軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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穏やかな日差しが窓を通して床を照らしている。まだ夏には遠いものの、少しずつその足音は聞こえてきていた。

今日も日中は二十度を超え、中には半袖で街を歩いている者も見かける。

そんな中の道場内もまた熱気が籠っており、全身汗だくのまま床に大の字で倒れている沖長とナクルがいた。

両者ともまるでフルマラソンでも走ったかのように疲労しており、今も激しい呼吸を繰り返している。その傍で倒れてこそいないが、蔦絵もまた大きく肩で息をしていた。

今日は土曜日で授業が無い。そのため昨日から日ノ部家に泊りがけで修練に勤しんでいたのだ。

早朝から日課のランニングや軽度の筋トレのあと、いつもは師範代である蔦絵の指示のもと修練をするのだが、本日の担当は修一郎であった。

先日、修一郎から〝オーラ実践法〟を学んでもらうという話があったが、今日がその初日というわけである。

オーラの扱いについては蔦絵もまた未熟ということから、三人揃って師範である修一郎に学ぶことになった。

しかしこれが想像以上にキツイ。特にいまだオーラを発現できていない沖長にとっては、すべてが手探りの上、ゴールの見えない道をただただ全力で疾走しているようで、肉体的にも精神的にも負荷が大きいのだ。

「ほら、すぐに立つ」

厳しい修一郎の言葉が鼓膜を震わせる。

立つのすら億劫になるほどの疲労を感じつつ、それでも言われた通りに沖長とナクルは立ち上がった。

「ではもう一度――」

修一郎が深く呼吸をすると、おもむろに右手を三人へと向けてきた。

「「「――っ!?」」」

直後、三人の表情が一気に強張り、まずナクルが膝を折って四つん這いになる。そして沖長もまた今にも折れそうな膝をプルプルとさせながらも耐える。

何が起こっているのか、体感でいうならば、その場の重力が何倍にもなったかのような状況といえば理解できるだろうか。

気を抜けばすぐにでも仰向けに倒れそうになるほどの重圧がかかっている。

蔦絵も沖長やナクルほどではないが、歯を食いしばり姿勢を保っていた。

「うっ……ぐうっ!?」

とうとう耐え切れずにナクルのように四つん這いになってしまう沖長。対してナクルはすでに床を抱きしめるようにして沈黙している。

そして数秒後に沖長は床に押し付けられるようにして倒れてしまう。そこでフッと重力が軽くなる。

「それじゃダメだ。単純な筋力だけじゃ、俺のオーラには耐えられないぞ」

そう、この状況を生んだ原因こそ、修一郎が放ったオーラ。それがとてつもない重圧となり、慣れていない者にはその場に立っていることすら困難なのである。

蔦絵はまだ完璧ではないものの、自身のオーラを自覚し利用することができているので、修一郎のオーラに対抗できているのだ。

「うぐぅ……じんどいッスぅ……」

ナクルはそれこそ潰れたカエルのようになっており、言葉も濁っていてその辛さがありありと伝わってくる。

(マジでキツイわ……。けどこれがオーラの圧力か……)

これでコモンオーラだというのだから脱帽である。ナクルのような勇者が扱うブレイブオーラは、これよりもさらに質が高い。

あくまでも一般的なオーラを修一郎が扱っているのだが、極めればこれほどのものとなるという分かりやすい指標になっている。

「蔦絵くんはともかくとして、二人はまだまだ自分のオーラを自覚できていないようだね。それではいつまで経ってもオーラを実戦で使えないな」

「うぅ……け、けどボク、ブレイブオーラ? ってやつでダンジョン主を倒したッスよ!」

ナクルの言い分。確かに彼女はブレイブオーラを物質化させたブレイブクロスを纏うことができている。それは彼女からすれば扱えていると言いたいのだろう。

「ふむ。なら今ブレイブクロスを纏ってみなさい」

「そ、それは……」

言い淀むナクルを見て、沖長も苦笑を浮かべてしまう。

事実、これまで何度もクロスを纏う訓練をしてきたが、それが成功した試しがない。正確にいえば、ダンジョン内でしか纏うことができていないのである。

「いいかいナクル、いくら資質があろうとも、必要な時に使えなければ意味がない。その時になって後悔するのはお前だぞ」

「うぅ……はいッス……」

「ん、沖長くんも同じだな。君は身体も丈夫だしタフな精神力も持ってる。しかしオーラを自在にコントロールできなければ、今後の戦いで満足に動けなくなるだろう。特に妖魔人との戦いにおいては、オーラは必要不可欠になる」

そう。先日沖長は修一郎に妖魔人について尋ねた。妖魔人というのは妖魔とは強さが別格であり、対抗するには相応の実力が求められる。

さらに妖魔人は、人間社会に潜みいつ襲ってくるとも分からない。そうなった時に一方的にやられないためにオーラの扱いが必要になると判断し、こうして直接修練をつけることになったわけだ。

「本来、オーラの扱いを駆使する《日ノ部流・中伝》は二人にはまだ早い。しかし現状ではのんびりとできないのも確かだ。険しい道のりだが、手探りでもそうして進むしか方法はない」

普通オーラを自覚するには、長い修練や瞑想などが必要になる。しかし現状行っていることは時短にはなるが、当然相応に辛く厳しいものになってしまう。言ってみれば何度も何度も技をその身で受けて慣れて覚えろといっているようなものだからだ。

下手な者が行えば身体が壊れかねないし、オーラに対し拒絶反応を引き起こすなどのトラウマになる危険性が伴う。故に修一郎にとっても選びにくい手法ではあったが、ダンジョンや妖魔人の問題が迫っている以上、苦渋の選択を取らざるを得ないというわけだ。

そこでチラリと蔦絵を見た修一郎は、彼女にも言葉を発する。

「蔦絵くんは師範代としてオーラの扱いは慣れているが、どういうわけかオーラの総量が極端に増加していて扱い切れていない」

「はい、その通りです。前まではもっと精密に扱えていたのですが、今はまるで暴れ馬を相手にしているようで」

彼女のオーラの絶対量が増加したのは、あの蘇生が原因だというのが沖長の見解だ。いきなり莫大化したオーラの扱いは難しいようで、彼女もまたこうして基礎から学び直すことを決めたらしい。

「だが君たちならばいずれ俺と同等……いや、俺たちを超えられると信じている」

彼が言う俺たちというのは、かつてともに戦った仲間のことだろう。

そんなに期待されては裏切るのが申し訳なくなってくる。沖長はふとナクルを見ると、彼女もこちらを見て強く頷いた。

そして二人して立ち上がり、真っ直ぐ修一郎の顔を見据える。その姿に修一郎が嬉しそうに笑みを浮かべたが、それも一瞬で厳しいものに変わった。

「よし、では続きだ。自分のオーラを最大に発して耐えてみろ!」

「「「はいっ!」」」

そうして再び〝オーラ実践法〟が始まった。