軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二十話 ミツルの意地

「もっ、持ち上がりました……! ポメラもできました!」

ポメラが【五百】の竜頭岩を持ち上げることに成功した。

ポメラは【Lv:1032】だが、充分可能だったようだ。

ミツルのレベルも、高く見積もっても千以下だと考えて間違いなさそうだ。

危険な《 神の祝福(ギフトスキル) 》持ちだったのでもし敵に回ったらと少し警戒していたのだが、現状ではあまり心配しすぎる必要はなさそうだ。

「ポメラさん、フィリアちゃんみたいに片手持ちってできそうですか?」

「かっ、片手ですか!? す、少し危ないかも……あ、一応できました! あんまり長時間は、ちょっと苦しそうですけれど」

ポメラは両手持ちに戻してから、そっと竜頭岩を地面に置いた。

今ので何となく竜頭岩の基準がわかったかもしれない。

恐らく、持ち上げられる岩は、レベルの数字近くが限界となるのだ。

もっとも個人によってステータスには偏りが大きいので、あくまで目安程度のものだろうが。

特にミツルは《 極振り(ダブル) 》を使っていたので、この法則に当て嵌らない可能性が高い。

「ゆ、夢である……日に三人も、【五百】を持ち上げられるニンゲンが現れるなど……」

ライガンは肩を窄めてそう口にした。

「ライガンさん、これでポメラさんもフィリアちゃんも五百点でいいんですよね?」

「うむ……」

ライガンは初日が嘘だったように、素直にそう答えた。

すっかり自信を失くしてしまったように窺える。

「えっと、最後、カナタさんどうぞ……」

ポメラは竜人達の視線を気にしながら、俺へとそう言った。

俺は頷いて、竜頭岩へと近づいた。

一気に持ち上げる。

フィリアが軽々と持ち上げていただけあって、やはりそう重くはない。

この数倍あっても苦ではないだろう。

やはり持てる竜頭岩の限界がレベルの値に近くなるという俺の仮説は、大きく外れてはいなさそうだ。

「御三方、素晴らしい怪力じゃ! さすが儂の師匠のご友人というだけはある!」

「……オディオさん、そのお話はさっき断りましたよね?」

今回ここを訪れたのは《空界の支配者》が目的である。

弟子を取っているような余裕はないし、そもそも弟子になられても、別に俺達はオディオに何かを教えることはできない。

俺はルナエールのパワーレベリングの結果であり、細かい技術や知識はオディオの方が遥かに上だろう。

フィリアも教えられる何かを持っているとは思えない。

しかし、まだ余裕があるのに、第一の試練は最大五百点なのか……。

聖竜は合計千点以上なので、残り二つで合計五百点取ればいいので順調といえば順調なのだが、どんな内容のものが来るかわからない以上、余裕がある間に取れる分だけ取っておきたいというのが本音である。

「あ、そうだ……オディオさん、そっちの三百点の岩、投げてもらっていいですか?」

「む……カナタ様や? 何をなさるおつもりで?」

……様は止めてほしい。

ライガンは異様に高圧的だが、オディオは正反対だ。

桃竜郷には極端な人しかいないのか。

オディオは俺の言葉を疑問に思っていたようだったが、【三百】の竜頭岩を持ち上げた。

「こ、これを、投げればよろしいのですかの? しかし、危ないと言いますか……」

オディオはそう口にしていたが、俺が引かない様子を見ると、腕を引いて竜頭岩を投擲した。

「ではいきますぞ……ふんっ!」

俺は【五百】の竜頭岩を傾け、投げられた【三百】の竜頭岩を上に乗せ、素早くバランスを整えた。

「これで八百点になりませんか?」

「おっ、お、おおおおお!」

オディオが感嘆の声を上げる。

「確かに前例がありますの! 元々、一つの試練では最大千点という取り決めになっておりますのじゃ」

「じゃあ、そっちのもう一つも投げてもらっていいですか?」

「すぐに!」

オディオに続けてもう一つ投げてもらい、【五百】の上に【三百】が二つ積み重なった。

これで合計は千百点だ。

上限に引っ掛かるので、千点になるが。

これで既に聖竜の成績を満たしたことになるはずだ。

竜人達がこれまで以上にざわつき始める。

「な、なんだこれは、幻か……?」

「いくらなんでもあり得ねぇ。まだ余裕がありそうな面をしているぞ!」

俺は三つの竜頭岩を、分けて地面へと置き直した。

「次期竜王様じゃ! 次期竜王様の器じゃ!」

オディオが腕を振り上げてそう叫ぶ。

「次期竜王様に弟子入りできて、儂は感激じゃ……!」

オディオは地面に膝を突き、嬉し涙を漏らす。

「俺一言もそんなこと言ってませんでしたよね!?」

「フィリアの弟子になるって言ったのに……」

フィリアは頬を膨らませて、オディオをジト目で睨みつけていた。

「追加していいみたいでしたし、ポメラさんももう一回挑戦してみますか?」

「ポメラはいいです……。岩が落下した時の衝撃が加わったら、結構危なそうですし……」

「おい、足していいなんて聞いてねぇぞ! どういうことだ、ヨルナ!」

戻ってきたミツルが、顔を赤くしてそう怒鳴った。

「ごめんなさいです……。で、でも、普通、そんなことする人いないんですってば……。アタシも、そんな前例なんて知りませんでしたし……」

「やっていいなら、当然オレも挑む! さっきのが倍に増えるくらい、なんてことはねぇ」

「危ないですし、止めた方が……!」

「黙ってろ! 一番強いのは、このオレだ。こんなもんで勝った気になられちゃ、堪ったもんじゃねえ」

ミツルが横目で俺を睨み付ける。

竜人に負けず劣らず自尊心の高いタイプに見えた。

自分の後でそれ以上の結果を出されて、小馬鹿にされたように感じたのかもしれない。

事前に大口を叩いていたこともあって、このままでは引っ込みが付かなくなったようだ。

ミツルはヨルナの静止を振り切り、再び【五百】の竜頭岩を持ち上げた。

「《 極振り(ダブル) 》……攻撃モードォ! よし、投げてこい、ジジイ!」

「止めておいた方が、いいと思うがのぉ……。せめて区切って、【五十】くらいから足していかんか?」

オディオが困惑げにそう口にした。

「とっととやりやがれ! 続いて自分より高い点数出されるのが怖いのか?」

「そこまで言うのならやるが……そうっと行くぞ、そうっと」

「早くしろっつってんだろうが!」

オディオはミツルに急かされるがままに、【三百】の竜頭岩を投げた。

二つの竜頭岩が衝突する。

「うおぶふぁっ!」

その瞬間、ミツルの態勢が崩れ、彼の姿が竜頭岩の下に消えた。

プチッという音がした。

「ミツルさぁぁぁああああん!」

ヨルナの悲鳴のような叫び声が響いた。