軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二十六話 ライガンへの報告

ヨルナに土下座され、瀕死のミツルの救助を手伝うこととなった。

ヨルナは血塗れのミツルを背負い、俺達に何度もぺこぺこと頭を下げていた。

「ヨルナさん……なんだか、可哀想ですね。ただでさえお堅い人が多そうな桃竜郷を、あんな人連れて歩き回らないといけないなんて」

《巨竜の顎》から出てから、ポメラがそう口にしていた。

何にせよ、これで第二の試練は終わったはずだ。

後はライガンに報告し、第三の試練に挑めば、竜王への面会が叶うはずであった。

……ただ、足取りは重かった。

さすがにダンジョンを叩き壊したことは黙っておくわけにはいかないだろう。

下手したら即座に叩き出され、ラムエルとの約束を果たせなくなってしまう可能性も高い。

最悪の場合、ライガンにラムエルの話を託して、ここ桃竜郷を去ることになるかもしれない。

いや、あまり気は進まないが、外の人間であるミツルに話しておくべきだろうか。

ラムエルはレベルが低かったがために桃竜郷での信用がなく、そのために話を信じてもらえず逃げ出すことになったのだと口にしていた。

早速俺達は、ライガンの屋敷へと訪れた。

使用人の女竜人らに連れられ、客間でライガンと顔を合わせることになった。

「貴様ら、戻ってくるのが随分と早かったではないか! どうした? 威勢がいいのは、口と第一の試練だけであったようだな!」

ライガンが活き活きとした調子で俺達を罵倒する。

「まあ、そう上手くはいかんということである! ガハハハハ! 第二の試練は、第一の試練ほど単純なものではない! 貴様らには少々難しかったようであるな? んん?」

「えっと……あの、すいません。実は、ダンジョンが……」

俺が歯切れ悪く切り出すと、ライガンは太い指を左右に振った。

「チッチッチ。異常があった、のであろう? ハ! そんなことは知っておるわい! 異常など、起きて当然なのだ! 想定内のことしか起きねば、何もできんのか? そんな奴が実際の戦場で何の役に立つ! 第二の試練で必要なものは対応力なのだ! 予想外の魔物や罠、そして異常事態! 貴様らは重要な戦いの最中、何か事情があれば敗れても仕方がないと思うのか? 試練であるのだから、何か不公平なことがあれば仕切り直されて然るべきであると? 笑わせるな! 外の要因に惑わされる程度の強さなど、結局のところその程度のものなのだ!」

ここぞとばかりに、ライガンは溢れんばかりの笑顔で説教を続ける。

ただ、一言だけ言わせてほしい。

違う、そうではないのだ。

ライガンにとっては、ダンジョンがどえらいことになったことよりも、俺達が第二の試練を失敗しているかどうかの方がよっぽど重要なことのようだ。

「如何なる事態に陥ろうとも、持てる全力を尽くして目的を成し遂げる! それこそが重要なことなのだ。竜人の試練とは、ニンゲンのそれのような甘っちょろいものではない! まぁ……貴様らには、難しかったようであるな」

ライガンの言葉を聞き、俺は思わず立ち上がった。

ライガンがびくっとしたように身体を震わせる。

「な、なな、何であるか! 文句でもあるのか! やり直しは認めんぞ! どうしても悔しければ、鍛錬を積み、然るべき期間を開けてから再挑戦することであるな! まあ、やり直したとしても、一度目の試練で怯えた貴様らが途中で投げ出したという事実は変わりはせんが……」

「そう! そうですよね、ライガンさん! やっぱり俺も、試練はできる手段を全て使って、全力で挑んだ結果でないと意味はないと思うんです!」

「む……? そ、そうか。わかってくれたようで何よりである。まあ、第二の試練は散々だったようだが、第三の試練で頑張るといい。第二の試練の結果は変わらんがな」

ライガンは俺が立ち上がったのを警戒していたようだが、俺が納得していると知ると、ほっとしたように目を瞑った。

それから腕を組み、こくこくと小さく二度頷く。

「ごめんなさい……あのね、ライガンおじちゃん。ダンジョンこわしちゃったの、フィリアなの」

フィリアが気まずげに頭を下げる。

ライガンの顔が一気に真っ蒼になった。

「な、何を、馬鹿げたことを……」

「すいません、実は俺が、床を砕いてどうにか楽に降りられないかと提案してしまって……」

ライガンが凄い表情で俺の顔を見た。

何とも形容しがたい顔だった。

「で、でも、あの、できることを全部やって試練には挑むべきだって、ライガンさんはそう言っていましたよね!」

「そ、そう言う意味ではないわ! ばっ、馬鹿……貴様ら、全員馬鹿か! きょ、《巨竜の顎》で、いったい何をやらかしたというのだ!」

ライガンが声を荒げる。

「ごめんなさい……床を強めに……」

フィリアがしょんぼりとした顔で、か細い腕でしゅっと宙を殴った。

ライガンは顔中に皴を寄せ、フィリアの拳を睨んでいた。

気まずい沈黙の中、俺は魔法袋から三つの《竜眼水晶》を取り出した。

「あの……一応これ、下層までは持っていったので。鑑定していただければ……」

机の上を転がし、ライガンの方へとそっと向かわせた。

ライガンは慌てて《竜眼水晶》を搔き集め、腕に抱えた。

「な、なんであるか、この赤さ! 聞いたこともないぞ! まさか、貴様ら……先代竜王様が捕らえて最下層に閉じ込めた、《赤の暴力ティタン》の許まで辿り着いたと……!」

「……死んでいました。落石で」

「ああ、そうであるか……」

ライガンはがっくりと肩を落とした。

「あの……やっぱり、まずかったですか?」

俺はそうっと尋ねた。

ライガンは苦しげな顔をしていたが、そっと首を左右に振った。

「……力で壊したというのであれば、何も言えんわい。ただ、もう生涯、《巨竜の顎》に入らんでくれ」

「……ありがとうございます。その、本当にすいませんでした」

三人揃って頭を下げた。