軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五十七話 オクタビオとの決闘

ポメラが魔法陣を展開したと同時に、オクタビオは斧を振り上げてポメラへと飛びかかった。

「ハッ! お前がしょっぱい白魔法しか使えないってことは、オッフの奴に調べさせてるんだよ! やれるもんならやってみやがれ!」

ポメラがオクタビオへと大杖を突き出す。

「炎魔法第五階位《 紅蓮蛍(フレアフライ) 》」

魔法陣の中央に、赤い光が灯った。

俺はそれを目にして焦った。

「ポ、ポメラさん、別に、魔法は使わなくてもいいんじゃ……!」

大杖で殴り飛ばすだけで、ポメラはオクタビオを完封できるはずだった。

何せ、文字通りレベルの桁が違うのだから。

第五階位の魔法とはいえ、これだけレベルの差があるとオクタビオが蒸発して焼失しかねない。

「そ、そうでした! 緊張すると、つい……!」

ポメラは咄嗟に大杖の先端を落とす。

魔法陣から出た真っ赤な光の球は、宙を舞った後、オクタビオの足元に着弾した。

「第五階位の魔法を使えるだと……!? だ、だが、少しばかり驚かされたが……どうやら、まだロクに制御の方はできないらしいな」

オクタビオがニマリと笑う。

違う、外れていない。

《 紅蓮蛍(フレアフライ) 》は火の玉で攻撃する魔法ではなく、その爆風で攻撃する魔法なのだ。

オクタビオの足元が爆ぜる。

「ぶほぉっ!?」

オクタビオの巨体が爆風に押し上げられて大きく宙に上がった。

彼は呆気なく地面へと叩きつけられる。

「おばぁっ、あ、熱、痛い……!」

オクタビオは、足を抱えながら地面の上をのたうち回る。

ズボンは焦げ落ち、露出した足は大きく肉が抉れており、周辺は赤黒くなっていた。

仮に直撃していれば、即死していたところだっただろう。

「そ、そんな、バカな……お、俺様が、こんな、雑魚エルフ相手に、負けるわけが……!」

オクタビオが激痛に呻きながらそう言った。

大分、足の肉が削がれている。

高位の白魔法か、霊薬の類を手に入れなければ、あの足を完全に治療することはできないだろう。

オクタビオは、もうまともに走ることはできない。

今回のような悪事を働くこともできないだろう。

「あ、あり得ない……こんなこと、あるわけがない……。オ、オッフの情報が間違っていたのか? それにしても、こんなことが……な、なぜだ、なぜこうなった……?」

「……これで、わかってくれましたか? もう二度と、俺達には拘わらないでください」

「こ、この、クソどもが……!」

オクタビオは斧を握りしめる腕を震わせながら持ち上げようとしていたが、ポメラから杖先を向けられ、腕をがっくりと地面へ落とした。

「お、俺様が、間違っていた……。許してくれ……こ、これからは、心を入れ換える……」

オクタビオは頭を擡げ、苦悶の声でそう言った。

その直後、鬼の形相をポメラへと向けた。

「えっ……」

ポメラはオクタビオの表情を見て、困惑げに身を引いた。

オクタビオは無事な方の足で地面を蹴って自身を宙へ跳ね上げ、ポメラの頭へと斧を振り下ろす。

「引っかかったなクソ共が! ここで死ね!」

オクタビオがポメラの頭へと斧を振りかざす。

オクタビオの顔が笑う。だが、直後に困惑へと変わった。

振り終えたとき、既に彼の手から斧は消えていたからだ。

俺はオクタビオが跳んだのと同時に、彼の背後へと回り込んで宙へ跳び、斧を手から奪っていた。

「き、消えた……?」

「……片足がまともに動かなくなっても、そこまでやってくるとは思いませんでした」

俺は斧を振り上げ、オクタビオの腕を肩から切断した。

「あ、ああ、あああああああああ! あづい、痛えええええ!」

