軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四十三話 依頼の受注

冒険者ギルドの受付へポメラをパーティーメンバーとして申請することで、魔物との戦闘が想定される依頼を引き受けることができるようになった。

これで荷運びや召喚契約の下調べのような雑用を熟していく必要はなくなった。

俺達が引き受けた依頼は、都市の街壁のすぐ外でのゴブリンの間引きと、あまりパッとしないものではあったが、登録したばかりの最下級のF級冒険者の受けられる依頼はせいぜいこんなものであるらしかった。

実績を積んで冒険者としてのランクが上がれば、もう少しまともな依頼も受けられるようになっていくはずだ。

この都市アーロブルク周辺に出没するゴブリンの強さの目安は大体レベル7であるらしく……恐らく、俺が苦戦らしい苦戦をすることはなさそうであった。

俺がゴブリンの間引きを引き受けるのはレベルを鑑みると不毛な気もするが、冒険者ギルドには冒険者ギルドのルールがあるそうなので仕方がない。

順当に依頼を熟していけば、ある程度までランクを上げることは容易いはずだ。

「あ、あの……よ、良かったのですか? 本当に……その、ポメラなんかと組んでくださって」

依頼の受注が完了した後、ポメラがおどおどと尋ねてきた。

ロイの様な輩からあんな扱いを受けていれば卑屈になる気持ちもわかるが、ポメラの言葉は聞いていて辛くなるときがある。

彼女には、もう少し自信を持って生きて欲しい。

「他に顔見知りどころか、まともに話したことのある人もいなかったですし、ポメラさんが引き受けてくれて俺も凄く助かりましたよ。お礼を言うのは俺の方です。それに、ポメラさんとあって半日も経っていませんが、とても信頼のおける人だと思えたので」

ポメラは俺の言葉を聞くと、顔を赤くし、落ち着かない様子で自分のベレー帽をぺたぺたと押さえていた。

「ポ、ポメラは……その、カナタさんと仲良くしたかったですし、ハーフエルフだと知って、それでも態度を変えないでいてくれたことも凄く嬉しかったです。ロイさん達と少しその……上手く行っていないこともあって、パーティーに誘っていただけたのはありがたかったです。ただ、カナタさんの足を引っ張ることにならないか、凄く不安で……」

「……少し?」

思わず声に出てしまった。

ロイのポメラへの態度は最悪であった。

あからさまにポメラを自分より下の存在であると見下し、都合よくこき使っていた。

「む、昔はその、凄く優しかったんです! ロイさんも、ホーリーさんも! ポメラがその……エルフの混血のせいでギルド内で敬遠されているのを知って、二人とも、笑顔で声を掛けてくれたんです。ポメラが……二人の期待に応えられなかったのがいけないんです」

ポメラががっくりと肩を落とす。

俺は脳裏に、ロイが最後に肩を掴んで小声で話しかけてきた内容を思い返していた。

『善人振るの止めようぜ、なあ、カナタとやら。わかるぜ、俺も森荒らしの混じりものだから魔法ができるかと思って優しくしてやっていたが、レベルは低いし、要領は悪いし、何の使い物にもなりはしない。何にも反抗しないから、ストレス解消と雑用には持って来いだが、お前の期待してるような働きはしねぇよ』

ふ、不憫すぎる……。

俺はポメラの言葉にどう返したものか戸惑っていた。

元気付けてあげたいが、俺はどうにも口下手で、何と言ってあげればいいのかわからない。

「もしポメラが……もし、もう少ししっかりしていれば、ロイさんやホーリーさんと仲良くなれていたのでしょうか……?」

ポ、ポメラはもう、あの二人のことは綺麗さっぱり忘れてしまった方がいいような気がする。

ロイはどう贔屓目に見てもなかなかいないレベルのクズだとしか思えないし、ロイがポメラに罵声を浴びせるのを前にただぼうっとしていたホーリーもあまりいい性格をしているとは思えない。

もしもポメラがロイの求めていた力を有していたとしても、罵声を浴びせる機会は減ったとして、今の扱いと本質的には変わらなかったのではなかろうか。

「ポメラ、その……レベルはロイさんや他の冒険者の方には及びませんが、白魔法の第三階位までは使えるんです! これだけは、母様が生きていた頃に教えてくれて……。で、ですから、傷の手当てはポメラに任せてください!」

……既に確認済みなのだが、ロイがレベル14で、ポメラはレベル7だった。

彼らにとっては倍近い差だといえるのかもしれないが、どちらもこう、正直俺からしてみれば同じだとしか思えない。

俺は白魔法は一番苦手な魔法というか、ルナエールの錬金してくれた薬や⦅ウロボロスの輪⦆で事足りていたので、白魔法の習得を目的とした修行はほとんど行っていない。

もっというとルナエールは時空魔法による因果律逆行を回復手段に用いていたので、俺の中で白魔法にあまり存在意義を見出せていなかったのだ。

……だが、第四階位までは操ることができるはずだ。

このことはポメラには黙っておいたほうがいいかもしれない。

「ポメラ……その、カナタさんには失望されないように、凄く、すっごく頑張ってお役に立ちます!」

ポメラがぎゅっと拳を握り、大きな声でそう言った。

周囲の反応で自分の声量に気がついたらしく、ベレー帽をぎゅっと引っ張って赤くなった顔を隠した。

……ギルドの依頼発注のルールに則るためにもパーティーメンバーは必要であったし、冒険者としての活動やこの都市について知識のある人間の同行は今の俺に不可欠だったのだが、もしかしたら俺は流れでとんでもなく残酷な勧誘をしてしまったのではなかろうか?

これでポメラが俺のレベルが4000以上だと知れば、俺が完全に同情だけでポメラを誘ったような空気になってしまう。

それは恐らく、ポメラは受け入れられない。

足手纏いにしかならないといって俺の前から去っていくかも知れないし、第一彼女を更に深く傷つけることに繋がりかねない。

「ご、ごご、ごめんなさい、カナタさんにも恥を搔かせてしまいました……」

ポメラは俺が固まっているのを見て、ポメラの大声で周囲の目を引いたことを気にしていると判断したらしく、ぺこぺこと頭を下げてきた。

俺はポメラを宥めつつ、どうするべきかに頭を悩ませていた。

ポメラと二人で冒険者ギルドの入り口を出るとき、背丈の低い男とすれ違った。

小男は俺と、その隣のポメラを目にして、ニマリと笑った。

どこかで見た顔だと思えば……万年D級冒険者、オクタビオの仲間だ。

あまり関わって愉快な相手ではない。

俺はポメラを急かし、早歩きで冒険者ギルドを出た。