん……ダンジョンブレイクが起きたらたくさんの人が迷惑するッスよね?』

「まあな。妖魔がこっちに出てきたら、対抗できる手段は限られてるだろうし。けど俺たちが向かわなくても【異界対策局】が対処すると思うぞ」

『……そうッスよね』

「何だ? 何か言いたいことでもあるのか?」

『ううん、オキくんが行かないって言うならボクも行かないッス。けど……』

「けど、どうした?」

『何ッスかね……こう呼ばれてるような気がして』

呼ばれてる……?

それはもしかしたら原作の修正力というものだろうか。本来ならハードダンジョンに挑むのはナクルと水月だ。けれどナクルは沖長が行かないなら向かうつもりはないと言う。

つまりこのままでは原作とはまったくかけ離れた流れになるだろう。それを良しとしない何らかの力が働いているのだとしたら……。

(まあ、修正力うんぬんも俺の勝手な考察だけど)

ただそうとしか思えないような状況が続いているせいか、やはりそういった不可思議な力が働いているような気がするのだ。

「いいか、ナクル。挑むことになったとしても、絶対に一人で行っちゃダメだからな」

『とーぜんッス! 蔦絵ちゃんやお父さんにも同じこと言われてるッスから』

そうだ。原作とは違い、彼女の傍には頼りになる家族という存在がいる。特に圧倒的実力者である蔦絵はダンジョンにも入れるので、いざという時は彼女がナクルを支えてくれるはず。

(でも心配なのは確かだな。一応俺もナクルの傍にいた方が良いか)

そう判断し、リビングで寛いでいた両親にナクルのところに行ってくると言って外出した。

その間に、今度はこちらからある相手に電話をかける。

『――もしもし、ダンジョンの件かのう、主様よ』

出たのは千疋だ。彼女に頼みたいことがあった。

「急に悪いな。今、手は空いてるか? 空いてるなら――」

『水月の安否を確保してほしいと?』

「! ……よく分かったな」

『主様の過保護ぶりは理解しておるからのう。どうせそちらは日ノ部の小娘の方へ向かっておるんじゃろ?』

どうやらこちらの動きは彼女には筒抜けのようだ。ここらへんは経験の差ということだろうか。

「まあ九馬さんが一人で動くとは思えないけどな。でもこの機にユンダが動くってことも考えられる」

『ふむ。このえは家におれば安全じゃし構わんぞ』

「頼む。いつも悪いな」

『なぁに、ワシは主様の従者じゃ。好きに使えばよい』

こちらはそうは思っていないが、こういう時は本当にありがたい存在なのは違いない。

修正力が働いているなら、水月にもその手が伸びる恐れは十二分に有り得る。だから現最強の千疋を護衛につければ問題はないだろう。

「よし、これであとは俺がナクルのとこに――」

するとその時、突然目の前に人が現れ立ち塞がった。その人物を見て、沖長は思わず表情を強張らせてしまう。何故ならそこにいたのは――。

「………………ヨル」

以前、水月と一緒に公園に立ち寄った際に出会った少女だった。

偶然、と考えるのは甘いだろう。ダンジョンが発生し、沖長が一人で行動しているところに、人気もないこの場所で偶然に遭遇した。それを偶然だと断ずるほど、沖長は甘くはなかった。

「……確か前に会いましたよね? こんなとこで何をしてるんです?」

身構えつつ質問を投げかけた。

対してヨルは自然体で、こちらに顔を向けたままだ。目元は前と同じように赤い包帯で覆われているが。

「……お前に用がある。一緒に来てもらいたい」

「あいにく、こっちも忙しいんで。また今度にしてもらえるとありがたいん

ですけどね」

ハッキリ言って戦闘になったらまともに勝てるとは思えない。何せ相手はナクルよりも格上の勇者だ。それに戦うとなれば《アイテムボックス》の力を存分に振るわないといけないだろう。そうなれば益々相手に興味を抱かれてしまいかねない。

(けど逃げるにしても普通の方法じゃ無理っぽいしな)

ここは一度ボックス内へ逃げ込むという方法を取るか……。

テレポート能力の持ち主だとか勘違いされるだろうが、逃げるには致し方ないかもしれない。

(でも何でヨルが俺を……?)

ふとそんな疑問が浮かんだ。ナクル相手ならば分かる。何せヨルが探していたのは彼女なのだから。それも間違いなく防衛大臣である七宮恭介の命令で。

沖長からナクルについて知ってそうなので話を聞きたいということならばまだ分かるが、問答無用な雰囲気でついて来いなどと言われるような理由はないと沖長は思っていた。

確かに男の勇者候補生ということで恭介が手に入れたいと考えている可能性はあるが。

だとしたらやはるヨルに捕縛されるのは避けた方が良い。

(ここはやっぱ一旦ボックス内へ――)

逃げ込もうとした直後だ。

「……また邪魔が入ったか」

不意にヨルからそんな言葉が漏れ出た。

そこで初めて気づいた、新たな気配。それは沖長の背後から。咄嗟に振り向くと、そこには――。

「――師匠っ!?」

沖長の現在の師である籠屋大悟が、不敵な笑みを浮かべながら仁王立ちしていた。