軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三十三話 試練終了

第三の試練が終わった後、俺達はライガンと共に竜人達の集落へと戻った。

ズールも無事にオディオへと引き渡すことができ、上手く竜門寺を壊した一件も彼に擦り付けることができた。

縄で何重にも縛ったズールを、オディオは米俵のように担いでいた。

「このようなことは、あってはならぬこと……! 儂ら竜人の、それも聖竜の中からこのような事件を引き起こす者が出るとは、なんとも嘆かわしい! 師匠方には大変なご迷惑をお掛けしましたな。この悪党は、儂らの手で処罰を加え、地下牢へと閉じ込めておきます故」

「ありがとうございます。師匠ではありませんけども」

……オディオはまだ、師匠の件を諦めてはいなかったらしい。

ポメラがズールを見上げ、不安げに眉を寄せる。

「あの、ズールって、かなりレベルが高いんですよね? 拘束するときもそれが不安だったのですけれど、閉じ込めておける牢屋があるのですか?」

「竜人は、ニンゲンの方々に比べて平均的な筋力が高いですからな。牢も特別なものを使いますし、力を振るえぬように常に手枷を嵌めることになります。加えて、膂力を抑える呪符もございますので」

なるほど、そのようなものがあるのか。

都市の冒険者はせいぜいトップでも【レベル100】程度のようだった。

だが、竜人は二百越えがゴロゴロといる。

三大聖竜に至っては恐らく三百越えだ。

この域になってくると何かしらの工夫がなければ、罪人の拘禁もまともに行えないのだろう。

「それから……カナタ様や、《竜の試練》、三千点おめでとうございます。いや、まさか、全試練で満点を取る者を儂の目で拝むことができるとは、思ってもおりませんでした! 歴代の竜王でも、こうはいくまいて……!」

オディオは興奮げにそう口にした。

第三の試練の俺達の点数は、三人共千点という判定をもらったのだ。

第二試練とは違い、規定では何体同時に倒そうが、戦った竜魔像の最高点数で判断されるらしい。

その判断基準であると、本来千点はフィリアだけとなる。

ただ、今回のズールの竜魔像一斉起動事件により、千点分の戦闘能力を充分に示したという評価を受けることになったのだ。

これによってポメラとフィリアは二千五百点、俺は三千点という結果になった。

これで晴れて三人共王竜の称号を得られたこととなる。

余談ではあるが、ミツルはあの事件の際にまともに倒した像が五十点の竜魔像一体だけだったらしく、第三の試練の評価もそのまま五十点となったらしい。

第一試練五百点、第二試練二十点、第三試練が五十点の合計五百七十点となり、あと一歩金竜に届かなかったようだ。

ライガンがミツルに勝ったと喜んでいた。

余程ミツルにボコボコにされたことを根に持っていたのだろうが、本当にそれでよいのだろうか。

「桃竜郷の歴史をどれだけ遡っても、《竜の試練》で満点を納められるものは、竜人ではただの一人しかいないでしょうなあ」

その言葉を聞いて、ポメラが瞬きをした。

「一人……いたんですか? カナタさんみたいなとんでもないお方が」

ポメラに問われ、オディオはバツが悪そうに下唇を噛んだ。

「ああ、はい……いえ、しかしつまらない話でしたな、つい。儂から言っておいて申し訳ないのですがな、あまり口にしたい名ではないのです」

そう聞いて、何となくピンときた。

「《空界の支配者》……ですか?」

俺がその名を言った途端、ライガンとオディオの表情が同時に変わった。

二人共驚いているようだった。

しまったと思った。

どちらか片方ならともかく、複数の竜人を前にして軽はずみに口にしていい名前ではなかった。

竜王に会う前に《空界の支配者》について探っていると知られれば、厄介なことになる可能性もあるという話であった。

「ご存知でしたか……」

オディオは苦い表情でそう言った。

「え、ええ……その、噂で聞いたことがある、程度のものでしたが。ドラゴンだと思っていましたが、竜人なんですね」

「そうでしょうな。恐らく今は、ドラゴンとして振る舞っておるのでしょう。あまり口にするべきことではないのですが……《空界の支配者》は、桃竜郷の始祖の一人なのです。ドラゴンから生まれた一代目であり、高いレベルを有しておるので、ドラゴンの姿に先祖返りすることができるのだと」

「えっ……」

ここ桃竜郷の出身だったのか。

それは知らなかった。

竜人はドラゴンが人間の国近くを管理する際に、人間との軋轢を生じさせないように生み出すものだと聞いていたので、そう考えれば竜人であれば桃竜郷か、もしくは同様の目的で作られた集落の出身であることは当然といえば当然なのだが。

「千年前、奴は桃竜郷で禁忌を冒しました。竜人として守るべき竜穴の魔力を、自身が力を得るために悪用し、この地を追われたのです。実際には奴を追い払うだけの力が当時の桃竜郷にもあったとは思えませんので、奴が勝手に離れたというのが正しいのでしょうがな。表立って事を起こすことはないようですが、千年に渡って歴史の裏で暗躍していると……そういう話を聞きますな。奴は、この桃竜郷最大の汚点なのです。ただ、儂らだけでなくドラゴンらも、奴を捕らえることは半ば諦めているようで」

ここに来て《空界の支配者》の新しい情報がどんどん出てきた。

確かにラムエルも、《空界の支配者》はドラゴンとしての禁忌を冒した邪竜だと言っていた。

それが竜穴のことだとまでは言っていなかったが。

ライガンの表情を確認した。

少し苦々しげな表情をしていた。

正直、心中は測れない。

オディオにしても、心から本当に《空界の支配者》を敵視しているのかは依然不明のままだ。

「……まあ、あまり愉快な話ではありませんな。竜人の中には、あの名を聞いただけで気を悪くする者もおるでしょう。あまり口に出さん方が」

オディオはそう言って苦笑した。

「それより、貴様ら、竜王様と面会したいと言っておったな。王竜称号を取ったため、竜王に挑む権利が認められるわけだが……まさか、挑むつもりか?」

ライガンが俺へとそう尋ねる。

「あまり無暗に桃竜郷を騒がせることはしたくないのですが……どうしても、貸していただきたいアイテムがあるんです。なので、恐らく挑ませていただくことになるかな、と……」

「そうであるか……」

ライガンががっかりしたように肩を落とす。

俺もできることなら事を荒立てたくはない。

話し合いで済むならそうしてもらえるように竜王に提案させてもらうつもりだが、プライドの高い竜人の長である。

きっと受け入れられないだろうし、下手に口にすれば馬鹿にしているとも取られて機嫌を損ねることになるかもしれない。

「……カナタ様や、実はそのことでお話がありましてな」

オディオが言い辛そうにそう切り出した。

俺が顔を上げてオディオを見ると、額を掻きながら、そっと視線を外した。

「実はその……竜王様は腹痛で、今は使用人以外、絶対に竜王城に入れるなと言い張っておりましてな」

「ふく、つう……?」