軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二十七話 魔法都市への帰還

ラーニョの大群を再び一掃した後、ポメラは半ば放心状態のロズモンドを白魔法で治癒していた。

命に別状はないだろうが、散々ラーニョに噛まれていたらしく、全身傷だらけになっていたのだ。

その間、俺とフィリアで討伐証明部位であるラーニョの目玉を抉り出していた。

俺はラーニョの目玉を地面に積み上げていく。

ラーニョの血が腕にべったりとつく。

しかし、幼い精神を持つフィリアに、こんなことをやらせていいのだろうか。

「カナターッ! この目玉、すっごく大きい! ね、ね、これ、十個分くらいになったりしないかな!」

フィリアが大型ラーニョの目玉を、血塗れで掲げていた。

……うん、まあ、大丈夫そうかな。

「これで……ラーニョの目玉は全て、ですね」

最初のラーニョが約六十体で、ロズモンドが引き連れて来てくれたラーニョが約四十体、合わせて百体ちょっとといったところだ。

大型ラーニョは三体いたが、ポメラの精霊魔法の雷で一体の目玉は黒焦げになっており、もう一体は全身丸ごと《英雄剣ギルガメッシュ》の錆になってしまった。

とりあえず黒焦げの目玉は残しているが、消し炭になってしまったものはどうしようもない。

綺麗に残っているのはフィリアが握り潰した大型ラーニョの目玉だけだった。

全身圧縮したかと思っていたが、目玉だけ完全な状態で残していたのだ。

俺は目玉を数えながら、魔法袋の中へと収納していく。

「ラーニョがざっくり百体だから、二百五十万ゴールドですか」

更に大型ラーニョ二体分の追加報酬が期待できる。

プラス十万ゴールドくらいは行くかもしれない。

俺は晴れやかな気分だった。

これで自由に錬金実験を行えるだけの金銭が手に入るはずであった。

もっとしつこく狩れば、更に多くのラーニョの目玉が手に入るかもしれないが……まあ、とりあえずはこんなものでいいだろう。

やり過ぎればロクなことにはならない。目立つのはあまりよろしくない。

「そういえば……ロズモンドさんが倒したラーニョの亡骸も、あったのではないですか? 取りに戻るのでしたら手伝いますよ」

「……今回は、もう、よい。一夜眠って全て忘れたい……」

「そ、そうですか……」

ロズモンドはすっかり落ち込んでいたようであった。

……何故だか、最初に会ったときよりずっと小さく見える。

重装備が剥がれたこともあるのだろうが、それだけではないだろう。

ロズモンドには、俺達について余計なことは言わないでほしいと、約束している。

フィリアの《夢の砂》が露呈すると、どういう事態になるのか予測がつかないからである。

ロズモンドはちょっと血の気が多いが、そう口の軽い人間ではないだろうと思う。

一応助けたことに恩は感じているようであるし、早々簡単に売られるようなことはないだろう。

「……しかし、あの三体の大型ラーニョ……魔法都市は、最悪の事態を迎えようとしておるのかもしれんな。我も、ここを離れるか、残って戦うのか、考えておかねばならん」

ロズモンドがぽつりと呟いた。

こうして俺達は森を抜け、魔法都市マナラークへと帰還した。

成り行きで帰路を共にしていたロズモンドと別れ、早速冒険者ギルドへと向かっていた。

「これでついに《神の血エーテル》を作る錬金実験に着手することができます」

「ふふっ……カナタさんが喜んでいると、ポメラもなんだか嬉しいです」

ポメラが微笑みながらそう言った。

「ええ、完成したらまた《歪界の呪鏡》のレベリングを再開しましょう」

「……あ、はい」

おかしい、ポメラの笑顔が途切れた。

「フィリアも飲んでみたい! ねぇねぇ、カナタ! エーテルっておいしいの?」