オクタビオが切断面を押さえながら、地面へと落下した。

魔物を切るとは違う、嫌な感触だった。

できればこんなことはしたくなかったが、オクタビオは警告を無視し、彼の言い分に則った約束さえ反故にした。

領主や衛兵が、冒険者同士の争いにどこまで関与してくれるかはわからない。

俺は流れ者の身であるし、この都市ではハーフエルフであるポメラの扱いもあまりよくはない。

オクタビオを五体無事で返せば、また何らかの形での報復を試みて来るのは明らかであった。

「痛え、痛えええええ! な、なんてこと、してくれるんだ……片腕だと、片腕だと、冒険者としてやっていけないだろうがあああああ! お、俺の腕……俺様の腕がぁ!」

オクタビオが切断された自身の腕をもう片方の腕で抱き、おんおんと涙を流し始めた。

「腕だけで済むと、本気でそう思っているんですか?」

「ひ、ひいっ!」

俺が斧を地面に投げ捨てて《英雄剣ギルガメッシュ》を抜くと、オクタビオは悲鳴を上げて切断された腕を投げ捨てた。

蹌踉めきながら立ち上がり、足を引き摺りながら都市アーロブルクの方へと逃げていく。

これでさすがに、オクタビオはもう俺達に何かをしようとは考えないだろう。

俺は《英雄剣ギルガメッシュ》を鞘へと戻した。

オクタビオとの騒動が片付いてから、俺とポメラはアイアンカウ狩りを再開した。

無事、日が暮れるまでに五体のアイアンカウを狩ることができた。

都市近辺での依頼はギリギリまで粘れるのがありがたい。

冒険者ギルドに五つの角仮面を納め、その分の肉を買い取ってもらうことができ、ついに俺とポメラは晴れてC級冒険者へと昇格することができた。

C級冒険者にもなれば、熟練の冒険者として認められる域になるらしい。

冒険者ギルドの方でも昇級を言い渡された時にギルド内が少しざわつき、離れたところから見ていたロイが大口を開けてぽかんと俺の方を見ていた。

俺とポメラは少し奮発して、酒場《狩人の竃》にて、C級昇格の祝いを行うこととなった。

この酒場は、持ち寄った食材を調理してくれる。

自分で狩った獲物を食べられる、というのが売りなのだそうだ。

今回狩ったアイアンカウの肉を、一体分食用にするために魔法袋の中へと残しておいたのだ。

皿からはみ出すほど大きなアイアンカウのステーキを見たときは、確かに達成感があった。

ポメラからのお薦めだったが、ここは本当にいい店だ。

店内の内装も、魔物のなめし皮や頭部の剥製を飾っており、独特の雰囲気があった。

そこそこ値が張るためか、騒がしすぎることもない。

「えへへ……ロイさんとホーリーさんがたまに二人で来ていたそうだったので、ポメラも一度、来てみたかったんです」

ポメラが嬉しそうに話すのを聞いて、俺は自分の顔が強張るのを感じていた。

少し返事に困ってしまう。

「しかし、まさか、お酒が一緒について来るとは思っていませんでした」

机に置かれた二つのコップには麦酒が入っているそうであった。

この店では、一杯目の麦酒はサービスとなっているらしい。

というより、お通しのようなものだろうが。

あまり俺は酒は好きな方ではない。

すぐに気分が悪くなるばかりで、あまり酔うのが楽しいと思ったことはない。

こっちの世界のお酒がどういったものなのかは興味がないこともないが、味見できればいい、程度である。

ポメラは恐らく二十にはなっていないと思うのだが、店主は特に確認することもなく麦酒を置いていった。

こちらの世界では、飲酒に関する年齢制限が異なるのだろう。

「ポメラ、酒場に入るのも、お酒を飲むのも初めてなんです! なんだかわくわくします!」

「そんないいものではありませんよ……。少しずつ飲んで、合わないと思ったら残した方がいいです」

俺は苦笑しながら、ポメラと麦酒を乾杯した。