軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三話 久々のウルゾットル

俺達は桃竜郷へと向かうべく、メルと別れて街を出た。

「……おい、またあの化け犬を召喚するつもりか?」

街門を抜けて少し歩いたところで、ロズモンドが不安げに声を掛けてきた。

俺は立ち止まり、後方へ目を向ける。

街からは充分に距離を取った。

この辺りであれば街の方に混乱を招く心配もないだろう。

「化け犬って……ウルはいい子ですよ」

「……いい子なのはわかるが、やはり今から都市に戻って馬車を雇わんか?」

「ウルの方がずっと速いですし、可愛いですよ」

「可愛い……? アレが……?」

ロズモンドが不思議そうに首を捻る。

「段々と慣れてきますよ。ポメラも何回か会っている内に、なんだか可愛く見えてきちゃいました。えへへ、手から直接お肉をあげたりすると、凄く喜んでくれるんですよ」

「それは慣れるというか、麻痺と呼ぶのではないのか?」

ロズモンドが不安げにポメラへとそう尋ねた。

「ロズモンドも、お犬さん苦手なの? フィリアと同じ!」

「犬が苦手という次元ではないわい! 前は腕を噛み千切られかけたのだぞ、腕を! 貴様らは、揃いも揃って感覚がおかしい。ああ、一緒におれば、命がいくつあっても足りんわい……」

ロズモンドが額を押さえて、がっくりと項垂れた。

「大丈夫ですよ。《九命猫の霊薬》……回復ポーションのストックがまだいくらか《魔法袋》に残っていますから、腕の一本や二本なくなったとしてもすぐに生やすことができます」

ポメラも時間を見つけては《歪界の呪鏡》でのレベリングと、霊薬ドーピングを用いての白魔法の手練を行っている。

近い内に《九命猫の霊薬》のような稀少アイテムを消耗しなくても、彼女の魔法一つで人体の欠損程度すぐに再生できるようになるはずだ。

「そういうところが感覚がおかしいと言っておるのだぞ我は」

「長くポロロックに滞在していて都市外に出る機会もなかったので、しばらくウルに構ってあげられていないんです。寂しがり屋なのでそろそろ召喚してあげないと……」

「……そんな長らく会っておらんかったペットに再会するかのような気軽さで、あの化け物を……はぁ……いや、貴様にとっては、正にそれ以上でも以下でもないのだろうな」

ロズモンドが疲れたように、諦めたように深く息を吐いた。

俺は《英雄剣ギルガメッシュ》を抜き、その刃を掲げる。

「召喚魔法第十八階位《 霊獣死召狗(ウルゾットル) 》」

魔法陣が広がり、全長三メートルの、青い美しい毛を持つ巨大な獣が現れた。

「アオオオオオン!」

ウルゾットルは天に向かって咆哮を上げた後、大きく口を開けて、俺へと一直線に飛び掛かってきた。

「お、おい、貴様のことを忘れているのではないのか!?」

俺のすぐ横にいたロズモンドが、大慌てで武器の柄へと手を掛ける。

このままでは彼女も巻き込まれかねない。

俺は一歩前に出ると同時にロズモンドを横へと突き飛ばし、《英雄剣ギルガメッシュ》を突き出すように構えた。

「アオオオオオオオオッ!」

喰らいついてくるウルゾットルの口へと剣の刃を噛ませ、そのまま後方に引いてウルゾットルの姿勢を崩した。

転倒したウルゾットルがその場に仰向けにひっくり返る。

俺は剣を手放して屈み込むと、ウルゾットルの腹部を撫で回した。

「クゥン、クゥン……クゥン!」

ウルゾットルが心地よさそうに高い声を上げる。

二又の尾を激しく振り回していた。

「よし、よし、よし……落ち着いてきましたね、ウル」

「クゥン……」

「最近少し忙しかったもので……。召喚できなくてすみません」

「……自然となかったことかのようになっているが、今、我と貴様、危うく喰い殺されるところではなかったか?」

ロズモンドがよろめきながら立ち上がり、俺へとそう言った。

「ただのじゃれつき……甘え噛みですよ。しばらく呼び出されていなかったので、感極まってちょっと興奮してしまったんでしょう」

「いつか死人が出るぞ。明らかにじゃれつき、甘え噛みの範疇では……。いや、もう、いいわい。その化け犬が満足したら、とっとと桃竜郷へと連れて行ってもらおうではないか」

ロズモンドが疲れたように息を吐いた。

「ロズモンドさん、段々カナタさんのノリにも慣れつつありますね。なんだか不思議な親近感が湧いてきちゃいます。昔はポメラも、ロズモンドさんみたいにカナタさんの一挙一動に驚いていました」

ポメラがそう嬉しそうに口する。

「我は別にこんなことに慣れたくはないのだが」