「お菓子感覚で飲むものではないけど、まあ……うん、美味しいことには違いないよ」

……何せ、代用品で誤魔化さない純正の《神の血エーテル》は、推定一本数千万ゴールド以上である。

「そっか……わかった! じゃあ、じゃあ、フィリアも、鏡でいっぱいいっぱい強くなる!」

……フィリアは、今より強くならないでほしいかもしれない。

これ以上強くなったら、俺でも手をつけられないようになってしまいかねない。

《夢の砂》の能力の限界がわからないので、いつの間にかレベルを追い越されていてもおかしくない。

「レ、レベリングはしなくても飲ませてあげるから、大丈夫だよ」

「でも、フィリアも、カナタとポメラと、鏡の中で修業したい……」

「う、う~ん……そっか、またちょっと考えておくよ」

「やったぁっ! 期待してるねっ! カナタッ!」

ほ、本当にどうしよう。

ま、まあ、俺がもっともっと強くなれば、大丈夫……だろうか?

「……と、到着したか。早速、換金してもらうか」

冒険者ギルドの扉に手を掛けるが、中の様子がなんだか騒がしい。

何か、また面倒なことでも起こったのだろうか。

そう言えば、ラーニョの異常発生具合は、ギルド側も、ポメラも、ロズモンドも、何かの前兆ではないだろうかと怪しんでいた。

覚悟して扉を開けると、ギルドの受付中央部に人だかりができていた。

そしてその中心部に堂々と立つ、一組の男女の姿があった。

金色の長髪の美丈夫と、青髪短髪の女冒険者である。

「あれは確か……」

「……カナタさんが大ファンの、アルフレッドさんですね」

ポメラがややうんざりしたようにそう口にした。

「ファンとはまた違うのですが……」

A級冒険者アルフレッドと、彼の付き添いであるセーラだ。

丁度彼らも戻ってきたところであったらしい。

「なんだ、アイツ……流れ者の分際で、この魔法都市マナラークで気取りやがって……」

「A級冒険者が、どんなもんだよ。この都市の審査がちょっと厳しいだけで、俺だって他の都市ならA級冒険者をやってくくらいできるんだ。冒険者としては、ロズモンドの方が格上だろう」

「そういうなよ、アイツが何体狩ったか、見物じゃないか。アルフレッドの実力は今にわかるさ」

周りの冒険者達は、彼に対して否定的な声が多いようだった。

特に、男冒険者は嫉妬と怒りの混じった目で見ている者が多い。

アルフレッドの気取っているとも取れる態度は、同性の方が苛立つものだろう。

それに、アルフレッドは、出発前にここの冒険者に対し、宣戦布告とも取れる言葉を吐いていた。

周囲の冒険者は腑抜けばかりだと言い、誰よりも多くラーニョを狩ると宣言していたのだ。

アルフレッドは周囲を見回し、大きな溜め息を吐いて自身の額を押さえた。

「魔物を討伐する度にこの騒ぎとはな……やれやれ。お前達も冒険者なのだろう? 人様の功績よりも、自分の功績にもう少し気を掛けてみればどうだ?」

その一言で、冒険者ギルド内の気温が数度下がった気がした。

騒がしかった冒険者ギルドが一気に静かになった。

「カ、カナタさん、なんだか、殺気が立ち込めていませんか?」

「人様の功績より自分の功績、か。確かに、一理あるかも……」

俺はうんうんと、小さく二度頷いた。

他人の功績を過剰に気にするのは、冒険者としてやることではないだろう。

それはただの野次馬である。自身の利益や向上にはまず繋がらない。

関心を持つのは結構だろうが、それで自分の功績が二の次になってしまうのであれば、それはもう不毛というものだ。

「……やっぱりカナタさん、ああいうのに変な憧れを持ってますよね?」

ポメラが失望したような目で俺を睨んだ。

「ち、違いますよ。別に、間違ったことは言っていないかなって……」

「カナタさん、別に正論であっても、それを口にするのが正しくないタイミングもあるんですよ?」