軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五十四話 受難の成果

《歪界の呪鏡》のレベル上げ開始より、四日が経過した。

俺とポメラは四日連続で挑み続けており、今日も今日とて鏡の悪魔達へと挑んでいた。

ポメラを抱きかかえて駆ける俺の背後を、魑魅魍魎の群れが追いかけてきていた。

膨れ上がった頭部と百の目玉を持つ子供に、腕を三十二本持つ巨大な骸骨など、今回も一目見ただけでヤバいとわかる化け物が勢揃いだった。

ぶくぶくに肥大化した、真っ赤な腫瘍の塊がコートを着た様な姿の悪魔もいる。

出鱈目にもほどがある。

時間を掛けるとだんだんと増えてくるので、俺も機会を見て《 球状灼熱地獄(インフェルノボール) 》を放ったり、距離を詰めて剣で引き裂いて間引いている。

ポメラもどうにかこの《歪界の呪鏡》に慣れつつあった。

「炎魔法第七階位《 紅蓮蛍の群れ(フレアフライズ) 》」

ポメラが俺に抱きかかえられながら、ゆっくりと魔法陣を紡ぐ。

無数の真っ赤な光が、不規則な動きで後を追ってくる悪魔達へと迫り、爆発を起こしていく。

この広範囲攻撃であれば、ポメラでもあの悪魔達へと攻撃を当てることができる。

元より、悪魔達は敵として見ていないポメラの攻撃をそこまで必死に避けようとはしないのだ。

「よし、そろそろですね……」

俺は魔法陣を浮かべ、《英雄剣ギルガメッシュ》を悪魔の群れへと向けた。

「時空魔法第十九階位《 超重力爆弾(グラビバーン) 》」

黒い光が広がり、悪魔達が一気に押し潰されていく。

二日目以降、逃走しながら《 紅蓮蛍の群れ(フレアフライズ) 》を撒き散らしてポメラの功績を稼ぎ、《 球状灼熱地獄(インフェルノボール) 》あたりで弱らしつつ、最終的に《 超重力爆弾(グラビバーン) 》で纏めて処分する戦法をよく取っていた。

今できる範囲では、これが一番効率がいい。

「綺麗に倒れてくれましたね。今日は、いい感じで……ああっ!」

異空間の果てより、四体の仏像が一列に並んで迫ってくるのが見える。

仏像は各々、一色で全身をベタ塗りされている。

あの悪魔は本当にまずい。

色に応じた凶悪な範囲魔法を連打してくるのだ。

こっちもあれこれ試してみたが、どうやら結界魔法の弱い俺に対抗手段はないらしいと答えが出てしまっている。

単騎ならどうにかなるが、多属性の魔法を一気にぶつけてくるので結界魔法以外本当に対応手段がない。

見えた時点で射程に入るので、発動の遅い時空魔法の《 転移門(ゲート) 》で逃れるのも間に合わない。

「すいませんポメラさん、仏像です! 四体、三色です! 完全に詰みました!」

「そ、そんな……!」

直後、視界が雷と獄炎に包まれた。

鋭利な無数の針の様なものが飛び交った後、再び地獄の炎が全てを包み込む。

ポメラの身体が、黒焦げの穴だらけになるのが見えた。

俺は黒焦げになったポメラを抱えたまま、《 短距離転移(ショートゲート) 》を三度撃って仏像共の上を取った。

こいつらは範囲魔法以外は大したことはない。

その魔法が危険すぎるのだが、多少直撃しても回復用の霊薬があれば問題はない。

「撤退しますが、その前に八つ当たりさせてもらいます!」

俺は飲み干して、空になった霊薬の瓶を床へと投げつける。

「時空魔法第十七階位《 空間断裂(フラクチャー) 》」

黒い根が広がっていき、仏像共を引き裂いていった。

仏像の残骸が消えていくのを見届けてから、俺はポメラと共に《歪界の呪鏡》より撤退することにした。

「今日は、半日潜って五回しか死にませんでしたね。ポメラさんもかなり慣れてきましたか?」

「慣れません……」

ポメラは宿のベッドに横になり、ぐったりとしていた。

彼女の衣服は、時空魔法第十四階位の《 逆行的修復(リペアー) 》によって再生している。

因果を遡り、壊れた物体を元に戻すことができる魔法である。

「大丈夫です。その内きっと、慣れてくるはずですから」

「カナタさん、この感覚は、人として慣れてはいけない気がするんです……」

「俺は慣れましたよ」

「…………」

俺は《ステータスチェック》を用いて、ポメラのレベルを確認する。

彼女は、なんとレベル201へと上がっていた。

俺は安堵の息を吐いた。

思うようにポメラのレベルが上がらず悩んでいたが、どうにか目標の一つであったレベル200へと持っていくことができた。

正直、ようやくレベル200かという気持ちはあるが、まあロヴィスよりは強いのである程度は形になったと思っていいのではなかろうか。

未だに信じられないが、ロヴィスは大規模な闇組織のボスで、悪のカリスマと称されているという話であった。

「ポメラさん、レベル201まで上がっているみたいです」

「201ですか、思ったより上がっていましたね……」

毛布に包まっていたポメラが、上体をがばっと勢いよく起こした。

「え、レベル201ですか!? だ、誰がですか、カナタさんがですか?」

「ポメラさんがですよ」

俺がレベル200程度であったら、二人共既に《歪界の呪鏡》の住民達に殺されていることだろう。

「信用できないのでしたら、ポメラさんの魔法の上達度の確認のために購入した、《レベル石板》でも用いますか?」

《レベル石板》は、魔力を流せば、流した本人のステータスを表記してくれるアイテムである。

現地人用の、劣化版《ステータスチェック》といったところだ。

俺は他人はレベルやHPくらいしか見ることができないため、ポメラの魔法の上達度の確認用にこれを購入している。

「何度か経過を教えているはずですが……」

「そ、そうでしたっけ……。呪鏡の悪魔のショックで、聞き逃していたかもしれません……で、でも、ポメラなんかがレベル200なんて、そんな……とても信じられません……」

「最近《歪界の呪鏡》に籠もりがちでしたし……一度、街の外へ出て、どのくらい成長したのか確かめてみましょうか」

冒険者として、ここ最近あまり活動していなかった。

これ以上期間をあけていれば、特別昇級の話もなくなってしまうかもしれない。

そろそろ魔物狩りに向かうことにしよう。

「ポ、ポメラ、外に出ていいんですか……!」

ポメラが感動したような声を漏らす。

「勿論そうですよ。というか、そんな、別に俺の許可を取らなくても……」